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九州で活躍する東京メトロの車両!?元日比谷線と元銀座線にも会える「熊本電鉄」その魅力とは

2025.08.30

text & photo:上石知足(鉄道ホビダス編集部)

 東京から1000km以上離れた熊本電鉄。ここには日本各地からやってきた電車たちが一堂に会します。中でも東京メトロの車両は元地下鉄車両が地方ローカル線を走るその姿に人気が集まります。

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■東京からはるばるやってきた地下鉄車両

元東京メトロ日比谷線で活躍していた03形。

 熊本にはさまざまな電車たちが活躍しています。現役車両で言うと元都営6000形の6000形、元静岡鉄道1000系の1000形、そして元東京メトロ01系の01形と、同じく元東京メトロ03系の03形の4形式が現在運行中です。

 熊本電鉄から東京メトロの車両が初めてやってきたのは2015年のこと。銀座線からやってきた01系が最初でした。もちろん銀座線の規格である軌間1435mm・第三軌条方式のままでは熊本電鉄で活躍することができないため、台車は川崎重工の新製台車「efWING」に、パンタグラフも新しくシングルアーム式のものを搭載しました。

 続く03系は2019年に導入。03系が活躍した日比谷線や東急東横線、東武スカイツリーライン(伊勢崎線)などは、熊本電鉄と同じ1067mmの狭軌であるため、台車こそそのまま活用されましたが、モーターのない先頭車2両のため、電装化とパンタグラフの新設は同様に行われました。

■併用軌道区間を行く元地下鉄車両

藤崎線 藤崎宮前〜黒髪町間の併用軌道区間を行く03形

 日比谷線時代は8両編成で、乗り入れ先の東急東横線や東武スカイツリーラインにも足を伸ばし、都心部から郊外まで幅広いエリアを駆け抜けました。
 とはいえ東京メトロ時代でも流石に併用軌道区間を走るなんていうことはありませんでした。そんな中熊本電鉄の藤崎線 藤崎宮前〜黒髪町間にはほぼ併用軌道と言えるくらい道路が接近している区間があり、ここを元地下鉄車両の03形が走る姿はなかなかにシュールな光景となっています。さらに踏切が上野検車区手前に1つしかない銀座線で活躍していた01形も、ここ熊本では踏切を通るのは日常茶飯事です。こうした都市部で活躍した車両が、これまでとは全く違う環境を走る姿が見られるというのも、昨今のローカル線の魅力の一つに思えます。

■元東京メトロ車 オリジナルの姿が残るところ

東京メトロ風なロゴマークを掲げる元東京メトロ車。

 こうして踏切や併用軌道があることを踏まえ、01形・03形ともに当初こそスカートを付けずに運用入りしていましたが、のちに大型のスカートを設置。またワンマン運転をすることからミラーも増設(こちらは導入当初より取付)され、ローカル私鉄らしい見た目に変貌していきました。

 とはいえ、日比谷線時代の面影が色濃く残る編成が多いこともまた魅力の一つです。現在3本の編成が運用されており、03-131+03-831編成はピンク色の可愛らしいくまモンラッピングが施されていますが、その他2編成は日比谷線時代の帯色のまま現在も活躍中です。
 特に目を見張るのは、2両編成ではあるものの8両目を示す「8」の号車番号プレートも残されているほか、車内のドアステッカーには東京メトロのクレジットカードである「To Me CARD」のステッカーがそのままとなっています。これは車外側の駆け込み防止ステッカーをそのまま活用しているため見られるものです。

 また、これは熊本電鉄の遊び心として元東京メトロの車両に貼り付けられるロゴマークは、東京メトロのデザインを模した熊本電鉄のマークになっているのも注目されます。他社に譲渡されるとたとえ帯色やカラーリングがそのままでも、ロゴマークや社紋などは譲渡先のものに変わるのが一般的ですが、こちらは変わりつつもなるべく東京メトロ時代のイメージのまま保たれています。

 いずれの形式も昭和〜平成という、営団地下鉄から東京メトロという変革期を迎えていた時代の東京の地下を走った車両。熊本電鉄に導入されてからすでに数年〜数十年の年月が経過しており、すっかりお馴染みの顔ぶれとなりました。今後も熊本の地域の足を支えるために末永い活躍を期待したいところです。

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