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特集・コラム

過渡期仕様のプラレール!?リニューアル前後の狭間にあった超リアル塗装の「500系新幹線」とは?

2025.08.15

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回はプラレールにおける500系新幹線の歴史と、その過渡期に存在したリアルな塗装を施した仕様について迫っていきます。2002年にプラレールの新幹線は主に塗装面で一斉リニューアルが行われましたが、それ以前に500系にはリアルな仕様がセット限定で存在していました。(編集部)


【写真】塗装面では最も実車に近い1999年仕様 比較した違いを写真でもっと見る!

 今回も新幹線について紹介しますが、車両そのものというよりは「プラレール製品として」の在り方に注目していきます。今回注目するのは「500系新幹線」のプラレールです。
 実車のデビューに先立ち、1996年11月に発売され、2002年7月の新幹線一斉リニューアル、2012年2月のライト付車両化、2014年6月の動力更新・中間車のモデル変更、そして2021年9月のハイパワーライト仕様への更新を経て、2025年8月現在もラインナップに載っているロングセラー商品になります。この発売から現在に至るまでの約30年の間に、他の車両と同じく度重なるリニューアルを受けてきましたが、500系だけは少々事情が異なりました。

▲3種類の500系新幹線。奥から1996年、1999年、2002年の仕様。

 先述したように、プラレールの500系は実車のデビューに先立った1996年11月に発売されました。当時既に他の車種で始まっていた精巧な造型を取り入れ、尖った先頭形状はもちろんのこと、モデルとなったW1編成先頭部のセンサー小窓の再現、パンタグラフ周りや床下機器カバーまで再現されるといった、話題の形式をここまでやるかとデフォルメした姿がかっこいい仕上がりとなりました。しかし、造型は精巧でも塗装まではそうもいかなかったのが当時のプラレール。500系で使われた塗料は、キャノピー型運転室と窓周りに入っているダークグレーと、屋根からノーズにかけて流れ、窓下にも入っているブルーの2色のみ。
 実車では屋根からノーズにかけての塗装は「グレイッシュブルー」と呼ばれる淡いグレーがかったブルーでしたが、プラレールは帯色と統合されています。また、ライトグレーの車体色は白色樹脂成型による表現となりました。ライト周りは先頭・後尾とも未塗装です。
 このような最低限の塗装で実車を表現するという90年代当時のプラレールの設計思想は、1996年当時の新製品である500系でもそのままなのでした。この状態での生産が2002年まで続きましたが、その途中、1999年に当時としては異端とも言える仕様で生産されたものが現れました。

▲リアルな配色となった「アニバーサリーアルバム」の500系

 1999年、プラレール40周年のアニバーサリーイヤー。いくつかの記念商品が発売されましたが、その中でも当時存在してたプラレールのファンクラブ会員限定で発売された「プラレール40th アニバーサリーアルバム」に500系が選ばれました。このセットは5編成の列車が入っているという後にも先にも例がない特殊なもので、1959年発売の「プラスチック汽車」から、1961年発売の「電動プラ汽車」、1971年発売の「D-51きゅうこうれっしゃ」、1979年発売の「ライト付ひかり号」、そして1996年発売の「500系新幹線」と、各世代の代表的な車両を復刻の上まとめたものとなっています。
 「プラスチック汽車」「電動プラ汽車」は発売当時に存在してたカラーバリエーションを復刻、「D-51きゅうこうれっしゃ」は当時の現行金型を使って再現、「ライト付ひかり号」「500系新幹線」はディテールアップを施したという、正に記念商品に相応しい特別仕様となっています。
 500系を除き、1999年当時は絶版となっていた各車両。「ライト付ひかり号」に関しては、ラインナップに載っていた当時は一貫して白い成型色の車体に青い帯という姿だったものを、屋根を銀色に塗装してさらに肩部の細帯を追加、前照灯・光前頭は黄色いクリアパーツとして既存のものと差別化を図っています。
 対する500系ですが、当時は発売からまだ3年程度。これをどのようにして「特別仕様」化したのかと思えば、おもちゃ然としていた通常品の配色を極力実車に寄せたものとなったでした。車体の成型色はライトグレーに、屋根からノーズに流れる「グレイッシュブルー」を忠実に再現し、窓周りのダークグレーとブルーもしっかりと塗り分け、運転室のキャノピーは窓枠と窓で明度を変えた黒色で塗り分け、前照灯も黄色く塗装して点灯状態を表現したという、1999年当時としては最高水準の塗装を施しての登場しました。とは言え、後尾車も前照灯が黄色く塗装されていたり、ノーズ部にある500系のロゴは省略されたり、台車部は床下機器と同色とされるなど、まだまだプラレールらしい装いを残していたことも特筆できます。
 このアニバーサリーアルバムの500系が新幹線一斉リニューアルの実質的な前段階になったと思われ、2002年にリニューアルされた各車両はこれに準じた仕様に更新されていきました。ただし、実車に寄せた塗装は全体が引き締まって見えるものの、やはりおもちゃであるという点を重視したのか、リニューアル後の500系では再びアレンジが加わります。
 「グレイッシュブルー」は濃い水色のような色に、屋根上の滑り止めは塗り分けられ、後尾車は尾灯が点灯している姿を再現、ノーズ部のロゴは印刷で表現し、台車カバーをグレーで塗装したという、最大限のディテールアップを施しながらも塗装面では初代製品と似ているという、あくまでも「既存製品をリニューアルされた姿」としての仕上がりとなりました。
 以後の500系製品は2002年当時の姿を踏襲しています。ものによっては滑り止め塗装の省略や、ライト付への改修に伴う運転台窓のクリアパーツ化、短編成化を反映した中間車の更新など、リニューアルを繰り返していますが、塗装そのものはあまり変わりありません。
 約30年に渡り生産され続けているプラレールの500系新幹線。そのバリエーションは非常に豊かですが、塗装面でリアリティを重視したものは、2025年現在では1999年のアニバーサリーアルバムのものが唯一となっています。
 実車も2027年には引退が予定されているので、昨今の「381系やくも」や「SL人吉」のような、さよなら仕様での発売を望みたいところです。もし発売されるのならば、「グレイッシュブルー」を再び忠実に再現した仕様に期待です。

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