text & photo:諸富光法

▲旧ルートはトンネルを出てすぐ左から合流していた。
諸羽トンネルを抜けると、ここからはしばらく地上区間となります。右へ左へカーブをしながら蛇行して進みますが、これも地形に逆らわない歴史ある構造物のルート選定の魅力と言えるでしょう。現在では鉄道も道路も技術の進歩で山岳地帯を長大トンネルで突っ切ったり、巨大な橋で谷を一跨ぎすることも可能となりました。最短距離で結ぶことが可能でありながら構造物も強固で、さらに災害に強い反面、何か味気なさを感じるのも確かです。こうして琵琶湖疎水をのんびり通っていると、そのようなことをぼんやりと考えてしまいます。
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▲諸羽トンネルと第2トンネルの間は距離が長く、右に左にカーブしながら進む。森林に囲まれた緑の中を進む場所も多く、心落ち着く眺めだ。船からは分かりにくいが、高台を通っている。
■第2トンネル
水路上で最も短い約124mのトンネルです。入口の扁額は井上馨による「仁以山悦智為水歓」、出口側は 西郷従道による「随山到水源」の揮毫となっています。このトンネルの特徴として出口側の坑口の断面形状が馬蹄型となっている点で、出口の手前から徐々に形状が変化していくのが分かります。ただし、疎水船の性質上、前部に乗船していると入口はよく見えますが、出口はよく見えません。後部に乗船した場合はその逆になります。出入口の形状を両方よく見たい場合は往復するのが安全ですが、席順は予約した順番となるため、早い段階で往復予約するのも一つでしょう。


▲第2トンネルの入口。扁額の揮毫はは井上馨による「仁以山悦智為水歓」。右写真は出口の様子で、断面の形状が途中で変化しているのがわかる。
■第3トンネル
一番蹴上側に位置するトンネルで、長さは約850m。入口の扁額は松方正義による「過雨看松色」、出口側は 三条実美による「美哉山河」の揮毫となっています。トンネルのすぐ手前に架かる「日ノ岡第11号橋」は、琵琶湖疎水と同じ田辺朔郎による設計で、鉄筋コンクリート橋としては2番目に古い橋とされています。以前は最古とされ、筆者もそのように記憶していましたが、後に長崎県にある本河内低部堰堤 放水路橋の方が古いことが判明したようです。ちなみに下路式のアーチ式鉄筋コンクリート橋は熊本県にある姫井橋が現存最古とされています。
さて、トンネルを出た先はすぐ蹴上乗下船場で、三井寺からの船旅もここで終了となります。


▲左写真は日ノ岡第11号橋で、周囲は鉄材で保護されている。右写真は第3トンネルの入口で、入口の扁額は松方正義による「過雨看松色」。
蹴上発電所
びわ湖疎水船の終点である蹴上乗下船場は、蹴上発電所の前にあります。ここから南禅寺船溜までは高低差があるため、インクラインの出番です。というわけで、次回はいよいよ鉄道である「蹴上インクライン」をご紹介します。(次回へ続く)。


▲左写真は蹴上発電所で、現在は稼働していないものの定期的に見学会が開催されている。右写真奥に見えるのが蹴上発電所で、その前が蹴上乗下船場となる。




