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今も見つかっていない製品が結構多い?知る人ぞ知る 謎も多き昔の「地域限定」プラレールとは?

2025.04.05

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は80年代に盛り上がりを見せた地域限定のプラレールについて紹介します。ここ最近で販売地域を限定したプラレールが登場していますが、実はこうした販売方法は過去にも見られたのです。写真では中京地区限定で発売された「基本No.3セット 名鉄パノラマカー」を中心に、謎多きその歴史を振り返ります。(編集部)


【写真】中京限定で発売された「基本No.3セット 名鉄パノラマカー」セットの全貌を画像で見る!

 2025年3月22日、プラレールにおける新たな試みとして「地域限定販売のプラレール」が発売されました。初回は関東と関西の2地域での発売となり、関東向けには「E233系京葉線」が、関西向けには「近鉄アーバンライナーnext」が選ばれています。
 プラレールは鉄道会社などの事業者限定品や、イベント限定品などを除くと全国販売を基本としていますが、このような地域限定品の展開が始まったことにより、特定地域で人気のある車両も製品化されるのではないかと期待が寄せられています。
 とはいえこうした地域限定品、実は「初の」試みではありません。実は40年以上前から細々と存在しているのです。今回はその「昔の地域限定品」についてと、中京圏向けに発売された名鉄パノラマカーのセットを紹介します。

▲1981年頃に中京地区限定で発売された「基本No.3セット 名鉄パノラマカー」

 プラレール初の地域限定品は、今から約50年前となる1976年に発売された「近郊形でんしゃ ふみきりえきセット」まで遡れます。「ふみきりえき」は車両からの動力伝達によって発車ベルを鳴らし、自動的に発車していく大掛かりなギミックを組み込んだ情景部品で、構内踏切も付いているという、正に「近郊形」の電車がやってきそうな雰囲気がある素晴らしい駅となっています。車両は「東海型急行電車」を横須賀色に塗り替え、横須賀線の113系に見立てたものが入っていました。
 もちろん箱に印刷されている写真も横須賀色の電車が写っていますが、どういうわけか、白地に赤帯の「関西色」と呼ばれるカラーの車両が入ったものも発売されていました。「関西色」が入ったものは「ふみきりえき」の成型色と金型も変更されており、横須賀色バージョンと同時生産ではないことが伺えますが、これは横須賀色のセットを全国販売した後、関西方面向けに仕様を変更して少数生産されたものなのではないかと推測されています。
 残念ながら明確な資料が残っているわけではありませんが、当時のカタログには横須賀色のみが掲載されており、関西色については全く言及がありません。しかし、これらの状況から見て最初期の地域限定品なのではないかと考えられています。

 70年代の地域限定品はこのセット限りとなりました。そして80年代に入ると本格的に地域限定品が生産されるようになります。
 1981~83年頃には当時発売されていた「基本セット」のうち、No.2・No.3セットの車両を「名鉄パノラマカー」(中京圏向け)「京阪神通勤特急」(関西圏向け)に置き換えたものが。1985~87年頃にかけては私鉄系百貨店が独自に発注したとされる「名鉄パノラマカーセット」「小田急ロマンスカーセット」が。1988年には北海道限定品となる「フラノエクスプレスセット」が発売されています。さらには1981年に福岡市営地下鉄が開業した事を記念して、地元百貨店が発注したとされる車両単品「福岡地下鉄電車」なるものも存在しており、これのセット品も存在するとされていますが、2025年現在その実物は未だ見つかっていません。

 このように80年代には多くの地域限定品が存在していましたが、90年代に入るとさっぱり発売されなくなりました。90年代末に各事業者による限定品が誕生すると地域限定品の性質はそちらに移り、普通の玩具店・おもちゃ売り場で買えるような地域限定品は2025年までの約35年間途絶えることになります。

▲パノラマカーは単品発売されていたものと全く同じ。

 「基本No.3セット 名鉄パノラマカー」は、先述したように当時のセット品ラインナップにあった3種類の「基本セット」のうち、全国販売品ではL特急が入っていたものをパノラマカーに置き換え、中京圏向けに発売したものになります。
 車両は単品の「EC16 パノラマカー」と全く同一で、単品とセットで差別化が図られているわけではありません。レイアウト構成も通常品と変わらず、単純に車両を置き換えたのみとなっていますが、箱に印刷されている商品名はきっちりと「名鉄パノラマカー」になっています。
 同様に「基本No.2セット」にもパノラマカーが入ったものがありますが、シンプルな楕円レイアウトの「基本No.1セット」に関しては車両を入れ替えたものが存在しません。これは本来のNo.1セットの車両が、D51蒸気機関車・無蓋車・有蓋車の貨物列車となっており、箱に開けられている窓もそれぞれの車両に合わせた異なるサイズで用意されていることや、発泡スチロールの収納容器も機関車と貨車用に設計されていて流用が効かないからだと考えられます。後年になり「No.1」に近い内容の「名鉄パノラマカーセット」が発売されていますが、これは基本セットではなく、1982年に発売された「東北上越新幹線セット」の車両をパノラマカーに置き換えたものとなりました。

 関西圏向けにも同様の展開が行われ、「東海型急行電車」を塗り替えて阪急6300系を模したことで知られる「EC20 通勤特急」を入れた基本セットが発売されています。単品とは異なり「京阪神通勤特急」と称されており、阪急電車の営業範囲を強調しているのが見て取れます。
 基本セットはNo.1がD51、No.2がひかり号、No.3がL特急と、車両をそれぞれ異なるものにしていましたが、中京圏・関西圏共に当地の鉄道事情を反映した車両を選択しているのが興味深いと言えます。

 今年から再び始まった地域限定プラレール、4月現在では車両のみの展開となっていますが、いずれは1980年代の時のようにセット品での展開も期待したいですね。