185系

特集・コラム

10年ぶりの復活!?懐かしいプラレール「211系」の歴史に迫る!

2025.03.22

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は先日、製品としては約10年ぶりの復活を遂げたプラレールにおける211系の歴史についてクローズアップします。現在はダブルデッカーを組み込んだ編成構成ですが、当初は中間車は平屋の普通車でした。(編集部)


【写真】ダブルデッカー組み込み後のプラレール211系歴代製品の違いを写真で見る!

 2025年2月22日、プラレールファンにとって衝撃的な出来事がありました。211系「近郊電車」が突如復刻されたのです。
 品番付きの通常品ではなく、一定数が流通した後は絶版となってしまう、いわゆる「無品番」と呼ばれることもある製品としての発売です。2015年を最後に絶版となった「通勤電車」「近郊電車」の金型が再び使われたことが話題を呼びました。
 プラレールの211系は1987年に平屋3両編成の「近郊電車オレンジライン」として発売され、1990年には実車が2階建てグリーン車を組み込んだことを反映した「近郊電車(ダブルデッカー)」としてリニューアルされ、その後長年ラインナップに載り続けたロングセラー商品でした。
 今回は過去の製品と最新の「快速アクティー」を比較しつつ、プラレールの211系の歴史を辿っていきます。

▲「近郊電車(ダブルデッカー)」の歴代製品並び

 実車の211系は、国鉄末期の1986年にデビューした近郊電車です。前年にデビューした205系と同じくビードプレス入りのステンレスの車体を持ちますが、近郊型の113系・115系の後継車としての位置付けのため、裾絞りのある拡幅車体となっています。
 折しもプラレールでは商品開発が滞っていた1983~1986年の時期とデビューが重なり、205系が「通勤電車」として営業開始と同年に発売されたのとは対照的に、製品化までは1年ほどがかかりました。
 プラレールの動力が更新された1987年、6月25日に新動力車初の新製品「伊豆急リゾート21」に続き、8月10日に新動力車2本目の新製品「近郊電車(オレンジライン)」として初めて発売されます。211系は国鉄時代に東日本地区と名古屋地区の東海道線に投入されましたが、プラレールでは東日本の東海道線用車両をモデルとした湘南色が選ばれています。
 車体は205系「通勤電車」と同じものを使い、前面パーツのみを取り替えたものとなりましたが、1986年当時のカタログでは近郊型の窓配置をアレンジした側面を持った試作品が掲載されており、設計段階では211系専用の金型を起こそうとしていた事が伺えます。車体形状が異なる205系を211系に見立ててしまうのがプラレールらしさと言えますが、湘南色の帯を巻くだけで確かに211系にも見えきてしまうのが面白いところです。
 翌1988年には、カラーバリエーションとして415系1500番台をモデルとした「近郊電車(ブルーライン)」が発売されます。オレンジライン・ブルーライン共に、当初は「通勤電車」や「地下鉄電車」と同じくステンレス車体をイメージした銀メッキに帯の塗装が入るという外観でしたが、程なくして銀色の塗料で塗装する方式に変更されています。
 この頃の製品から徐々に実車の車体装飾なども再現されるようになってきてはいましたが、「近郊電車」では行先幕の表現のみに留まり、JRマークは省略されました。

▲「快速アクティー」ではグレー車輪となった。

 国鉄分割民営化後の1989年。211系に輸送力とサービス向上を目的とした2階建てのグリーン車が登場します。プラレールでも早速この新型車両を製品化する事となり、「近郊電車(オレンジライン)」と入れ替わる形で、1990年8月10日に中間車を2階建て車両に置き換えた「近郊電車ダブルデッカー」を発売します。これにより「ブルーライン」は単なるカラーバリエーションでは無くなり、発売から8年後の1996年頃に絶版となりました。
 1994年の箱更新の際に商品名が少々変わり、カッコ付きの「近郊電車(ダブルデッカー)」となりましたが車両のデザインに変更はなく、そのまま2003年までラインナップに載り続けました。
 2000年にE231系の近郊タイプがデビューし、211系は一世代前の車両となりましたが、実車はまだまだ現役であった事から、2001年から2003年にかけて行われた製品リニューアルの際にも既存ラインナップから引き継がれて発売されています。2階建てグリーン車も登場から10年以上が経過しており、改めて「ダブルデッカー」を冠する必要もないと判断されたのかもしれませんが、このリニューアル時に「211系近郊電車」と商品名を改められています。
 銀一色だった車体にも手が加わり、屋根は濃いねずみ色に、先頭・後尾車のクーラーキセは塗り分けられ、グリーン車の屋根も塗り分けられました。前面の帯シールもリアル寄りのものに描き直されていますが、基本デザインは変わらずに「普通」幕・JRマーク無しのままです。
 その後は実車・プラレール共に大きな動きがなかった湘南色の211系ですが、2007年にE233系の近郊タイプが登場し東海道線に投入されると徐々に置き換えが進み、2012年には東海道線から、2013年には宇都宮線から撤退し、2階建てグリーン車を組み込んだ姿は過去のものとなってしまいました。
 2014年に入るとプラレールの動力更新が始まり、いわゆる「新メカ」と呼ばれる動力が登場します。新規設計の新製品に加え、既存車両も設計変更により新メカに対応していきましたが、211系は実車が引退していることと、設計変更をしても容易に新メカが搭載できない構造が影響したためか、2015年に「E233系湘南色」に置き換えられて絶版となりました。同じ車体を持つ205系も既に絶版となって久しく、遡ると1985年発売の「通勤電車」から続いたこの車体はちょうど30年で店頭から姿を消しました。

 実車の方では、2023年3月のダイヤ改正で東海道線の「快速アクティー」が廃止された上に、211系が走っていた頃の東海道線の姿も既に思い出の中のものとなりましたが、2025年になってそれを思い出させるプラレールが発売されました。それが「ありがとう!快速アクティー211系」です。
 絶版から10年が経った今になって復活した211系。ラインナップに載っていた当時を知るファンからは懐かしむ声が聞かれました。
 「近郊電車」は発売から絶版まで一貫して黄色車輪を装備していましたが、今回の復活で初めてグレーの車輪を装備。車体の塗装は2003年リニューアル時に準拠しつつ、幕は商品名の通り「快速アクティー」の文字を印刷で表現。前面帯のシールは更にリアル寄りなものに変更され、先頭・後尾で前照灯と尾灯を描き分け。更にここに来てついにJRマークも追加され、理想のプラレール211系と言った形で復活を果たしました。発売直後の売れ行きはとても良かったようで、多くの店で一時品切れとなるほどと、往年の車両の人気が伺える出来事となりました。

 快速アクティーの廃止から2年が経ってから製品化されたのは少々不思議ですが、今後もこのように過去の製品を復刻したものを出す布石となるのか、ファンからは注目のアイテムとなっています。