text:MSかぼちゃ(X:@MS3167)
111系・113系・115系といった直流近郊型電車の研究を活動のメインとし、鉄道系サークル「日本かぼちゃ電車学会」の主宰も務め、動画や同人誌でその成果を発表しているMSかぼちゃさんの連載!「徹底研究!国鉄近郊型電車113系115系」。今回は特徴的な前面スタイルが印象的なクモハ115形1600番代の生涯について迫ります。2004年に登場した最後の先頭車化改造車でもある同番代の、20年にわたる活躍を振り返ります。(編集部)
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下関総合車両所・岡山電車支所は、旧岡山電車区時代から数えると半世紀近くにわたって115系が配置されており、2025年3月現在も100両以上の113系・115系が所属している同所ですが、227系500番代の導入により、その勢力は確実に縮小しています。2025年2月には、湘南色で残存していた115系300番代最後の2編成が引退しており、廃車回送された様子は記憶に新しい方も多いことでしょう。
そんな有終の美を飾った115系300番代でしたが、それとほぼ時を同じくして、とある115系の形態がまた一つ消滅しました。岡山区の3両編成であるD編成に4両のみ存在する、切妻スタイルの先頭車化改造車、クモハ115形1600番代です。
今回は、彼らの形態やその特徴を振り返ってみましょう。
▲切妻スタイルが特徴の1600番代。岡山地区のD編成のうち4本のみがこの形態であった。
‘15.12.27 D-29+A-12編成 北長瀬 P:おれんじらいん
彼らクモハ115形1600番代と、同車を組み込んだ編成(以下1600番代編成)は2004年に登場しました。当時岡山区に13本が在籍していた4連A編成のうち、4本の上り方先頭車を脱車、その上でモハ115形に先頭車化改造を施工しました。改造に際しては、西日本の113系・115系で実績のある、種車の切妻構造を活用する工法での施工を実施しています。これ以降、113系・115系に先頭車化改造が行われることはなかったため、本系列の切妻改造車、ひいては先頭車化改造車としては「末っ子」ともいうべき存在となりました。
改造によって取り付けられた前面は貫通扉を設けた構造で、同時期に改造された加古川線向けの103系とは灯器類などの配置に共通点がみられます。
また、切妻改造車が組み込まれた113系・115系は2両編成が基本ですが、1600番代編成は中間車を組み込んだ3両編成を組成していることや、他の改造車(113系3800番代を除く)は改造時に体質改善40N工事が行われている中、時期の関係から体質改善30N工事が施工されていることなど、切妻改造車グループの中では比較的相違点の多い車両となっています。ワンマン運転対応工事(準備工事とも)がなされており、運転台にモニターが設置されているほか、運転台妻引戸に他のワンマン車でも使用されている窓が大型のものを採用していますが、実際に使用されることはありませんでした。
▲運用上は他の編成と区別されず使用された。写真は117系からの編入車を組み込んだオカK編成と連結した姿。
‘10.3.31 K-04+D-29編成 岡山 P:おれんじらいん
改造後は、他のD編成と共通運用がなされ、運用によっては6両編成や7両編成の先頭に切妻先頭車が立つこともありました。2010年代にはJR西日本に所属する国鉄型車両を中心とした塗装の単色化が行われますが、1600番代編成は4本という本数の少なさや、岡山区自体の塗装変更スピードの速さもあり、2012年頃には全ての編成が中国地域色に塗装が変更されています。その後も大きな変化もなく引き続き運用を続けていましたが、227系500番代の投入により、2024年夏より廃車が進行します。1600番代編成は115系300番代と同様に優先的に置き換えが進められ、半年も経たない2024年12月24日に、最後まで残存したD-28編成が廃車回送されています。
▲2024年11月には、新見列車区でのイベントで展示された。思えば、これが最後の花道だったのかもしれない。
‘24.11.23 117系「WEST EXPRESS 銀河」M117編成・D-26編成・D-31編成 新見列車区 P:おれんじらいん
通勤・近郊型電車、特に改造車においては特段珍しい話ではありませんが、彼らはその特徴的なスタイルに似合わず、ひっそりとその歴史に幕を下ろしたのでした。