text:MSかぼちゃ(X:@MS3167)
111系・113系・115系といった直流近郊型電車の研究を活動のメインとし、鉄道系サークル「日本かぼちゃ電車学会」の主宰も務め、動画や同人誌でその成果を発表しているMSかぼちゃさんの連載!「徹底研究!国鉄近郊型電車113系115系」。今回はJR西日本の体質改善工事車で「40N」と呼ばれるものを受けた113系のうち、少し変わった「中期型40N車」と言われるものにクローズアップします。細かいポイントにはなりますが、通常の40N施工車とはどういったところに違いが見られるのでしょうか?(編集部)
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JR西日本で多くが活躍する、「体質改善40N工事車」。座席の転換クロスシート化や張り上げ屋根化、さらには窓枠の交換など、車内外に大きく手が入れられており、国鉄型らしからぬ近代的なそのスタイルは非常に特徴的です。そんな40N車の中には、すこし特殊な形態を持つ車両が存在します。
今回は、そんな40N車の少数形態、「中期型40N車」について解説していきましょう。
▲中期型40N車のクハ111形。1977年に製造され、今年で車齢は48年となる。
‘15.3.14 広島 クハ111-565 P:おれんじらいん
中期型40N車について解説する前に、まずはその言葉の意味について説明しなくてはなりません。
「中期型」というのは、113系・115系の中で1970年代中頃に製造された車両たちの総称です。113系0’番代(0番代新製冷房車)や115系300番代などが該当し、側面のユニット窓が特徴ですが、後期に製造された車両とは異なりシートピッチは拡大されていません。
体質改善40N工事に話を戻しますが、この工事は113系では原則として1970年代後半に製造された113系2000番代などの「後期型(シートピッチ改善車)」を対象に施工がされています。しかし、一部には先述した中期型にも施工した例を見ることができます。
つまり、「中期型40N車」とは、「例外的に中期型車を対象として体質改善40N工事を施工した車両」のことを指すのです。
▲こちらは一般的な40N施工車。上の写真と比較すると、いくつか差異を見つけることができるだろう。
‘12.8.14 広島 クハ111-2070 P:おれんじらいん
さて、中期型40N車を一般的な40N車と比べてみると、その形態にはいくつかの相違点を見つけることができます。
最たるものが車端部の窓配置で、他の車両では側窓が1枚と戸袋窓が1枚の配置となっているのに対して、中期型40N車では側窓が2枚となっており、戸袋窓は基本的に埋め込まれています。その他にも、便所窓やドアの間隔など、差異の多くは種車の違いに由来するもので、なかには更新に際する苦労が偲ばれる点も存在します。
しかし、なぜこのような形態の車両が登場したのでしょうか。これは、40N工事の前身である「延命N工事」の施工状況からその理由を伺うことができます。
実は、113系における40N工事の施工対象は原則として「その時点で延命N工事を含んだ更新を施行されていない車両」とされており、延命N工事は中期型の大半と、それ以降に製造された後期型のごく一部への施工が完了していました。裏を返せば、この時点では更新を受けていない、後期型のほぼ全車と中期型の少数が、40N工事の施工対象となっていたため、少数形態の車両が登場することとなったのです。
▲現在も岡山で活躍するB-18編成。岡山区の113系自体も、ここ1年で大きく数を減らしてしまった。
‘24.3.9 岡山 B-18編成 P:おれんじらいん
現在、中期型40N車は岡山区のB編成の先頭車に0’番代が4両、福知山区に5300番代が2連2本の8両が在籍していますが、岡山区の113系は置き換えが急激に進んでおり、中期型40N車も近い将来に廃車となることが推測されます。福知山区に関しても、具体的な置き換え計画は発表されていませんが、車齢50年も近づいており、姿を消す日もそう遠くはないでしょう。
廃車が進み、残存数がついに1%を切った113系。改造数の少なさを考えると、このような車両たちが現在もある程度の車両数が運用されているのは奇跡的であるといえるでしょう。
▲113系5300番代にも、40N施工車が写真のS2編成を含めて2本存在する。
クモハ112-5302 P:おれんじらいん