text & Photo:福島 鷺栖
取材日:2022.6.28(特記以外)
381系「やくも」の引退の中で、同じく注目を浴びたのがEF64 1000番代が牽引する伯耆大山~岡山(タ)の貨物列車、通称「伯備貨物」です。中央西線のEF64の運用も減少する中、貴重な国鉄型電気機関車による定期運用は、381系とあわせて話題となりました。
そんな「伯備貨物」の鳥取方発着駅である伯耆大山駅ですが、実は「その先」があるのはご存知でしょうか?
まずはそもそもの「伯備貨物」について触れましょう。この貨物は伯耆大山での取り扱いの貨物のほかに、王子製紙からの紙パルプなども多く含まれます。この紙パルプの製造元である「王子製紙米子工場」にある専用線が、伯耆大山の「その先」にあたります。今回はその訪問時の様子を紹介していきます。
【写真】知られざる起点駅の「その先」 マニアックな専用線写真はこちら!
■大山を見上げる専用線
かつては、山陰本線にもいくつか工場専用線がありましたが、現在はこの王子製紙の専用線のみとなりました。専用線は下の地図の通り伯耆大山の駅の西側から分岐し、工場へ入っていきます。
▲伯耆大山駅は2015年に米子貨物駅の機能移転を行った際にコンテナホームを新設した。伯耆大山の駅の西側から延びる線路が専用線。(国土地理院:地理院地図より)
▲伯耆大山駅で小休止中のEF64 1000貨物更新色
山陰本線 伯耆大山
▲王子製紙専用線の入り口。工場入り口には貨車門が設けられています。この貨車門が開く瞬間に貨物ファンはワクワクしてしまいます。
この日は13:30ごろに発送便がゆったりとした速度で汽笛を鳴らしながら工場から出ていきました。牽引は北陸重機製のNo.19が担当。地方の専用線らしいのどかな雰囲気の中、コキがガタンガタンと重い音を響かせながらゆっくり進む様子は、どこか懐かしさを感じます。専用線は公道に並行しており、かなり間近で観察することができますが、あまり近づきすぎないように、少し離れたところから見るのがマナーです。
▲13:30ごろの発送便。コンテナは19Dや20Dコンテナが中心。
▲伯耆大山でEF64にバトンを渡して帰ってきたNo.19。背後には霊峰「大山」がそびえています。
この日は15:30ごろまで入換が行われ、計2往復の入換が行われました。入換が終わると貨車門が閉められ先刻までの喧騒が嘘の様に静かになりました。
▲貨車門が閉まった専用線入り口。
伯備貨物というと伯備線の山間のロケーションを驀進する姿が印象的ですが、国内では数を減らしつつある工場専用線という貴重な存在にもぜひ注目していただけると、専用線好きとしては嬉しい限りです。ぜひ、本線走行と併せて専用線も訪れてみてはいかがでしょうか。