text & photo:なゆほ
60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は2009年に発売された「いっぱいつなごうEF200とタンク車セット」にクローズアップ。牽引機にはEF200が抜擢され、実車の印象をうまく捉えられたタキ43000はカラーバリエーションもあるという、ボリューム感満載のセットでした。(編集部)
【写真】こだわりを感じるディテール!名作「EF200とタンク車セット」を写真で見る!
プラレールには発売当初から現在に至るまで、数多の貨物列車が存在しています。1959年に発売された初代プラレールである「プラスチック汽車」を始めとし、無蓋車と車運車を牽引する「D51きしゃ」、初めて車掌車が付属した「DD-51ディーゼルきかんしゃ」や、動力車の無い貨車のみのセットである「かもつしゃりょう」「たのしい貨車セット」など、過去の連載でも紹介したものがあるように非常に多彩です。
特に有蓋車、無蓋車、タンク車と言った基本的な貨車にはモデル別に複数の形態が存在し、それぞれ発売時期は異なるものの、一緒に遊ぶと実車さながらの雑多な車扱貨物列車や貨車が留置されているヤードなどが再現できます。
しかし、時代の流れにより色んな貨車で組成された車扱貨物列車は姿を消し、コンテナ車やタンク車に統一されたものが多くみられるようになりました。しかしプラレールでは、同一の貨車でまとめられた「長編成もの」というのはあまり例がありません。今回紹介する「いっぱいつなごうEF200とタンク車セット」は、そういったセットの一つです。
▲2009年7月に発売された「いっぱいつなごうEF200とタンク車セット」
プラレールのタンク車は、長い間他の貨車と共通の台車(台枠)を使って車体のみを交換したものが使われていました。国鉄や私有の古いタイプのタンク車では実在する構造ですが、プラレールが誕生してしばらくした1960年代には台枠を持たないタンク車、タキ9900とその後の標準形式となるタキ43000がデビューしていました。しかし、これらのタンク車の形状は、当時のプラレールで再現するには難しく、もっぱらタキ3000やタキ5450、タキ43000に近い形状の特にモデルを持たないタンク車がラインナップされていました。
2001年に発売された「貨車がいっぱい操車場セット」では台枠付きの旧タイプながら、新規形状のタンクを搭載したものが登場し、タキ43000などで見られる緑とグレーの塗装のものも入りましたが、石油会社やロゴは架空のものとなっていました。2000年代に入ってからのラインナップ再編により、2003年7月に初となる実車を指定した製品「F-04 タキ5450」が発売されましたが、こちらも既存の型を使ったものでした。
ところが2009年、タンク車で統一されたセットが登場しました。それが今回取り上げている「いっぱいつなごうEF200とタンク車セット」のものです。2007年に発売された「JR貨物スペシャルセット2」に端を発するリアルなタキ43000が、なんと塗装違いで8両も入った圧巻のセットです。
日本オイルターミナル株式会社所有の青いもの、日本石油輸送株式会社の黒いものと緑・グレーのツートンのもの、そして1両のみが試作された事で知られる銀色ボディが特徴的なタキ143456が入り、今までにない「タンク車のみの長編成」の製品という事もあり大人気の製品となりました。
▲EF200を牽引機に採用したのがなんともニクい。
牽引機にはEF200 19号機がプロトタイプに選ばれました。ハイパワーで知られるEF200がタンク車を7両も牽引する姿は非常にサマになります。タキ43000は小径の車輪が採用されてバランスよくデフォルメされ、ハシゴや上部ハッチ、配管などの外見上の特徴も上手く再現され、プラレールの貨物の世界に新たな彩りを加えました。
リアルなタキ43000は発売以降、編成車両や単品販売がありませんでしたが、2011年になり機関車系単品の「K品番」と貨車・客車系の「F品番」を統一した「KF品番」が登場した際に「KF-09 タキ43000タンク車」として日本石油輸送のものが製品化。以後、EF510レッドサンダーがタキ143456を含めた3両編成発売されるなど、活躍の場を広げていきました。
2024年現在ではオイルターミナルの給油口をモチーフにした小さな情景パーツが付属したものにリニューアルされ、引き続き同じ品番、商品名で発売されています。対して、黒と青のものは現在では入手困難な状況にあり、形は同じでも色とりどりなタンク貨物列車を再現するのは難易度が高くなってしまいました。
発売から15年が経ったこのセット。EF200が現役を引退してしまった以上、仮にも再販というのは難しいかもしれませんが、改めて同じコンセプトのセットの発売が密かに望まれています。