text:RMライブラリー編集部
▲現在、日本の私鉄で最大の貨物輸送量を誇る岩手開発鉄道。1992(平成4)年まで旅客営業を行っていたが、現在は貨物専業である。石灰石輸送がその中心で、写真右の牽引機は2023(令和5)年に入線したばかりの新鋭DD5602。一方この車両の入線により、左に見えるDD5652は引退となった。
2023.12.11 盛 P:寺田裕一
トラックによる貨物輸送が普及する前、およそ半世紀前までの日本では、全国に路線網を持つ国鉄のみならず各私鉄でも自前の機関車を持ち、沿線で産出される鉱石や農作物類、また原料や工業製品などの輸送に活躍していました。
しかし道路整備が進みトラックによる輸送が増えるにつれ、鉄道による貨物輸送は縮小の一途となりました。特に転機となったのは1984(昭和59)年で、国鉄の貨物取扱駅の大幅縮小により廃業となる鉄道も続出、現存する貨物鉄道は工場が集中する港湾地区の臨海鉄道や、鉱石が採掘されその輸送を必要とする路線を中心としたものになりました。それらの多くは非電化線区で、主にディーゼル機関車が活躍しています。
その私鉄ディーゼル機関車も近年は大きく整理が進んだことで、旧国鉄DE10形の譲渡車やその同型機が多数を占めるようになり、バラエティに富んだ機関車も多くが鬼籍に入りました。ここでは現在から遡ること30年の間に姿を消していった私鉄ディーゼル機関車のうち、北海道・東北地方で働いていたその一部を紹介しましょう。
●太平洋石炭販売輸送DE601形
▲2019年に廃止となった太平洋石炭販売輸送のDE601形。アメリカの機関車を思わせる外観は、米国GE社との技術提携によるもの。
2011.4.29 春採 P:寺田裕一
北海道の釧路で2019(令和元)年の廃止まで石炭輸送を行っていた太平洋石炭販売輸送には、まるでアメリカの車両のような機関車が存在しました。
DE601形という1970(昭和45)年日本車輌製の電気式ディーゼル機関車で、米国GE社との技術提携により製造されたため、日本の機関車とは思えないようなユニークな外観になりました。路線廃止後も引き取り手がなく、残念ながら解体されてしまったそうです。
●八戸臨海鉄道 DD56 3
▲貨物専業鉄道として現在も活躍する八戸臨海鉄道。写真のDD56 3号機にはウミネコのイラストが描かれていたが、2020年に廃車された。
2017.6.23 北沼 P:寺田裕一
次は現在でも貨物専業鉄道として盛業中の、八戸臨海鉄道で活躍していたDD56 3号機です。1981(昭和56)年川崎重工製の新造機で、臨海鉄道ではよく見かける旧国鉄DD13形タイプの56t機でした。形式の56はその重量を表すもので、このような付番方法は全国各地の臨海鉄道で採られているため、似たような形式名の機関車が各地に点在する結果となっています。
このDD56 3は、ボンネット部分に八戸の港付近でよく見かける「ウミネコ」のイラストが描かれていましたが、残念ながら2020(令和2)年に廃車となりました。
●福島臨海鉄道 DD351
▲福島臨海鉄道DD352は1962年日車製の35tセンターキャブ機で、1997年に八幡製鉄所より譲り受けたもの。2003年に廃車。
2001.8.25 宮下 P:寺田裕一
最後は福島県小名浜を中心に路線を展開する、福島臨海鉄道のDD352号機です。1962(昭和37)年2月日本車輌製の35tセンターキャブ機で、当初は九州の八幡製鉄所で使われていました。1977(昭和52)年に福島臨海鉄道に入線し、廃車となる2003(平成15)年まで使用されました。国鉄DD13タイプが幅を利かせる臨海鉄道が多いなか、産業鉄道らしい外観が特徴でした。
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以上紹介した3機は現在では車籍がありませんが、現在発売中のRMライブラリー293巻『私鉄内燃機関車の変遷 北日本編』では、太平洋石炭販売輸送・釧路開発埠頭・苫小牧港開発・津軽鉄道・南部縦貫鉄道・八戸臨海鉄道・岩手開発鉄道・小坂精錬小坂鉄道・秋田臨海鉄道・くりはら田園鉄道・仙台臨海鉄道・福島臨海鉄道・新潟臨海鉄道の13社が所有するディーゼル機関車について、1993年以降のおよそ30年間の間に在籍があった車両を写真入りで解説します。
2023年刊行の『私鉄電気機関車の変遷(上・中・下)』に続く姉妹編で、今回の「北日本編」に続いて「関東・中部編」、「西日本編」の3部構成となります。続編は12月および2025年1月の発売となります。
■RMライブラリー293巻『私鉄内燃機関車の変遷 北日本編』
■著者:寺田 裕一(てらだ ひろかず)
■判型:B5判/48ページ
■定価:1,375円(本体1,250円+税)