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特集・コラム

国鉄型電車を持ち歩く!?廃車車両のシートを活用したパスケース作りワークショップに潜入!

2024.12.11

text:鉄道ホビダス編集部
取材協力:ものづくり館 by YKK

 鉄道車両が廃車となったり、更新・リニューアルによって発生した部品が販売される光景は、以前よりイベントなどでよく見かけます。レイル・ファンの間でもこうした部品の収集を主とする方もいるほどです。
 そんな中、座席のシートを生地として、新たなモノに作り変え「持ち運べる」ようにできるワークショップが東京・秋葉原の「ものづくり館 by YKK」にて開催されると伺いました。今回、このイベントに鉄道ホビダス編集部がに潜入し取材してきました。

【写真】誰でもカンタンに作れちゃう!ワークショップ会場の様子はこちら!

■イベントを主催するのはファスナーメーカーの「YKK」

 今回のイベントを主催するのは世界でも有数のファスナーメーカーとして知られるYKK。いわゆる衣服や鞄の開け閉めに使用されるスライドファスナーから、布製品でよく見かける面ファスナー、樹脂製バックル、スナップボタンなど、「留める」ことのできる製品を数多く世に送り出しています。

 衣類や小物類でそのメーカー名を見る機会が多いかと思いますが、実は鉄道や自動車、航空機など、車両に関するファスナーも数多く製造しています。鉄道車両であればE7系W7系をはじめ、E5系やE6系、在来線でもE657系やJR四国の8600系などの枕の可動部分にYKKのファスナーが使われていたりと、鉄道車両の中でも身近なところにYKKの製品が使われています。

 こうした鉄道とYKKの関係性を解説するプレゼンテーションもワークショップ前半で行われ、企業についてより深く知ることができました。

■あいの風とやま鉄道と富山にゆかりのあるYKKがコラボ!

 そんなYKKですが、富山県にも広大な拠点が設けられているのをご存知でしょうか。その社員輸送を支えるインフラという面で、あいの風とやま鉄道との関係も密接です。YKKはあいの風とやま鉄道へ出資もしているところからも、いかにお互い重要な存在かというのがわかるかと思います。
 そんな関係性を持った両社ですが、引退した413系の部品とYKKの製品を絡めて何かできないかということで、今回の「シートモケットを活用したパスケース作りワークショップ」という企画が立ち上がり、座席自体を譲渡してもらうことへと繋がったと言います。

 ●あいの風とやま鉄道413系とは?

現役時代のあいの風とやま鉄道413系AM05編成。

‘24.5.30 IRいしかわ鉄道 金沢 P:宮島昌之
(鉄道投稿情報局より)

 あいの風とやま鉄道で活躍していた413系は、元々は国鉄が交直流急行型電車の機器類を流用し、乗降のしやすい近郊型車体を新造して組み合わせる改造によって1986年に生まれた電車です。国鉄分割民営化によりJR西日本へ継承。2015年の北陸新幹線金沢開業時に北陸本線の一部が第三セクター化し、その際誕生したあいの風とやま鉄道へ3両編成×5本が譲渡されました。
 そのうち特別仕様へ改造された「とやま絵巻」と観光列車に改造された「一万三千尺物語」の2本を除き、一般用の413系は2024年6月に全廃となりました。

413系AM05編成の車内。シートモケットはラクダ色に近い色をしており、座面部分とそうでない部分で、色が変わっているのがわかる。この経年による質感が、パスケースの生地にもそのまま活かされている。

‘22.10.30 貸切列車車内で撮影 P:上石知足(鉄道ホビダス編集部)

■子供でも楽しめるカンタンな裁縫で自分だけのモケットパスケースが完成!

ミシンに不慣れでも安心。カンタンな作業でパスケースを作ることができる。

 この413系のうち、最後まで一般用として活躍したAM05編成のシートモケットを使用してパスケースを作っていきます。縫い合わせるのは両端と底部の3箇所だけ。もちろん端切れを使った練習をしてから実際に縫い合わせるため、ミシンを学校で習ったことがない子供達でも簡単にチャレンジすることができました。
 ファスナー部分はもちろんYKK製のものが使われ、カラーは晩年の塗装をイメージした青一色と、通称「新北陸色」時代をイメージした白・青の2種をこのワークショップのためだけに用意されて、好みで選ぶことができました。

 実際に使われたシートモケットを活用しているため、切り出した座面の位置によって色ムラがあるのが逆に味わいとなっており、似ているようで一つとして同じ色がないのも魅力。愛着の湧く自分だけのパスケースを作ることができました。

 編集部では参加者にもお話を伺ってみることに。JR時代から日常的に乗っていた新北陸色の413系に親しみを感じており、ネットでこのワークショップを見つけて参加を決めたと語っていた富山出身の大学1年生の方は、ファスナカラーはやはり新北陸色風の白と青のものを選んでいました。

 鉄道の中でもシートモケットが好きという小学5年生の方は、初めてミシンに触ったという妹さんと一緒に参加。二人とも綺麗にオリジナルパスケースを作ることができました。

 大学4年生の方は旅行で富山に行った際413系が好きになり、思い入れが深いとか。今回シートモケットの素材として使われたAM05編成にも乗ったことがあるといい、「廃車となり現存はしないが、こうした形で手元に残しておけるのは嬉しい」と語ってくれました。

 大人から子供まで、幅広い世代で楽しめたワークショップ。地元企業と鉄道会社の協力により、地域のPRにも繋がっていたいました。

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