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サウンドプラレールの祖先 実はシンプル?「シュッポーD51」の郵便車を見る!

2024.10.18NEW

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は現在も展開される「サウンドプラレール」シリーズの祖先ともいうべき製品を紹介します。約40年前に登場したそれは、蒸気機関車のドラフト音をギミックで再現した意欲作でした。(編集部)


【写真】約40年前に存在した「サウンドプラレール」とは?画像はこちら!

 「サウンドプラレール」は、車両や情景部品から音が鳴るギミックを組み込んだプラレールのシリーズ名です。2003年に発売された「S-42 サウンド223系新快速」「S-43 サウンドE231系近郊電車」に始まり、2024年現在に至るまで多くの種類が登場しています。「サウンドプラレール」は電子基盤を車両に組み込めるようになってから急速に発展しましたが、それ以前にも車両から音が鳴るギミックを組み込んでいるものが複数存在しました。
 「D51」は走らせるとモーターボックスから「カチカチ」と音が鳴るギミックが、「C62」ではボイラー部に笛が内蔵され走行中に「ピーピー」と音を鳴らして走り、「ちんちんでんしゃ」では走行中に台車に取り付けられたベルが「チンチン」を音を鳴らしながら走ります。
 これらは1970年代の製品で、お世辞にもリアルな音とは言えませんが、1980年代に入ると、蒸気機関車のドラフト音が鳴るギミックを搭載した車両が登場し、より本物に近い音を出すようになりました。それが今回紹介する「シュッポーD51」の郵便車になります。

▲1982年に発売された「シュッポーD51」。こちらは家畜車が付いたセット品。

 プラレールの蒸気機関車は今でこそ多くの種類がありますが、昔は「弁慶号」「C12」「D51」の3タイプしかなく、弁慶号に関しては鉄道100周年の記念商品的な位置付けだった事もあり早期に姿を消しています。「D51」は大型のテンダー機関車がモデルということで他の形式にも流用され、動輪が3つ付いた「C58」、ボイラー内部に笛が鳴る機構を組み込んだ「C62」になったことがあります。前述したように「D51」では走行中にギアボックスから「カチカチ」と音が鳴る仕掛けが組み込まれており、これはおそらくジョイント音をイメージしたサウンド機構であると思われます。
 このように、昔から「プラレールの車両から音を鳴らす」アイデア自体は存在していました。1980年代には電子基盤搭載が実用化され、「鉄道唱歌」「カッコウワルツ」などの音楽を鳴らしながら走る「メロディー」系プラレールも登場していますが、実車さながらの音を出せるようになるには、やはり2003年発売の「サウンドプラレール」まで待つしかありませんでした。
 しかし、サウンドプラレールの約20年前に発売された「シュッポーD51」はシンプルながらも蒸気機関車のドラフト音を出しながら走るという画期的なギミックを搭載しています。

▲「シュッポーD51」郵便車の内部構造。一部分だけ歯がないギアと車体側に設置されたバネが擦れることで、一定間隔で音が鳴るようになっている。

 1982年に発売された「シュッポーD51」は、その名の通り蒸気機関車の音を出しながら走るという、一風変わった商品として登場しました。しかし「C62」のように機関車自体にギミックが搭載されているわけではなく、連結している「郵便車」から音を出すという、なかなか考えられた組成をしています。
 この郵便車は車体にバネが取り付けられ、台車側の動力伝達用ギアのシャフトに設置された歯が3/4程度しかない金属製のギアとバネが擦れることで、一定間隔で「シュッシュッ」という音が鳴るギミックを実現しています。これだけのギミックですが、走らせてみると確かに本物に近い蒸気機関車のドラフト音が聞こえ、シンプルながらもなかなか考えられた車両であることに感心します。今までに存在した音が鳴る車両とは異なり「本物さながらの音を出すプラレール」として、現在のサウンドプラレールに一歩近づいた印象です。
 「シュッポーD51」用の郵便車はギミックを搭載している関係上、既存の郵便車とは異なり、扉が保護棒の付いた別パーツに、窓も埋められた様相となっており、国鉄貨車にありがちな同一形式でも個体による差異がある車両としても見ることができます。
 単品では炭水車付きのD51に郵便車という組み合わせでしたが、同時期に発売されたセット品「シュッポーD-51セット」では炭水車が無い代わりに家畜車が用意され、D51らしい力強い音を出しながら貨車を牽引する貨物列車というイメージに仕立てられています。
 サウンド車であることを示すために「サウンドプラレール」と印刷された紙が巻かれているのも特徴で、現在のシリーズが登場する約20年前からこの呼び方が使われているのも興味深いです。

 現在のサウンドプラレールが登場した際に発売された「サウンドC62重連セット」は、スペースの関係上、モーターと電子基盤を同時に組み込むことが困難な蒸気機関車を重連仕様とすることで、一方を動力車、もう一方をサウンド車とした画期的な製品でした。「シュッポーD51」で誕生したアナログギミックによるドラフト音の再現は、最終的に電子基盤による実録音源での表現に移り変わっています。

 「シュッポーD51」のようなおもちゃらしいギミックを組み込んだ車両は、今となっては歴史の中です。

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