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特集・コラム

なんだこれは!奇抜な見た目の「中国のプラレール」とは一体?

2024.08.16

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回はプラレールの中でも海外製品、それも1990年代末に中国で発売されたプラレール「陪樂兒 火車世界」にクローズアップ。その知られざる世界をご紹介します!(編集部)


【写真】90年代末中国で発売された知られざるプラレール 全貌はこちら!

 プラレールに海外製品があることは、プラレールのファンの間では有名な話かと思います。現在は展開を終了している国を含めても、韓国・中国・台湾・香港・タイ・ヨーロッパ・アメリカと幅広く発売されています。プラレールの輸出の歴史は古く、1970年代には既にドイツで発売されていたことが確認されており、日本だけでは留まらない鉄道玩具としての可能性を模索していたことが窺えます。
 アジア圏では現地の車両を「プラレール」ブランドとして発売する一方、アメリカからは本家プラレールは既に撤退しており、トーマスシリーズに特化したライセンス商品「トラックマスター(現 モータライズド)」が現地の玩具メーカーから発売されるといった独自の発展を遂げています。
 これら輸出品や現地ライセンス生産品の中でも、一際目立つ少し変わったプラレールが存在していることをご存知でしょうか。今回はその「変わったプラレール」についてご紹介します。

▲1990年代末期に中国で発売されていたプラレール「陪樂兒 火車世界」

 中国におけるプラレールの展開は、2010年の上海万博開催に合わせて発売された中国高速鉄道のCRH2型「和諧号」が有名ですが、それ以前の1990年代末にも、実は一度進出しています。それが「陪樂兒 火車世界」です。
 この事についての詳細は伝わっていませんが、1997年に日本の総合スーパーマーケットの中国進出へ合わせて発売されたものであると考えられています。車両単品が6種類、セット品が3種類、情景部品として「ちかてつのえき」の色を変えて「上海駅」としたものと、架線柱と立木をセットにしたものが発売されていました。
 車両に選ばれたのは1997年当時は既に絶版となっていた「レッドアロー」「ビスタカー」「ディーゼル特急」の3車種で、単品は完全オリジナルカラー、セット品は日本国内品に近い色合いとなっていました。単品に関してはその日本にはないような色使いが人気を呼び、ネコ・パブリッシングが1998年に刊行した書籍、「プラレールのすべて」でもページを割いて取り上げられています。発売・製造元は共に現地法人のライセンス生産品ですが、プラレールのロゴはそのまま使用され、箱も日本では1987年から1994年まで使われていたタイプを基にしており、1997年当時から見て少し前のプラレールを感じさせるデザインとラインナップになっていました。

▲「陪樂兒 火車世界」の単品6種類。レッドアローは赤色、ビスタカーはオレンジ色、ディーゼル特急は水色で成型されている。

 箱は全ての車両で共通となっており、商品名はシールが貼られて区別されています。ディーゼル特急は「力獅號」、レッドアローは「先行號」、ビスタカーは「美景號」と名付けられており、カラーバリエーションによってそれぞれ更に「2號」「3號」とされています。「1號」相当はセット品の車両になりますが、こちらは全て先述の名前が振られており、名称上では存在しないようです。

 今回紹介している「力獅2號」は窓周り及び雨樋が紫色になっています。「力獅3號」では紺色に塗られ、車体色に合う帯色が選ばれているのが分かります。「先行2號」は赤色車体に明るい紫色の帯、「先行3號」は黄緑色の帯が巻かれており、この2車種はどちらも実車からはかなりかけ離れたカラーリングです。
 「美景號」だけは実際のビスタカーと同じようなオレンジ色で成型されていますが、蛍光色に近い印象を受ける色合いになっています。「美景2號」は黄色帯、「美景3號」はエメラルドグリーンに近い水色帯で、なかなか奇抜な外見です。車輪は日本国内品と同じく黄色成型ですが、動輪ゴムが黒色となっている店が特徴的です。
 なぜこのような色になったかは全く不明ですが、一つの型で複数のバリエーションを作る事ができ、中国の人々には馴染みのない日本の車両ならあえて奇抜な色にしてみようと考案されたのかもしれません。

 セット品3種は日本国内品の「基本No.1~3セット」に対応しており、基本No.1セット相当は「先行號」、No.2セット相当は「力獅號」、No.3セットは「美景號」が入っていました。先述の通り、これらのセットに入っていた車両は実車に近い色合いだった事から、当時絶版で入手困難だった車両が入手できるとして日本のファンからの人気が高かったと言われています。ただし、ディーゼル特急は前面部の「ヒゲ」が、レッドアローは前面窓下の飾り帯、ビスタカーは前面行先表示器がそれぞれ省略されており、日本国内品とは異なります。
 ディーゼル特急とビスタカーは後々日本でも再販されましたが、レッドアローだけはこの中国国内品が最後の登場となってしまいました。

 このように中国進出を図ったプラレールでしたが、当時の中国国内における価格帯が高価であった影響か、進出翌年の1998年には生産を停止、1999年には中国市場から撤退したとされています。
 先述したように、その後は2010年に再進出し現地の車両「和諧号」を発売した他、2020年代の現在では日本で発売されている製品の箱を中国語仕様にした上で日本と同様のラインナップが発売されている事が確認されています。

 「陪樂兒 火車世界」の発売から27年。国外で発売された少し風変わりなプラレールとして、ファンの記憶に残り続けています。

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