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特集・コラム

「マルタイ」「モーターカー」って何?人知れず活躍 鉄道の保守用車を知る

2024.07.24

text:鉄道ホビダス編集部

▲竜王に甲種輸送されるマルチプルタイタンパー。

‘21.11.25 中央本線 八王子 P:奈良仁一郞
(鉄道投稿情報局より)

 日中、列車に乗っていると貨車とも機関車とも、ましてや営業用の車両とも思えない作業用車両が、側線や車両基地の隅に留置されているのを目撃したことがある方は多いかも知れません。また、終電近くになると、近くの線路でこうした作業用車両が光を照らしながらゆっくりと走り去っていくのを見たことがある方もいるでしょう。こうした車両たちはどういったことを日々やっているのでしょうか。

【写真】知られざる「保守用車」その一部を写真で見る!

■そもそもとして「車両」ではない

 こうした鉄道の保守作業(=保線作業)に従事する車両のことを一括りに「保守用車」「保線機械」などと呼びますが、厳密に言うとこれらは「車両」として扱われていないことがほとんどです。というのも、各鉄道会社は車両として籍がある(車籍)があるものを車両として扱っている反面、これら保守用車は「機械」という扱いであることが多く、車輪がついていて線路上を物理的に自走可能だったとしても、車両という括りには入らないのです。
 それでは車両ではないとどういうことになるのでしょうか。まず特別な手続きを踏まない限り、本線上で自走することができません。ナンバーのない自動車が公道を走行できないそれに似ていますが、鉄道の場合そもそもとして本線上を車両が運行する際は、それが営業であろうと非営業であろうと「列車」として運行ダイヤの計画を定められ、固有の番号(列車番号)で管理の下、初めて車両を運行することができます。保守用車はこれら車籍がなく列車として運行はできないので、本線上を走行する際は特別な手続きが必要です。それが「線路閉鎖」と呼ばれるものになります。

 この線路閉鎖とは、決められた区間を閉鎖し、営業列車が誤って入ってこないようにする措置のことです。こうすることで営業列車が入らず、安全に作業することができます。後述のモーターカーによる除雪作業や、運休を伴う大規模な工事となる場合など、日中に線路閉鎖を行ない作業することもありますが、多くの場合は終電後の深夜に線路閉鎖がなされ、これら保守用車が活躍します。

■保守用車の種類(一部)

●軌道モーターカー

 保線作業をする上での点検や作業機材運搬、牽引、人員輸送、除雪などの作業など、マルチに活躍する機械です。かつてはガソリンエンジンで動くものもありましたが、現在ではディーゼルエンジンが主流です。また、線路を走れるように改造した自動車(軌陸車)をモーターカーとして運用する鉄道事業者も存在します。

●マルチプルタイタンパー

 軌道の砂利(バラスト)は車両の通過が繰り返されることで、バラストに隙間が生まれて次第に崩れていきます。そのままにしておくと軌道の位置が乱れてしまうので、突き固めと言われる作業で軌道の位置を定期的に補正し乱れを予防するのがマルチプルタイタンパーの役目です。「マルタイ」「MTT」と略されて呼ばれることもあります。

●レール削正車/探傷車

 レール削正車はその名前の通り、レール表面を削って整えて乗り心地や騒音を改善するための保線機械です。さらにこの作業を行なうことで、レール自体の寿命も伸びるため、新幹線に加えて近年では在来線でもこの作業が行なわれるようになりました。
 また、レール探傷車はレール内に潜む傷を探し出し、破損することを未然に防ぐための機械です。

●道床交換車/整理車(スイーパー・レギュレーター)/コンパクター

 「道床」とも言われる軌道を支えるバラスト層。これらも実は車両が走ることで粒が細かくなるなどの磨耗が発生します。この古くなったバラストは道床交換車(バラスト作業車・バラストクリーナーとも)といわれる機械で交換されます。
 また、マルチプルタイタンパーの作業で乱れたバラストを均すバラストスイーパーや、バラスト作業車で交換され、仕上げにバラストを整えるバラストレギュレーターなど、似たような用途を持つ機械も多いです。さらにこれらとは別に、最後の最後に軌道を安定させるためのバラストコンパクター(道床安定作業車)という機械も存在します。

●検測車

 総合検測車というとEast iやドクターイエローのような車籍のある車両を思い浮かべる方が多いかと思いますが、車両ではなく作業用機械として検測車を導入する事業者もあり、架線・軌道両方を検測する総合検測車から、架線や軌道をそれぞれ検測するものまで様々です。

 これらに挙げた以外にも作業内容や路線の特性によって様々な用途・方式の機械があり、一度調べ始めるとその種類や形態の多さに驚くことでしょう。また、事業者ごとに異なるカラーリングが施されたり、近年はマスコットキャラクターが描かれたりするなど、見た目という点でも差があります。

 普段日の目を見る機会はなかなかありませんが、日々の安全運行には欠かせない存在です。

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