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特集・コラム

「郵便・荷物列車」ってなんだ?今はなき列車形態 知られざる編成例を知る

2024.07.10

text:RMライブラリー編集部

▲国鉄末期に消滅した郵便・荷物列車。地味ではあるが優等列車並みのスジの立った列車が多かった。

模型製作:林 義泰・池田純一

【写真】充実する鉄道模型車両!Nゲージの写真で「郵便・荷物列車」を知る!

 国鉄の郵便・荷物輸送がなくなって今年で38年。貨物列車とは「物を運ぶ」という点においては共通していますが、逆にそれ以外は明確に異なる存在であり、どちらかというと旅客列車に近い存在でした。というのも、荷物車に最終的に増備されたワキ8000・ワサフ8000以外は全て「客車」に属す形式を持った車両で、ダイヤ構成も旅客列車のそれに近く、東海道・山陽本線においては、牽引する機関車もほとんどの列車が旅客用EF58の担当でした。
 そもそも郵便・荷物車は旅客の手荷物を運ぶ車両として旅客列車に併結され運行されており、1960年代以降は小荷物輸送の拡大と駅での積み下ろしによる列車運行の遅延の頻発などから、郵便・荷物の専用列車が運行されるようになったのです。荷物の積み下ろしもよほど大きな駅でもない限り、旅客ホームの端での扱いでした。

 余談ではありますが、郵便・荷物列車が運行されていた時代、東海道・山陽本線での郵便荷物車の併結位置は、1号車の前(下り方)で、機関車の次位、上り列車では最後部(下り方)に併結されていました。そのため、特に郵便物は、駅から直ぐに集配作業ができるように、各県庁所在地の中央(または大型局)郵便局は駅前に位置し、それも駅の下り方に立地していたといいます。この名残は、東京駅、横浜駅、静岡駅、名古屋駅、京都駅、広島駅などは現在でも見られる郵便・荷物輸送の名残として、駅下り方に大型郵便局が所在しているそうです。

 さて、そんな古き良き時代の郵便・荷物列車ですが、近年Nゲージ完成品が充実してきました。今回はその編成実例を改めて見ていきたいと思います。

■郵便・荷物列車編成例

●急行荷物31列車(汐留~鹿児島)1984年頃静岡付近
鹿児島←EF58 or EF62(浜松~広島間EF61)+マニ44+マニ50+マニ50+マニ44+マニ50+スユ15+マニ44+マニ50→汐留

●急行荷物33列車(汐留~熊本)1984年頃静岡付近
熊本←EF58 or EF62+マニ50+マニ50+マニ44+マニ44+スユ15+ワキ8000+マニ44+マニ44+マニ50→汐留

●急行荷物2031列車(汐留~東小倉)1984年頃大阪付近
東小倉←EF58 or EF62+マニ44+マニ44+マニ44+マニ36+マニ44+マニ44+ワキ8000+マニ50+マニ44+マニ44+マニ44→汐留

●急行荷物38列車(小倉~横浜羽沢)1984年頃大阪付近
小倉←オユ10+マニ44+ワキ8000+マニ50+EF58 or EF62→横浜羽沢

●1032列車(東小倉~汐留)1984年大阪付近
東小倉←ワサフ8000+ワキ8000+ワキ8000+マニ44+マニ37+ワキ8000+ワキ8000+ワキ8000+ワキ8000+ワキ8000+マニ44+EF58 or EF62 →汐留

●2032列車(東小倉~汐留)1984年大阪付近
東小倉←マニ44+ワキ8000+スユ15+ワキ8000+マニ50+マニ44+ワサフ8000+ワサフ8000+マニ44+マニ44+マニ44+EF62 →汐留

●37列車(汐留~東小倉)1984年大宮付近
汐留←マニ37+マニ44+マニ36+マニ44+オユ10+スユ15+マニ50+スニ41+EF58 or EF62(浜松~広島間EF61) →東小倉

●日本海縦貫線4047列車(大阪~青森)1977年頃新潟付近
大阪←マニ36+マニ50+マニ50+マニ50+スユ15+マニ44+マニ44+マニ60+マニ60+マニ60+マニ44+EF58 →青森

●日本海縦貫線4046列車(上沼垂~大阪)1981年頃金沢付近
上沼垂←マニ60+ワキ8000+ワキ8000+ワキ8000+オユ10+マニ60+ワキ8000+マニ60+ワキ8000+オユ10+EF70 →大阪

●東北本線急行荷物1031列車(横浜羽沢~青森)1984年頃大宮付近
横浜羽沢←マニ44+マニ44+マニ50+マニ50+マニ44+マニ44+マニ50+EF58 →青森

●東北本線44列車(福島~隅田川)1984年頃大宮付近
福島←マニ50+ワキ8000+ワサフ8000+オユ12+マニ50+ワキ8000+ワサフ8000+ワキ8000+ワサフ8000+オユ10+EF58 →隅田川

●北海道・43列車(苗穂~旭川)1984年
旭川←DD51+オユ10+マニ50+マニ50+スハフ44+スハフ44→苗穂

※郵便・荷物列車は同じ列車でも日時や記録地点ごとに編成は異なります。またワキ8000とスニ40およびマニ50・マニ60・マニ36など用途が同じ車両は時期によって形式が異なって組成されています。

 ここで紹介したのは、郵便・荷物輸送の末期に組成されていた青い郵便・荷物車です。皆同じに見える…という方もいらっしゃるかもしれません。
 さて、1960~70年代に最盛期を迎えた郵便・荷物列車ですが、その凋落の転機となったのが、宅配便の登場でした。これは1976年にヤマト運輸が「宅急便」として小口の荷物輸送サービスを開始。それまで郵便小包か、はたまた日通を介して国鉄貨物に依頼するほかなかった荷物の発送が、より手軽で利用しやすいものとして全国的に急拡大。同時に似たサービスの競合他社も立ち上がったことで、国民生活に荷物の発送を「身近で便利なもの」として宅配便は定着しました。一方の国鉄の鉄道小荷物は1975年から1985年の10年間に1/6までに縮小を見せるほど宅配便にシェアを奪われ、折からの構造的な不採算事業であったこともあり、JR化を前に鉄道郵便輸送とともに事業廃止となっていったのです。最盛期荷物車だけでも800両以上在籍していた車両は、これにより役目を失いました。

 さて、マニ50、マニ30、スユニ50、スユ15など一時代の郵便・荷物車の姿が『鉄道車輌ディテール・ファイル愛蔵版マニ50と仲間たち』には多数掲載!本書では編成例や車歴表も出ています。

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「鉄道車輌ディテール・ファイル愛蔵版」シリーズの第4弾は現役車が今なお在籍する荷物客車マニ50です。
実車は荷物客車の近代化のため1977年に登場。荷物列車の廃止後は各種事業用車両に改造されたり、イベント用客車に改造されたりしました。各地での事業用に残ったほか、クルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」の電源車として檜舞台で活躍する車両もいます。本書ではマニ50を中心に派生形式であるスユニ50郵便荷物車、マニ30現金輸送車、スユ15郵便車(2019番以降)も取り上げるほか、ここ10年で、実車の動きが活発だった「リゾートエクスプレスゆう」用電源車マニ50 2186番のその後「THE ROYAL EXPRESS」の改造後の姿も取り上げます。

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