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実はプラレール発展の立役者!?おなじみ「ブロック橋脚」の知られざる歴史を紐解く!

2024.07.05

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は現在ではおなじみとなった情景部品の「ブロック橋脚」の歴史について振り返ります。橋脚自体の歴史は古く、プラレールの誕生当時からあるもの。それがどのようにしてこんにちのブロック橋脚につながっていったのでしょうか。詳しく解説していただきました!(編集部)


【写真】「ブロック橋げた」の入門セットがあった!?写真はこちら!

 プラレールといえば、青いレールと黄色い橋脚です。実在の鉄道をモデルとしたおもちゃでありながら、情景部品はカラフルなものが多く、デフォルメされた車両に合う世界観を演出しています。橋脚については、縦に何段も積み重ねられる「ブロック橋げた」が2024年現在では主流となってます。今回はその「ブロック橋げた」が登場した当時の入門セットにあたる「L特急ブロック橋げたセット」を紹介します。

▲1984年に発売された「L特急ブロック橋げたセット」

 「ブロック橋げた」を紹介する前に、プラレールの橋脚の歴史をおさらいしましょう。橋脚の歴史は古く、1959年の誕生当時から存在しています。当初は青色でしたが、後に黄色、そしてオレンジ色をしたものが登場し、青色のものはレールと同化して見えることを避けるためか早々に姿を消しました。この時のものはレールの溝を橋脚の突起部に合わせて乗せるだけというもので、レールを固定できるガイドとなる構造もなく、非常にシンプルでした。
 後年、橋脚に乗せたレールの安定性を高める改良を施した新型のものが登場しました。こちらは当初は黄色、後にオレンジ色で流通しましたが、1970年代末期に更なる改良が加わった際に再び黄色が採用され、以後定着するようになります。一言に橋脚と言ってもその種類と色は多く、一概に「黄色」がメインカラーとは言えませんが、少なくとも現在に至るまで「プラレールの橋脚と言えば黄色」というイメージが定着しているのは事実です。

 橋脚は長い間、レールを一段上げて高架線を作る情景部品の一つとしてラインナップに並び続けてきました。1974年に登場した「立体はしげた」は積み重ねができ、橋脚の下にレールを通すことができるという「ブロック橋げた」の前身と言える画期的な製品でしたが、「ブロック橋げた」1個分と現在でいう「ミニ橋脚」2個分の高さのものを組み合わせてワンセットというあまり発展性のないものだったため、1976年に絶版となってしまいました。

 「立体はしげた」の絶版から8年後の1984年、コンセプトを受け継いだ橋脚「ブロック橋げた」が登場します。その名の通りブロックのように積み重ねられるため、それまでのプラレールにはなかったタワーレイアウトを作ることができるという、先代以上に画期的な製品でした。
 と言っても、当時はまだ「レールを何段も積み重ねる」という概念がほとんど無い時代です。このため、一通り組み立てみてどのように遊べるかをレクチャーするセットが発売されました。それが「L特急ブロック橋げたセット」になります。

▲近年のセットには見られない、斜め配置をメインとしたレイアウトが印象的

 当時は各地で見られる定番の電車だった「L特急」を入れたこのセット。メインは橋脚とレイアウトなので、車両選定の理由は特に無いと思われます。カラーは今までのものを踏襲した黄色が採用され、既存の情景部品を使ったレイアウトにも違和感なく溶け込みます。
 この「ブロック橋げた」の登場により、今までは平面を基本として広げるしかなかったプラレールのレイアウトに「縦方向に伸ばす」という新たな遊び方が加わりました。それを示すかのように、箱写真には子どもが三段重ねのタワーを組み立てて車両を走らせている様子が採用されています。
 セットレイアウトも独特なもので、上下段で直進・カーブの進路を振り分けられる組み方を応用した立体的な斜め配置のエンドレスという、なかなか考えられたものとなっています。アクセントとして鉄橋が入っているのもポイントです。
 後年のセットにはこのようなエンドレスの立体レイアウトをメインとしたものはほとんど見られず、あくまでも「ブロック橋げた」を使ったレイアウトの入門用と位置付けることができます。

 こうして登場した「ブロック橋げた」は徐々に活躍の場を広げ、翌1985年にはプラレールと互換性のある自動車玩具「プラロード(初代)」の橋脚としても採用され、1987年にブロック橋脚の上面と同じ構造を持った「坂曲線レール」と「ミニ橋脚」が発売されると、既存の橋脚を完全に置き換えて新たな定番商品として定着するようになりました。2000年代に入ってからは名称を「ブロック橋脚」に変更しています。
 時代により改良も繰り返されており、ブロック部の突起の分割化、車両の接触を避けるための設計変更、レール固定部の安定性向上など、現在に至るまで進化を続けています。
 当初は黄色のみだったカラーも灰色・青色・水色・赤色・緑色・白色・茶色など多様化し、プラレールの世界に更なる彩りを加えています。先日発売された「人気のあそびが連結!プラレールベストセレクションセット」では「つながるブロック橋脚」なる最新のバリエーションが登場しました。これは橋脚を前後に分割してそれぞれが機能するように作られたもので、今後の展開が気になる一品になっています。

 「ブロック橋げた」は今年で誕生から40周年を迎えました。すっかり定着した分、改めて注目されることはなさそうな情景部品ですが、実はプラレール発展の立役者なのです。

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