185系

特集・コラム

時代を先取りしたレール!?プラレール初代「高架レール」の運命とは?

2024.06.21

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は高架橋を再現できる「高架レール」にクローズアップします。現在でも発売されている定番レールの一つですが、実はここに至るまでに「初代」にあたる製品が存在しました。(編集部)


 プラレールのレールには、よく知られる青いレールの他にも、高架レールや地下レール、分岐にS字カーブなど、多くの種類があります。中でも、実際の高架橋を彷彿とされる「高架レール」は、グレー色に成型されて実物に寄せられていることもあり、都会的な路線や新幹線を表現する時に役立ちます。
 2024年現在、単品発売されている「R-26 高架直線レール」「R-27 高架曲線レール」で入手可能です。前回の連載で紹介した「つくばエクスプレス」のセットにも、この高架レールが使われています。1999年発売の「高架レールセット」で初めて登場して以来、複数のセットに封入されたのち、2008年に単品発売が始まり、今では定番のレールとなりました。
 そんな「高架レール」ですが、実は先代に当たるものが存在します。今回はその先代が初登場したセット「ライト付東海道山陽新幹線セット 開通20周年記念新幹線専用高架レールセット」を紹介します。

【写真】今とカタチが違う!初代「高架レール」の写真を見る!

▲東海道新幹線の開業20周年を控えた1983年に発売された「ライト付東海道山陽新幹線セット」

 プラレールには1959年の発売当初から「高架線」を作る部品は軒並み用意されており、アプローチ用の坂である「橋レール」、レールの下にはめて使う「はしげた」、山手線の新橋・有楽町付近のレンガアーチを模したようなデザインの「こうかレール」が既に存在していました。
 これらは時代と共に変化していき、「橋レール」は「坂レール」と名前を変えて緩やかなものに、「はしげた」はより安定性が向上したものになりましたが、「こうかレール」は長続きせずに消滅。しばらくの間は「はしげた」と「レール」を組み合わせて高架線を作るしかありませんでした。

 1983年、東海道新幹線の開業20周年を控えたこの年に、今までのレールとは一線を画す画期的なレールが誕生しました。それが初代「高架レール」です。
 アニバーサリーイヤーの記念セットという位置付けとなる「ライト付東海道山陽新幹線セット」に封入され、副題として「開通20周年記念新幹線専用高架レールセット」が併記されています。この表記から分かる通り、新幹線用にデフォルメされた専用の高架レールという代物でした。

▲「新幹線専用」を名乗る高架レール。40年前の製品だが、リアル感は衰えない。

 この高架レールは既存のレールとは全く異なる設計となっており、両端のジョイントが「凹」型になっています。橋脚の上面に「凸」型が背中合わせになったジョイントが成型され、ここにはめ込んでレイアウトを組みます。この構造を採用したことにより、レールを繋げると高架橋の側壁が連続している見た目となり、非常にすっきりとしたリアリティのある姿に仕上がっています。
 また、曲線レールは新幹線をイメージした大きな半径のもので、当時発売されていた「大曲線レール」と同じ規格です。
 また、プラレールと言えば両面使えるレールが大きな特徴ですが、この高架レールは構造上片面しか使えないという独自の設計になっています。橋脚の両側には片持ち架線柱を設置する窪みが掘られ、シンプルな構成ながらまさに新幹線という情景を作り上げる素晴らしいレールとなりました。

 しかし、新開発のレールということでコスト的な問題があったかは定かではありませんが、1980年代前半当時のプラレールセット品の定価が2,000~3,000円台だったのに対し、その1.5倍ほどの値段となってしまいました。
 また「新幹線専用」と称する割りには、当時の新幹線路線は東海道・山陽・東北・上越新幹線の4路線、そして車両は0系と200系の2系式のみという状況もあり、これ以上発展することはなく一度きりの生産で終わってしまいました。後年に発売された新幹線の高架セットも、通常の青いレールと黄色い橋脚という、スタンダードな内容に落ち着いています。同時期に登場した「ブロック橋げた」が改良を加えられながらも現在まで現役であることとは対照的です。
 実物の新幹線はその後は発展を続け、1985年以降の新型車両である100系・300系・400系や、300X・WIN350と言った試験車両も登場し、いずれもプラレール化されていますが、高架レールの復活には及びませんでした。

 1997年になると、長野(北陸)新幹線・秋田新幹線の開業に伴うE2系・E3系のデビューと、JR西日本が開発した最高時速300km/hで走行する「のぞみ」用新型車両500系がデビューし、目覚ましい発展を遂げる新幹線は大きなインパクトを残しました。
 そして、この年新幹線系セットが同時に3つも発売されます。いずれも新型車両・新路線を題材とした「北陸新幹線あさま開業記念セット」「秋田新幹線開業記念セット」「500系新幹線のぞみ号セット」です。
 北陸新幹線と500系のセットでは新幹線と在来線の連絡による線路の違いを、秋田新幹線のセットではE2系とE3系の併結と真新しい線路をイメージすることで、1983年以来14年ぶりに「高架レール」が使われました。初代高架レールはこの一度きりの復活を最後に姿を消します。
 2年後に前述した「高架レールセット」で現行品と同様のものが登場し、改めてプラレールの世界に「高架線」が定着することとなります。2代目「高架レール」は既存のレールと互換性があり、複線間隔での使用も可能で、ブロック橋げたにも載せられますが、側壁の連続性が失われてしまい、リアリティの面では一歩後退してしまったのが残念なところです。

 2008年10月、引退を翌月に控えた0系新幹線の有終の美を飾るセットとして「ありがとう夢の超特急 新幹線ひかり号セット」が発売されました。
 このセットでは高架レール用に開発された「PC橋脚」という新しい橋脚が採用され、現行品の「高架レール」でも、連続した側壁を橋脚により再現できるという内容となり、大いに話題を呼びました。曲線レールも新製品となる「外側高架曲線レール」となり、架線柱もPC橋脚に引っ掛けて取り付ける新型が同梱されています。「ライト付東海道山陽新幹線セット」のコンセプトが復活したとも言え、明言はされていないものの、先代との繋がりを感じるセットとなりました。

 今でこそプラレールの定番商品となった高架レール。ひとつにレールと言っても、一筋縄では行かない歴史が見えてくる製品です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加