185系

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【どういう窓?】昭和期に一世風靡「パノラミックウインドウ」採用車両に注目!

2024.07.03

text:鉄道ホビダス編集部

▲北海道で最後の活躍を続けるキハ40。同車もパノラミックウインドウを持つ。

‘24.6.26 根室本線 平岸~茂尻 P:佐藤直幸
(鉄道投稿情報局より)

 鉄道の中でも、特に車両に関する文章を読んでるとたまに見かける「パノラミックウインドウ」という用語。「パノラミック」という名前から想像できるように、眺望が良い窓であることは大体見当がつきますが、具体的にはどのような窓で、どのような車両に採用されてきたのでしょうか。

【写真】昭和〜平成〜そして令和 パノラミックウインドウ・曲面ガラスを採用した車両たち!

■平窓デザインから曲面ガラスの立体的な窓へ

 鉄道車両の前面窓は、長らく平面的なガラスを備えた車両ばかりでした。昭和期に一世風靡した「湘南顔」スタイルの発祥である国鉄80系電車も、平面窓を採用していました。
 転機は1957年。この年に登場した名鉄5200系、そして翌年には国鉄153系が登場しますが、いずれも平面窓ではなく、前面窓が曲線を描き車体側面まで回り込む「パノラミックウインドウ」と呼ばれる窓を採用しました。主に貫通扉を持つ車両において、狭くなりがちな運転席からの視認性を向上させることを目的にすることが多いですが、それ以上に前面デザインに与える影響は大きく、平面窓では得られない立体感やスマートさを演出しました。
 これらの車両を筆頭に、この頃からパノラミックウインドウを採用する車両が徐々に増え始めます。特に国鉄では、153系で確立された前面スタイルがその後「東海型」として定着し、主に急行型・近郊型で発展していくことになります。

 国鉄では主にこれら東海型スタイルを持つ急行型・近郊型電車のほか、一般型の気動車、さらには電気機関車にも採用例があります。また、特急型気動車のキハ82系やキハ181系でも採用され、特にこの2系式に関しては、曲面を描くライン上に窓桟がなく、特急型らしくスッキリした印象を受けます。

■展望席の窓としてのパノラミックウインドウ

 こうした運転席窓のパノラミックウインドウとしての概念とは多少異なりますが、乗客への眺望を目的に展望席を設けるとなると、必然的に大型の曲面ガラスが多用される傾向にあります。

 名鉄で1961年に登場した7000系「パノラマカー」では、大型の曲面複層ガラスを製造する技術がなかった時代の車両であるために、平面ガラスを連続して多角的に配置することで展望を確保しました。その後、技術が発展すると、より複雑な形状のガラスの製造・加工ができるようになり、383系や、JR西日本の485系や381系に存在したパノラマグリーン先頭車など、展望を売りとした車両を中心に、大きな曲面ガラスを採用した車両は続々と登場していきます。

■より自由度は高く 現代の曲面ガラス使用の鉄道車両たち

 現代は、さらに高度なガラス製造ができる時代となったため、3次元的な曲面を持った前面に沿う形でガラスを作れるようになり、結果として自由度の高い前面デザインが可能となりました。

 もちろん現代でも昭和期から続く運転台のパノラミックウインドウは進化をしながら発展し続けており、JR東海のHC85系やJR西日本の227系、通勤型車両でも東京メトロの13000系などもパノラミックウインドウから発展したような曲面ガラスを採用しており、デザイン性のみならず、運転時の視界の確保に一役買っています。
 さらに西武鉄道の001系「Laview」に関しては、それこそ3次元的な変化をする曲面ガラスを採用しており、その技術力の進化がわかる車両の一つと言えるのではないでしょうか。
 逆に通勤輸送を担うJR東日本のE235系では平面的な窓に回帰するなど、車種や会社によって考え方にも差が生まれ始めています。

 視認性から眺望、デザイン面からこれまで多数の車両で採用されてきたパノラミックウインドウと、そこから発展した曲面ガラス採用の車両たち。鉄道車両とガラス製造技術の進化は、意外にも切っても切れない関係性がありました。

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