185系

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個性派揃い!国鉄最末期に登場した車両たち 今はどうしているのか

2024.06.04

text:鉄道ホビダス編集部

▲国鉄最後の新造系列となった213系。事実上一ヶ月にも満たない期間だけ「国鉄」に在籍していることになった。

‘12.12.27 山陽本線 御着 P:春風直樹
(鉄道投稿情報局より)

 国鉄の分割民営化から37年。国鉄時代に生まれた「国鉄型」は年々数を減らしており、レイル・ファンからの注目は一層高まっています。そんな国鉄型という括りの中でも、1986〜1987年という国鉄として最後のタイミングで製造された車両たちをクローズアップしてみると、いずれも個性派が揃っています。これらの車両たちは、現在どうなっているのでしょうか。

【写真】個性派揃い!1986年〜87年頃に登場した国鉄最末期の車両たちを振り返る!

■国鉄最後の特急型 キハ185系

 国鉄が製造した最後の特急型車両であるキハ185系。四国に投入され、従来の特急型気動車のように長編成を基本とする考えから、短編成と柔軟性を持たせた設計思想を持って製造されました。
 特にシンボルマークや側面のJNRの切り抜きマークは製造時よりなく(先に登場していたキハ183系500番代も同様)、車体も国鉄特急型としては最初で最後のステンレスボディを持ち、カラーリングも緑16号の帯を巻いた姿となり、いかにも「国鉄特急型」然とした見た目からの脱却というものがデザインから垣間見えました。

 JR化後も製造が続けられ、その際帯色はJR四国のコーポレートカラーである水色に変更されました。現在は一部がJR九州に譲渡されたほか、普通列車から観光列車まで、さまざまな活躍を続けています。

■国鉄唯一のVVVF制御車 207系900番代

 205系を皮切りに国鉄でも量産が始まった軽量ステンレス車体。そんなステンレス車体を採用し、さらには当時最新技術であったVVVFインバータ制御を採用して1986年に登場したのが207系900番代です。常磐緩行線に投入され、営団地下鉄(当時)千代田線への乗り入れもなされました。とはいえ、試験的に1本が製造されたにとどまり、分割民営化後も増備されることなく、結局国鉄が新造したVVVFインバータ車はこの207系ただ唯一となりました。

 その後JR化後も形態が大きく変化をすることなく、常磐緩行線で孤軍奮闘を続けていましたが、E233系2000番代の導入が決定すると先輩である203系よりも真っ先に置き換えられることとなり、2009年に引退。現在は全車が解体されて現存しません。

■ローカル輸送のため急行型から大変身! 413系・717系

 末期の国鉄ローカル線では、1980年代に入っても普通列車に機関車牽引の客車や、当時余剰となっていた急行型車両などで賄われていました。ですが、スピードアップは望めず、車両もクロスシート主体の急行用であったりと、旅客が必要としているものとはかけ離れたものでした。そこでダイヤ面では電車化による短編成・高頻度運転のいわゆる「シティ電車」方式を導入して改善させましたが、車両面のリフレッシュも望まれました。
 当初は新型車両を製造したりしましたが、国鉄は財政的に余裕がなく本格的に量産はできなかったことから、急行型車両の車両更新(改造)名義で登場したのが413系と717系です。

 1986年に登場し、413系はJR西日本、717系はJR東日本とJR九州に在籍しました。JR東日本では東北地方で運用されていましたが、E721系の導入で2007年に運用を終了。JR九州では日豊本線等で活躍していましたが、817系などの後継車導入により2013年に運行を終えました。

 一方でJR西日本・北陸地域では長年生き残り、北陸新幹線金沢開業後は第三セクターであるあいの風とやま鉄道に移管される車両も発生しました。とはいえこちらも521系の導入で置き換えが進み、JR西日本では2021年に運行終了。あいの風とやま鉄道では通常編成の他、観光列車である「一万三千尺物語」や「とやま絵巻」に改造された編成も在籍していますが、これらも新型車両の導入により先行きが危うい状態となっています。

 また、えちごトキめき鉄道に譲渡された413系は急行型然とした片開き2ドアの形態を持つクハ455-701を組み込み、国鉄交直流急行色に塗り替えられた編成がえちごトキめき鉄道へ譲渡され、主に観光急行として活躍中です。古き良き国鉄時代の急行列車を今に伝える、貴重な存在となっています。

■「国鉄」に在籍した期間はわずか数週間 213系

 「国鉄」であるのもあと一ヶ月を切った頃である1987年3月。このタイミングで落成した国鉄最後の新造系列がこの213系です。国鉄時代に製造された0番代は今もJR西日本岡山地区で活躍を続けています。

 元々213系は1988年の瀬戸大橋開通、そして本四備讃線に導入するために登場した車両で、外観としては「2ドアの211系」といった感じになっています。とはいえ、211系はベースとしつつもモーター車が2両1組のユニット方式ではなく、モーター車1両で完結する1M制御方式を採用した点が211系とは大きく異なります。また、運転席助手側の窓と貫通扉の窓が拡大され、前面の眺望が良くなりました

 その後213系は民営化されてからも製造が続けられ、JR西日本では瀬戸大橋線の開通に伴い運行開始となった快速「マリンライナー」用に、パノラマグリーン車クロ212が導入されたほか、JR東海でも213系5000番代が登場しました。 「マリンライナー」には後年新型車両5000系が登場したため、クロ212形が形式消滅するなどありましたが、JR西日本・東海ともに現在も多くが現役です。

 ほぼ同時期ながら、国鉄からJRへの変革期にデビューし、それぞれが違った運命をたどった国鉄最末期の車両たち。個性派が揃っていますが、今改めて振り返ると、今につながる設計思想をいずれの車両も持っていたように思えます。

(6月4日 12:30 加筆修正の上掲載)

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