text & photo:なゆほ
60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は珍しい量販店限定のプラレールについてご紹介します。全国流通品だけではなく、さまざまな商品展開があるプラレールですが、その中には量販店が特注した個性的なセットがいくつか存在します。(編集部)
プラレールは基本的に全国のおもちゃ売り場で買い求めることができますが、鉄道会社を始めとする事業者が発注した「事業者限定品」や、懸賞品・イベントの特典などで配布される「非売品」のように、通常の販路では入手できないものもあります。
こうした変わった売り方として、おもちゃ売り場を持つ量販店チェーン、または玩具店自体が発注したものも存在しています。今回は玩具チェーン「トイザらス」が発注した限定品の一つである「はやてクルリ鉄橋往復セット」を例に、その展開の手法や各社による違いについて紹介していきます。
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▲2004年頃にトイザらスが発売した「はやてクルリ鉄橋往復セット」
2002年12月に東北新幹線が盛岡から八戸まで延伸され、E2系1000番代「はやて」の営業が始まりました。これを記念して、延伸直前となる11月に「JR東日本スペシャルセット」が発売、E2系「はやて」と200系「やまびこ」、485系「はつかり」の3編成セットで新旧の青森方面の列車が勢揃いしました。
さらに延伸当日、12月1日の「はやて」の車内販売にて、前述のセットからE2系のみを単品発売した形となるJR東日本限定品の「E2系新幹線1000番代 はやて」が発売されています。2003年7月には、以前の記事でも紹介した「はやて&つばさダブルセット」で連結仕様が登場。同年12月の八戸延伸1周年の際に行われたキャンペーンの当選品として、クリア成型のものと通常塗装の2本がセットとなった「はしれ!プラレールはやて!特別限定版クリア仕様セット」が配布され、JR東日本新幹線の最新列車として幅広い商品展開が行われました。
このように、車両単品・車両セット品での展開は多く行われましたが、レールが入った「オールインワンセット」はなかなか発売されませんでした。
しかし2004年頃になり、メーカーであるトミー(当時)からではなく、玩具量販店である「トイザらス」から東北新幹線八戸延伸を記念したと思われるセットが発売されました。それが「はやてクルリ鉄橋往復セット」です。
▲リアルな色合いとなったパネルステーション。駅名看板が「はちのへ」となっている。
新幹線の開業記念セットは過去にも例があり、1997年に相次いで発売された「秋田新幹線開業記念セット」「北陸新幹線あさま開業記念セット」や、2010年に東北新幹線が八戸から新青森まで延伸した際に発売された「E2系はやて高架レールセット」、2011年に全通した九州新幹線を記念した「新幹線みずほ・さくら高架トンネルセット」があります。
他にも新路線開業・新車両デビューにあやかったセット品が数多く存在し、商品名に「開業記念」などは冠していないものの、500系・700系のぞみ、700系ひかりレールスター、N700系・N700A・N700S、E5系・E6系・E7系に、つい先日デビューした山形新幹線の新型車両E8系のセットも2024年3月16日に発売されたばかりです。
ここに挙げたセット品はメーカーから直接発売されており、全国の玩具店・おもちゃ売り場で購入できました。対して、量販店の企画品は販路が限定されるものの、なかなかマニアックな内容のものが多い傾向にあります。
こうしたセットは有名な「トイザらス」のほか、現在は過去帳入りしてしまった「ハローマック」、さらにこちらも懐かしの名前である「ジャスコ」が企画した商品が存在しています。これらは過去に発売された既存のセット品の内容を流用しつつ、車両と情景部品を独自に変えたものが主流ですが、そのアレンジの仕方は各社によって特色が見られます。
1997年にトイザらスが発売した「長野新幹線セット」は1987年発売の「2スピード新幹線 立体ステーションセット」のレイアウトを流用し、パネルステーションの駅名標を「長野駅」に変えたもので、実在の駅をモデルにして話題性を取り入れた内容となっていました。
同じく1997年にハローマックが発売した「こまち&つばさ立体ループセット」は、1995年発売の「のぞみ号立体ループセット」のレイアウト流用品。E3系こまちと400系つばさがそれぞれ2両編成で入っており、レイアウトの構成を生かして2編成同時走行を可能とした秀逸な内容です。両者とも在来線直通のミニ新幹線ですが、遊び心として後尾車同士を連結させられるパーツが付属していました。実車は連結しませんが、プラレールだからこそできる技として組み込んだものだと思われます。
1998年にジャスコから発売された「WIN350 カラーレールセット」は、その名の通りカラフルなエンドレスの上をWIN350が走るという比較的簡素なもの。駅は付属せず、試験車両が派手な色合いのレイアウトを走行する昔ながらの基本型のセットですが、「試験車両は普段見る新幹線とは違う」という印象を与えてくれるセットです。
このうちハローマックとジャスコは撤退してしまいましたが、トイザらスは2000年代以降も展開を続け、2000年には「カシオペア大鉄橋セット」「SL D51の旅セット」を発売し、2004年頃に今回取り上げてた「はやて」のセットを発売しました。
「はやてクルリ鉄橋往復セット」は1998年に発売された「くるりUターンのぞみ号セット」の車両と駅を変えたもので、これも過去の製品のレイアウトを流用したものの一つです。のぞみ号のセットでは青と白の組み合わせだったパネルステーションをグレー系統に変更し、駅名標を延伸先の「はちのへ」にしていることが特筆できます。「長野新幹線セット」同様、駅を入れる際はモデルにするのがトイザらスの手法のようです。なおE2系はやては非連結仕様で、冒頭で挙げたJR東日本の限定品などと同一。鉄橋やUターンレールなどは元のセットと変わりありませんでした。
2007年には「新幹線自動のりかえ駅セットDX」と「新幹線車両基地レールセットDX」を発売。どちらも通常品のセットを少しアレンジした内容で、それぞれに新幹線が2本ずつ付属。前者はE2系はやてとE3系こまち、後者は500系と700系が入っており、広範囲の新幹線をカバーしました。ちなみに700系はJR西日本所属のB編成に指定されており、通常品では見られない「JR700」のロゴが印刷されている特別仕様となっていました。前者の「自動のりかえ駅」はギミックを前面に押し出すためか、駅名は通常品と同様の「じどうのりかええき」となっています。駅名の変更はあくまでも記念品に限ると考えられます。
トイザらスは2010年代に入ってもこういった限定品の展開を続けていましたが、近年は頻度が低下している模様です。このように20年以上前から存在する量販店の企画品ですが、2024年に入り新たなところからセット品が現れました。ヤマダデンキが創業50周年を迎えたことを記念し、同じくアニバーサリーイヤーで65周年を迎えたプラレールとコラボしたセット品「ヤマダデンキオリジナル プラレールトミカスペシャルセット」です。2024年現在展開中の「プラレール鉄道」と、トミカの情景部品シリーズである「トミカタウン」を一つのセットにした内容で、先に挙げた各社とは異なり、また独自の色が見られます。
このように量販店の企画品は20年以上断続的に続いています。今後の量販店限定品にも期待ができそうです。