text:鉄道ホビダス編集部
▲解体待ちのED79。手前から7・13・14号機の順。※撮影当日は鉄道技術館開館日で、立入り可能場所より撮影。
‘16.3.26 苗穂工場 P:石原幸司
(鉄道投稿情報局より)
当たり前ではありますが、日頃利用する鉄道車両にも当然寿命というものがあります。年数としては大体20〜40年ほどと、自動車などに比べると比較的長寿です。廃車となる理由として、部品の供給が難しくなったり、メンテナンスに多額の費用がかかるようになったり、内装、車体、機器類の陳腐化や老朽化、その他にも車両運用の都合上余ってしまった車両や事故によりやむを得ずに廃車になることもあります。理由は様々ですが、事故等を除いて一般的に役目を終えた車両はどうなっていくのでしょうか。
■営業運転からの離脱・廃車のための回送
最後となる営業運転が終了すると、車庫内で解体場へ改装するための準備を各種行ないます。準備内容は会社や車両によって異なりますが、電車や気動車の場合、広告類の撤去や牽引機関車との連結訓練、機関車だとナンバーを外すなど行なわれたりします。
そして後日、ダイヤに従って解体場がある工場へ向けて最後の旅路へと向かいます。先述のように機関車で牽引されて回送される場合や、電車や気動車など、動力のある車両に関しては自走で解体場まで回送される場合もあります。機関車牽引される理由として途中区間に廃車予定車両が自走では通過できない区間(狭小トンネルや保安装置、電源方式など)が含まれていること、検査切れとなっており本線を自走できないことなどが挙げられます。
■工場にて解体
この解体場というのは車両基地に併設され、線路から直接繋がっている事業者もあれば、解体設備がある工場まで陸送されるという場合もあります。陸送の場合は、車体を切断し運びやすくした上で輸送されることもあります。
解体設備がある工場に到着した車両は順次重機等によって解体されていきます。解体の際には内装や窓ガラス、機器類などを取り外し分別され、「ドンガラ」になった車体を丁寧に解体していく…といった手順が一般的です。
近年では解体した車両から出た金属類をリサイクルする流れも確立しています。特に最近の車両は環境に配慮した設計となっており、新造時より廃車後のリサイクルを考慮されて作られていることもあります。鉄道車両の車体も、解体して適切に処理すれば貴重な金属資源となり得るのです。
■保存に譲渡 第二の人生を歩む車両
大手鉄道会社で新型車両などに置き換えられ、廃車となった従来車両がまた別の会社へと再就職するという例は昔より数多く見られます。もちろんこうした車両はある程度製造から年数が経っており、老朽化している箇所もありますが、ほとんどの場合もう使い物にならないというほど朽ちているわけではありません。適切に修繕、または更新工事を行なえばまだ使える車両ということで、再びその活躍を見ることができたりもします。
こうした一連の譲渡は国内のみならず、海外へと渡って第二の人生を歩む車両も数多くいます。直近ではJR東日本で活躍したキハ40がタイ国鉄へ譲渡するために港に集められていました。このほかタイでは元JR北海道のキハ183系や懐かしいブルートレインの客車たちも過去に譲渡され活躍しています。
そして鉄道車両としての役目は終えたものの、歴史的価値が認められたものや、今後も展示物として集客が見込めるの人気車両となると、博物館や公園などで保存されることもあります。蒸気機関車などは一度は廃車となり公園等で保存されていたものを、再び再整備し動態保存車として車籍を復活させてSL列車に運行される例もあります。
こうした解体を免れ、譲渡や保存などでリユースされた車両は幸運だったと言えるでしょう。ただ、現代ではリサイクルによってかつて鉄道車両で使われていたものが巡り巡って再び姿を変えて使われる…ということも増えてきました。身近にある金属製品は、もしかしたら思い出深い車両だった、ということがあるかもしれません。
(2024年4月8日 10:50 加筆修正の上掲載)