modeling:戸羽あゆみ
text・まとめ:瀧口宜慎(RM MODELS)
photo:羽田 洋
鉄道模型の月刊誌『RM MODELS』でも多数の作品を発表している関西在住の戸羽あゆみさん。ここでは全長約3mに及ぶ超絶Nゲージの「能勢電鉄平野駅モジュール」をじっくりとご覧ください。(編集部)
【写真】本当に鉄道模型!?超リアルな駅ジオラマを写真で見る!
瀧口:今日はよろしくお願いいたします。
戸羽:よろしくお願いいたします。
瀧口:能勢電の中でも平野駅をモチーフに選んだ理由はなぜでしょうか?
戸羽:能勢電の沿線のなかで唯一車庫が隣接していて、本社もこの駅にあるなど能勢電鉄の中枢的な存在なのと、何より朝夕に阪急梅田へ直通運行される「日生エクスプレス」の能勢電線内の停車駅でもあるので、ホームの有効長が長く、規模も駅舎も大きいので、模型的にも絵になるからですかね。また、これは模型を走らせるうえでの話なんですけど、阪急うめだ本店の鉄道模型フェスティバルでは、他の参加クラブのモジュールレイアウトと接続する関係もあって、阪急の長い編成も模型の運転上乗り入れてくるので、8両分が止まれるホームがあったほうが実用面でも便利だという理由もありました。
瀧口:モジュールボードの寸法はどれくらいでしょうか?
戸羽:横3,040×幅600mmで、長手方向は2分割にできて1,520mmの長さで分けられるようになっています。
瀧口:このベースの大きさで平野駅と平野車庫がちょうどスケール通りに収まることから、この寸法になったのでしょうか?
戸羽:長手方向はNゲージの電車自体の長さが駅ホーム、車庫ともに収まらなければ、機能的にも成立しないので、ほぼ実物のスケール通りにしていますが、幅に関しては、車庫の部分が本当はもう少し広がっているのですが、1:150スケ―ルにすると800〜850mmくらいの幅が必要になるんですよ。その幅になると、部屋から簡単に出せなくなるのと、自分一人でボードを持ち上げられなくなるので600mmを限界としています。
■工夫が光る手作りストラクチャー!
▲リアルな橋上駅舎もレーザーカットによるペーパー製だ。
瀧口:そもそも実景や建物の採寸はどのように行なったのでしょうか?
戸羽:インターネットの地図サイトやグーグルアースの人工衛星からの写真などをもとに割り出しています。
瀧口:以前の作品では、ほとんどプラ板を切り出して組み立てた自作のストラクチャーが多かったと記憶していますが、今回の平野駅モジュールでも同様のプラ板自作のものが多いのでしょうか?
戸羽:数年前にレーザーカッティングマシーンを手に入れまして、AdobeのIllustratorで図面を描いて、カッティングマシーンで切り出したものを組み立てています。
瀧口:では今回の平野駅モジュールではどのくらい自作のストラクチャーを活用していますか?
戸羽:今回のモジュールですと、車庫の裏側の住宅地以外はほとんど全てです。架線柱のビームや柵などもカッティングマシーンで切り出したものです。
瀧口:ということはお金がかかっているようで、実はあまりかけていない経済的な工作なんじゃないですか?
戸羽:そうですね。線路とか電源、車両などはかかってしまいますが、それ以外は経済的な材料の購入をしていますね。例えばバラストも専用品でなく、ホームセンターで売っているセメント用の川砂をふるいで砂利を取り除いて、よく日干したものを使っています。石の色味にバラつきがあって、それが意外とリアルなんですよね。
瀧口:なるほど。歩道橋もレーザーカッティングによるものですか?
戸羽:はい、そうです。手スリなどの細かい部分もレーザーカットマシーンで切り出しています。
■メインの橋上駅舎もペーパーによる手作り!
瀧口:橋上駅舎やプラットホームも今までの話からするとペーパー製かと思うのですが、ホーム上面の黄色の点字ブロック帯やホーム端の滑り止めなどどのように表現していますでしょうか?
戸羽:ホームはベースの板はプラ板で表面にケント紙を貼っています。滑り止めはデカールを貼り、黄色の点字ブロック帯は実物もある程度厚みがあるため、自分でプリンターから厚めの紙に出力したものを貼り付けています。このほか線路際のキュービクル(電気設備の箱)や病院の貯水タンクも自作です。
瀧口:小さいキュービクルなども組み立てが大変でしょう。
戸羽:小さいものより一番大変だったのがプラットホームの先端、幅が狭くなっている部分の屋根で、V字になっている屋根の断面は屋根が狭くなるとその分だけ、屋根のV字傾斜は緩くしないと物の形状として整合性が取れなくなってしまうのです。その部分を意識しながら、ホームの直線部分は屋根もまっすぐにしないとカッコ悪いので、どうしたら不自然でなく、無理な力が掛からないかを考えながら設計し、組み立てていくのは神経を使いました。実物の屋根でもこういう箇所は設計と組立に苦労されているんだろうな…という思いです。
瀧口:ところで根本的なことをお聞きしますが、工作のモチベーションはどのようにして維持されているのですか?
戸羽:工作をスタートした時からSNSで常に進捗状況を発信しながら、時には応援され、時には技術の相談の答えをもらったりしながら続けてきたので、おかげさまで完成まで漕ぎつけました。
瀧口:この平野駅のモジュールは将来的にどのように楽しんでいきたいですか?
戸羽:しばらくは周辺のいろいろなイベントにも呼ばれていますので、あちらこちらに参加して皆さんにお見せすると思いますが、将来はこのモジュールを結ぶ単純なエンドレスの線路を組めるようにして、部屋で眺めながら楽しんでいきたいと考えています。
瀧口:今日はありがとうございました。
戸羽:ありがとうございました。
◆精巧な鉄道情景作品勢揃い!『スーパーリアル鉄道情景 vol.7』近日発売!
▲今回戸羽さんの新作情景も掲載予定!お楽しみに。
鉄道模型専門誌『RM MODELS』編集部が選ぶ、Nゲージ鉄道模型で製作した、実物と見まごうほどのリアルなジオラマ・レイアウトを厳選して掲載する人気シリーズの第7弾が近日発売予定!今回もリアルな作品たちが誌面を彩ります。乞うご期待!