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【元中間車】ユニークな顔をした鉄道車両「先頭車化改造」ってなに?

2024.03.07

text:鉄道ホビダス編集部

 

▲後継であるE131系1000番代が導入され、置き換え対象となった鶴見線の205系。山手線と埼京線からの転入時、先頭車化改造された車両だ。

P:芦原やちよ

 鉄道車両、特に電車や気動車には大まかに「先頭車」と「中間車」という概念があります。先頭車とは、先頭に立つ(=運転台がある)車両のことであり、「制御車」と言われることもあります。それに対して中間車というのは、先頭には立たず、編成中間に挟まることを前提とした車両です。
 ですが長い編成を組んでいた車両を、短くして各地へ転用する際、中間車ばかりで先頭車の数が足りなくなる問題はどうしても付きまといます。そういった問題を解決するために、中間車を先頭車に改造するという例がしばしば見られます。

【写真】改造車に見えないものからユニークな顔に変身した車両も!先頭車化改造の例を見る

■こだわりの先頭車化改造

 先頭車化改造といえど、いろいろな種類や工法があります。その中でも、中間車の妻面(連結部)を切り取り、そこに別で用意した先頭部構体を接合して改造された車両は、よく見比べなければそれが元中間車であることは分かりません。この先頭部構体というのは、新造される場合や、廃車となった別の車両から持ってくる場合など様々です。また、展望が楽しめるパノラマ先頭車に改造する例もあり、一概にオリジナルと同じ顔になる…というわけではありません。

 こうした工法による改造だと、一見綺麗に先頭車に変身していますが、よく見ると改造車らしい特徴や、元中間車の面影が見られることも。そうした細かい違いを見つけていくのもまたレイル・ファン的車両の楽しみ方の一つに思います。

■簡易的な前面スタイル 少し不思議な顔に変身!

 先述の工法だと、別に先頭部分の構体を用意しなければなりませんが、中間車の骨組みを活用しつつ、先頭車を設置する方法もあります。必要最低限の運転台機器と「顔」である構体を用意し、中間車を先頭車に変身させるという改造工法が故に、オリジナルとは全く異なる顔つきになることが多い傾向にあります。

 特にオリジナルが曲線や後退角がついたような前面スタイルを持った車両において、中間車の平たい形状を持った所謂「平妻」形状をそのまま活用すると、オリジナルと全く違う顔つきになることは想像に難くないと思います。

 有名なところですと、特急型であった国鉄581系・583系を近郊型に改造した419系・715系電車の先頭化改造車は、581系・583系の高い屋根構造をそのままに平らな前面形状を持った先頭車にしたため、その見た目から「食パン電車」とあだ名されたほど。

 また、同様のユニークな顔つきに変貌した例としては、福知山線113系の2両編成化時に誕生したクモハ113形3800番代があります。元々の中間車時代の面影が色濃く残る切妻構造な上に三枚窓が並ぶという、まるで旧型国電を思わせるようなその前面スタイルに加え、黄色の奇抜な強化板が取り付けられました。一度見たら忘れられないような顔から、インターネットを中心に度々話題となった車両でしたが、元々113系の初期型車両を種車としていたため、改造から7年程度が経過した2008年に廃車となっています。

■JR東日本最後の205系も先頭車化改造

 JR東日本に最後まで残った205系である鶴見線の1100番代と南武支線の1000番代、そして仙石線の3100番代は、全て先頭車化改造された205系になります。205系のオリジナルスタイルをよく知る人なら一目瞭然。その顔は元々のものとは大きく異なります。また変わったのは顔だけではなく、運転台もワンハンドルマスコンになっていたりと、205系でありながら、リフレッシュされた印象を受けます。

 これらの車両の改造が行なわれたのは2002〜2004年頃、当時205系は各線区への転属が盛んに行なわれており先頭車の余裕は全くなかった上、205系のデビューからもすでに17〜19年ほどが経っており、時代を反映した先頭形状と運転台が与えられました。とはいえ大きく変貌を遂げたのは顔であり、側面部分はオリジナルの205系のままであり、山手線に投入された扉窓が小さいスタイルなどを今に伝えています。

 ユニークな形態差を生む先頭車化改造、そこには新しくもユニークな顔と今まで通りのサイドビューという、ある種の不規則さが生み出す魅力というものがあります。

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