text:鉄道ホビダス編集部
▲冷凍餃子をホームで焼いて食べられるイベント、「超ギョーザステーション」開催中の両国駅3番線の様子。緩行線ホームより少し低い位置にあるのが特徴的。
’24.5.4 総武本線 両国 P:東條ともてつ
現在では大相撲が行なわれる両国国技館の最寄駅として、すっかり「相撲の駅」としての印象が強くなった総武本線の両国駅。この駅は普段使用される各駅停車1・2番ホームの他に、一段下がった位置にもう一つホームが見えます。ですがここを発着する定期列車は存在しない上に、普段は立ち入ることすらできません。一体何のためのホームなのでしょうか。
【写真】臨時列車にイベントに…両国駅3番線のいろいろな活用方法を写真で見る!
■かつてターミナルだった名残
今でこそ中央・総武線各駅停車の途中駅となっている両国ですが、その昔は長距離列車や貨物列車が発着する重要なターミナルでした。開業は、総武本線の前身となる総武鉄道が1904年に開業させた「両国橋駅」がルーツで、1931年に現在の両国駅に改称します。また、翌年には隅田川を超えて両国〜御茶ノ水間で電車運転が始まりました。これは長年用地の問題で隅田川を超えられずにいたのが、関東大震災による区画整理を機に可能となったもので、両国駅は房総方面への列車の起点、そして乗り換え駅としても機能するようになります。この電車運転開始時に現在でも使用されている各駅停車の1・2番ホームが整備されることになります。
現在3番線として残っているのは両国駅がターミナルだった時代の名残で、当時はこの1・2番ホームから一段下がったこの位置に列車ホームがずらりと並び、主に長距離列車のほか、貨物列車の扱いもありました。
この列車ホームからは房総方面へ向かう急行・準急列車が数多く発着しました。特に戦後、夏場は房総半島の海水浴へ向かう旅客で賑わい、そのための臨時列車が増発されるなど、両国駅は最も華やかな時代を迎えます。ホーム自体も頭端式構造ということもあり、当時の写真を見るとヨーロッパのターミナルを思わせる造りをしていました。
■イベント・臨時列車… 第二の人生を歩み出したホーム
そんな両国駅の大きな転機となったのが、1972年の総武本線複々線化に伴う総武快速線の東京地下ホーム乗り入れ開始でした。この総武快速線は両国駅の近くを通りますが、構造上ホームは設けられることなく、全列車が通過します。同時期に登場した183系による房総方面の特急は東京地下ホームを発着し両国駅は通過。残った急行列車も1982年までに廃止。ごくわずかな特急が発着するのみとなり、両国駅の列車ホームは衰退の一途をたどります。そして1991年、最後まで残っていた特急「あやめ」の両国駅発着の定期運用が消滅し、両国駅列車ホームを日常的に使うことはなくなりました。
現在では3番線ホームのみが残され、それ以外のホームは資材置き場になっていたりと賑わっていた頃とは大きく姿を変えました。ですが、残された3番線は不定期ながらさまざまな活用をされることになります。
特に臨時列車の発着には重宝され、団体列車などをこのホームで見かけることもしばしばあるほか、現在では自転車を丸ごと電車に乗せられる「B.B.BASE」の発着にも使われており、専用に用意された乗り場から自転車を押したまま電車に乗ることができます。
また、近年ではホームを会場として利用するイベントにも時折活用されており、2024年3月にはホーム屋根に桜の飾り付けを行ない「一足早い満開の桜」を楽しむことができた「いい茶こ 桜ステーション」や、不定期で開催される両国駅3番線ホーム上で味の素の冷凍餃子を楽しめる「超ギョーザステーション」など、普段使われないホームだからこそな利用方法が活発になっています。
かつては多くの長・中距離列車で賑わっていた両国駅列車ホームですが、今後は新しい鉄道駅の活用方法を示す場所として、存在感を確かなものにしていくことでしょう。