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【知ってる?】今人気の国鉄型113系・115系 3期に分けられる「違い」とは

2024.02.28

text:MSかぼちゃ(X:@MS3167)
photo(特記以外):日本かぼちゃ電車学会

 111系・113系・115系といった、いわゆる「東海型」デザインを持つ直流近郊型電車の研究を活動のメインとし、鉄道系サークル「日本かぼちゃ電車学会」の主宰も務め、動画や同人誌でその成果を発表しているMSかぼちゃさん。その内容の細かさは群を抜いており、車両の歴史や形態差、さらには編成の移り変わりまでも具に調べ上げられています。今回はそんなMSかぼちゃさんに、今なお人気の高い国鉄近郊型電車113系・115系の分類について語っていただきました。(編集部)


 1962年に登場した111系に端を発し、国鉄近郊型電車の代表格とも言われる113系・115系。その製造総数は系列を合計して4898両を数え、計り知れないほど多くのバリエーションや形態が生まれました。しかし、これらを観察してみると、製造された時期によって大きく3つに分類することができるのです。今回は、そんな113系・115系の製造時による形態の差について見ていきましょう。

【写真】形態別に113系・115系を見る 鉄道模型写真でも窓配置を比較してみた!

■直流近郊型新性能電車のはじまり、「初期型」

 国鉄において、「新性能近郊型電車」として初めて登場した形式は1960年に登場した401系・421系です。この車両は常磐線や鹿児島本線を中心に投入されたため、交流・直流の両方の電化方式に対応としていましたが、東海道本線に同様の近郊型車両を配置するにあたり、直流専用の車両が必要とされました。
 そこで401系・421系をベースとして、直流専用で設計された車両が1962年に登場した111系です。1963年には111系のモーター出力を増強する形で、113系と115系の2形式が登場し、111系に代わって1972年まで増備が行われることとなりました。
 この時製造された車両は、後年に製造された車両と比較すると多くの差がありますが、わかりやすい特徴として「デカ目」や「大目玉」と呼ばれる前照灯の大型白熱灯と、隅が丸くなっている非ユニット側面窓が挙げられます。

▲リニア・鉄道館に保存されている111系のトップナンバーであるクハ111-1。後の改造により先述した特徴が失われた車両も存在したが、この車両はほとんど原形の姿を保っている。

’12.4.6 リニア・鉄道館

 このグループは国鉄末期から老朽化による廃車が少しずつ進行しましたが、一部には後年まで活躍した車両も存在します。最後まで残存したものは七尾線で活躍した415系800番代(113系0番代と、その改造車である113系800番代から改造されたグループ)でしたが、2021年3月をもって引退し、現役の車両は消滅しました。

■冷房を搭載した増備グループ「中期型」

 1972年ごろより製造された113系・115系は、各部の設計が変更されています。後に「中期型」と呼ばれるこのグループは、前照灯を小型のシールドビームに変更し、側面窓は隅の角ばったユニット窓を採用するようになりました。この他にも運転席のスペースが拡大されて、運転台側の前面窓と乗務員扉の間に小窓が設置されるようになったなどの設計変更が行われていますが、最大の特徴は屋根上に搭載されたクーラーです。113系・115系の登場時は通勤・近郊型電車への冷房搭載は一般的ではありませんでしたが、時代の変化に伴いこのグループからは冷房を搭載した上での落成が基本となりました(ただし、これ以降の車両でも納期を早めるためやコスト削減などの理由で、冷房を搭載しない『冷房準備仕様』で落成した車両も一部に存在します)。

▲岡山区にて2024年1月現在も活躍する湘南色の115系300番代。現在活躍中の車両は2017年ごろからドアボタンを設置する改造を受けている。

’23.7.1 糸崎

 現在では、岡山区に少数が残存する115系300番代/113系0’番代と、福知山区に在籍する113系5300番代(113系0’番代の改造車)が該当しますが、2024年2月現在岡山区に在籍する車両は両者とも227系500番代による置き換えが予想されているため、記録をするなら早めがいいでしょう。

■113系・115系の決定版「後期型」

 1977年ごろより、113系・115系にはさらなる設計変更がなされました。座席の間隔を従来の車両より拡大した仕様となったため、側扉と側面窓の配置が変更されており、特に車端部の側面窓の枚数が2枚+戸袋窓から1枚+戸袋窓へと変わっていることが目立つ特徴です。また、このころから上信越地区や山陽地区などを中心とした地方への新製配置も始まったため、様々な地域で主力として活躍していたことも特徴です。

▲しなの鉄道にて、現在も活躍する115系1000番代。写真のS3編成は湘南色に塗装が変更されている。

’17.11.5 黒姫

 2024年2月現在運用中の113系・115系の多くがこのグループに属しており、しばらくは活躍を見ることができそうですが、置き換えは着実に進行中です。気が付いたらもはや風前の灯…となることの無いよう、こちらも早めの記録をお勧めします。

 これら3形態の車両たちは、編成組替や増備の結果、混結されて運用されることも多くありました。かつては4両編成のうち3両は後期型ながら、先頭1両だけ初期型で構成された「年の差編成」や、1編成の中に初期型・中期型・後期型の全てが揃った編成も存在しました。
 現在はこのような混結編成は少なくなりましたが、岡山区に所属する113系のB-07/B-08/B-18編成の3本のみが、113系0’番代と113系2000番代の混結編成としての姿を残しています。

 他にも113系・115系には様々なバリエーションが存在し、趣味的にも非常に興味深い系列となっています。しかし、後年の改造などで更なる形態の変化が起こり、どこから調べればいいのかわからないほど複雑な形式となっているのもまた事実です。今回紹介した分類方法は、基本的には現役の車両にもすでに引退した車両にもあてはまるものなので、車両研究や模型制作の参考にしてみてはいかがでしょうか。

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