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今や主流のVVVFインバータ制御 関東大手私鉄各社 初採用車は?

2024.02.14

text:鉄道ホビダス編集部

▲東急で初めてVVVFインバータ制御を採用した9000系。現在は大井町線で活躍中。

‘13.2.10 東急電鉄東横線 白楽〜妙蓮寺 P:廣島一貴
(鉄道投稿情報局より)

【写真】関東大手私鉄各社のVVVF黎明期の車両たち 写真はこちら!

 現在では鉄道車両の制御方式として完全に主流となったVVVFインバータ制御。従来の直流モーターではなく、メンテナンスフリーな交流モーターを使えるということで、1990年代頃より全国で普及し、現在では特別な理由がない限り、ほとんどの新製車両がこのVVVFインバータを採用しています。ところで、大手私鉄各社がこのVVVFインバータをきっかけとなった初の量産車は何系で、いつ頃デビューしていたのでしょうか。その起源に迫ります。

東武鉄道

 東武鉄道では、1988年に1本だけ試験的に登場した10080型(11480F)をきっかけに、100系「スペーシア」を登場させたのが始まり。100系で採用されたのは日立製のGTO素子VVVFインバータで、現在も更新されずに落成当時のままこのインバータが残り続けています。気が付けば貴重になりつつあるVVVFインバータ黎明期のサウンドが今もなお健在なのは特筆すべき点と言えるでしょう。

■西武鉄道

 西武鉄道初のVVVFは1988年に登場した101系試験車…ではなく、AGT方式の新交通システムである西武山口線「レオライナー」の8500系です。これは鉄軌道の西武線より3年早い1985年の登場でした。当時はまだ抵抗制御やチョッパ制御、界磁添加励磁制御全盛期の時代で、VVVFインバータの採用自体珍しいものでした。8500系は登場からすでに40年近く経過していますが、機器更新などがなされ今も現役です。

■京王電鉄

 京王電鉄では1992年に登場した8000系からVVVFインバータ制御となりました。以降、京王では既存車もVVVFインバータに更新する工事を進めて行き、2012年には大手私鉄で初めてとなる在籍車両のVVVF化率が100%となりました。VVVFの本格採用時期は他社とほぼ変わりないながらも、10年以上前にVVVF車で統一しているのは驚くべきことです。

■東急電鉄

 東急電鉄では初代6000系におけるVVVF試験車を経て、9000系から本格的にVVVFインバータの採用が開始されました。9000系のデビューは1986年と、東急はVVVFインバータの黎明期より採用をしている会社で、現在VVVF化率は100%を達成しています。なお9000系も、今なお登場当時と同じ日立製GTO素子VVVFインバータを搭載していますが、近く新型車両による置き換えのほか、西武鉄道へ「サステナ車両」として譲渡されることが明らかとなっており、機器更新も含めて今後の動向が注目されます。

■京浜急行電鉄

 京急では1990年から製造が開始された1500形(1700番代)からVVVFインバータの採用が始まりました。1500形自体は1985年にデビューした車両でしたが、増備が繰り返される中で徐々に仕様変更がなされ、初期は鋼製車体の界磁チョッパ制御だったものがアルミ車体になり、そして最終的にはVVVF制御にまでなるという、まさしく通勤電車の進化の過程を見ることができる形式とも言えます。

 その後1500形は更新や廃車により界磁チョッパ制御車は消滅。京急でもVVVF化率100%を達成しました。

■東京地下鉄(東京メトロ)

 東京メトロの前身である営団地下鉄もまた、VVVFインバータの黎明期を支えました。試験車で言えば6000系の試作車が1978年にVVVFインバータの現車試験走行を行なっており、これが国内初のVVVFインバータ制御車の走行だったとされている資料も存在します。

 その後営団では長らくチョッパ制御の採用が続き、本格的なVVVFインバータ制御車は1990年に南北線用として登場した9000系まで待つこととなります。現在で営業車全てがVVVFインバータ制御車です。

■小田急電鉄

 小田急では1987年に登場した1000形よりVVVFインバータ制御が本格的に採用されることになりました。小田急でも既存車のVVVF化更新改造が盛んで、2021年に界磁チョッパ制御で最後まで残っていた8000形8251編成が廃車されたことにより、小田急もVVVF化率100%を達成しました。

■相模鉄道

 相鉄では、1986年に元々は国鉄63系の割り当て車である3000系が、同社初のVVVFインバータ制御車となります。この3000系は、1964〜1966年には車体更新を受けて3010系に改番。さらにその後1986〜1987年に冷房化と再びの車体更新に加えて、吊り掛け駆動の抵抗制御から直角カルダン駆動のVVVFインバータ制御化という、珍しい流れを持つ車両です。

 その後新7000系の後期製造分からVVVFインバータが本格採用され、以降の車両もVVVF制御を採用。2019年に抵抗制御の新7000系が引退したことでVVVF化率は100%になりました。

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