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特集・コラム

【いまや伝統】ロマンスカーの「展望席」 その歴史はいつから?

2024.02.07

text:鉄道ホビダス編集部

 

▲ラストラン装飾をつけた50000形VSE。

‘22.1.29 小田急小田原線 南新宿-参宮橋 P:黒澤 鉄
(鉄道投稿情報局より)

 小田急ロマンスカーの魅力は様々ありますが、目玉になるのはなんといっても展望席ではないでしょうか。レイル・ファンでなくても憧れる座席として一般にも有名ですが、実は最初から展望席付きだったわけではありませんでした。

【写真】滅多に見られないVSEの展望席形態も!?写真はこちら!

■初代展望車「NSE」

 高度経済成長期真っ只中の1963(昭和38)年、3000形SEに次ぐ新たな小田急ロマンスカーの仲間として登場したのが3100形NSEでした。この展望席は1階部分にあり、車両の先端部分までシートがあるため文字通り最前面からの眺望を楽しむことができたほか、運転台は2階に設けるという当時としては斬新な設計を持っていました。この車両の構成は後年登場する展望席付きロマンスカーに共通するものとして受け継がれていくことになります。また、編成もSEの連接8両から連接11両に増強されたことで乗車定員も大幅にアップしたことも特筆されます。

 NSEはその後も増備が続けられ、最終的には11両編成7本が登場。その後30年以上に亘り活躍を続けてきましたが、1999(平成11)年に一般塗装の編成が、2000(平成12)年に改装された「ゆめ70」の編成も引退しました。

■バブル期とその崩壊 多様化するロマンスカー

 3100形NSEから始まった「展望席付きのロマンスカー」は、その後車両に大きな影響を与え続けることになります。1980(昭和55)年に17年ぶりの新型ロマンスカーとして登場した7000形LSEも、ハイデッカー構造が売りだった1987(昭和63)年登場の10000形HiSEも展望席と2階運転台を備えて登場しました。
 ですが、HiSE登場の頃となると行楽需要が多様化、そしてバブル期の時代であったため、当時流行していたハイデッカー構造の採用や、NSE・LSEとは全く異なる塗装の採用など、時代に合わせた変化が見られるようになります。
 その後1991(平成3)年に登場した20000形RSEは、ハイデッカー構造でかつダブルデッカー車も連結する豪華な車両でしたが、運転台が2階にあるタイプの展望席は採用せず、1996(平成8)年登場の30000形EXEは通勤利用を念頭に置いた設計とし、こちらも展望席はありませんでした。とはいえ、やはりロマンスカーにおける「展望席」のイメージは非常に強く、2000年台に入ると徐々に原点回帰の機運が高まっているのが窺えるようになります。

 そうした背景の中、2005(平成17)年に登場したのが50000形VSEでした。真っ白な車体に伝統色であるバーミリオンオレンジの帯をあしらい、連接構造に前面展望席を備えるなど、小田急ロマンスカーが最先端の技術を駆使しつつ正統進化を遂げたということで登場直後から非常に話題となりました。

 思い返してみれば、この頃のロマンスカーは古い車両からバブル期の車両、そして通勤輸送を担う車両から次世代の車両まで、一番車両のバリエーションが多かった時代に思えます。

■展望席付きロマンスカーはGSEのみに

 そんな華やかなデビューを遂げたVSEでしたが、特殊な技術が多用されていることから更新が難しくなり、引退が早くなったのは周知の事実でしょう。2018(平成30)年には展望席を備える70000形GSEが登場し、現在の小田急ロマンスカーを代表するフラッグシップトレインに成長しました。

 コロナ禍もあり、ここ数年でまた鉄道の需要は大きく変化を遂げることになりました。小田急ロマンスカーに関しては、まだしばらく車両更新をすることはなさそうですが、時代やニーズと共に変わり続けたロマンスカーはこれからどう変わっていくのでしょうか。ですがここはやはり、NSEから続く「展望席」の今後の進化という点に注目してしまいます。


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・VSE活躍の18年間、小田急ロマンスカーに何が起こったか

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主な再録記事
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・惜別! 371系〈あさぎり〉に乗る
・変わり行く「御殿場線直通列車」
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