185系

特集・コラム

戦前の電気機関車EF10「同じようで違う」 細かい形態差の理由とは

2024.01.30

 鉄道車両を観察する上で気になるものが「形態差」でしょう。同じ形式でも製造時期や投入線区、後年の改造などで姿が変わるというのは、今も昔も変わらないところです。今回は、戦前に設計され、その製造時期によって様々な変化を見せた電気機関車「EF10」の大まかな違いを見ていきます。


 国産電気機関車の発展途上時に設計製造された故に、製造時期によって形態の違いが大きいEF10の特徴のひとつといえます。単純な分類ではEF53・ED16などの車体によく似た前期型。角が丸いのが特徴の中期型、そしてその後の標準貨物機となったEF15などの設計に通じる角の立ったボディの後期型があります。さらに中期型と後期型の中でも関門トンネル用にステンレスボディへと交換された個体もあるほか、台車枠も鋳造台車枠のものと、軸組構造の棒台車枠のものとがあり、まさにこの形式自体が一つの実験的な形式だったことがうかがえます。

▲『鉄道車輌ディテール・ファイル愛蔵版003 EF10』より抜粋したEF10 17号機の姿。

P:小林正義

 そんな中で車体の特徴の一つとで見逃せない特徴が、中期型の車体の中で17号機から19号機までの3両は側面腰部のエア・フィルターのフィンの向きが横方向であるということ。鉄道省や国鉄の国産旧型電気機関車では側面のエア・フィルターの向きは縦方向が圧倒的に多く、EF60以降の新性能電気機関車で採用されたビニロックフィルターの時代まで縦型が基本とされました。

 横向きエア・フィルター機は3両にとどまったのですが、ただでさえ丸形車体に、鋳造台車枠の機関車は、どこか鈍足な印象を抱かさせるのですが、横型フィルターの車両は、これさらに鈍重な印象へ思わせるのでした。

 さて、Nゲージ鉄道模型の量産完成品ではKATO、マイクロエースからEF10がリリースされていますが、さすがに少数派のためか横型フィルターのEF10はリリースされていないようです。ここのパーツを加工して、だれも持っていない横型フィルターのEF10を再現してみるのも、面白いかもしれません。

▲『鉄道車輌ディテール・ファイル愛蔵版003 EF10』より抜粋したEF10 21号機の姿。フィンの向きに注目。

P:小林正義


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 1934(昭和9)の9月に誕生したEF10。先行した16両の運用の結果、安定した性能と扱いやすさなど評判を得た機関車です。その製造期間は9年、総製造数は41両という、電機発展途上のなかでは異例の長期、多数に亘りました。発展途上にある機関車製造技術がその時期ごとに反映された結果、同一形式でありながら、別形式を名乗っても良いほどの形態差が生まれることとなったのです。

 本書は2009・2010年に発行した『鉄道車輌ディテール・ファイル』002・004・007をひとつにまとめ、再編集し、あまり総覧されることのなかった、電気機関車の礎の1両といえるEF10について各車のディテールをつぶさに見ていきます。

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