▲小田急ロマンスカーの並び。現在はここから中央の50000形VSEが引退した。
‘23.7.23 小田急電鉄 海老名検車区 P:黒澤 鉄
(鉄道投稿情報局より)
今に続く小田急ロマンスカーブランドの源流となった初代3000形SEから始まった車両固有の愛称。これは現在最新のロマンスカーでも続けられていますが、この歴代愛称の何の略称なのか、正式名を覚えていますでしょうか?
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■初代3000形「SE」「SSE」
1957年に登場し、現在のロマンスカーの原型となった初代3000形ですが、この車両が登場した際に「SE」という愛称が付けられました。この意味は「Super Express」のほか、「Super Electric car」の意味があります。
また、後年御殿場線直通の「あさぎり」としても使用する際、8両から5両に編成が短縮されました。この時短くなったことで、「Short Super Express」から「SSE」とも呼ばれるようになりました。
■3100形「NSE」
1963年に登場した3100形には「NSE」の愛称が付けられました。以降のロマンスカーの象徴ともなる前面展望席を初めて備えた車両であり、3000形SEに代わる新しいロマンスカーということで「New Super Express」の頭文字から取られました。
■7000形「LSE」
1980年代が近づくにつれ、登場から20年以上が経過した3000形SEの老朽化が目立ち始めました。当時3000形SEは5両への編成短縮が行なわれており、国鉄御殿場線直通の「あさぎり」などを中心に運用されていましたが、NSEの検査時などは「はこね」運用に就くこともありました。
この状況を打開するべく、新型のロマンスカーとして開発されたのが7000形「LSE」です。これは「Luxury Super Express」を略したもので、「Luxury」とは「豪華な」「高級な」と言った意味合いがあります。
■10000形「HiSE」
1987年にそれまでのロマンスカーのイメージを一新するような車両が登場します。それが10000形「HiSE」です。ハイデッカー構造を持ち、見晴らしのいい車窓が売りでした。愛称にある「Hi」の意味するところですが、ハイデッカー(High decker)構造というだけではなく、ハイパフォーマンスやハイグレードなど、さまざまな「High」の意味が込められています。
■20000形「RSE」
御殿場線との相互直通運転開始に伴い導入されたのが20000形「RSE」です。JR東海側の371系と一部仕様を共通化したため連接車ではない反面、2階建て車両を連結しているのが大きな特徴でした。「RSE」とは「Resort Super Express」の略で、セミコンパートメントやハイデッカー構造で見晴らしの良い景色が楽しめ、その名に恥じない華やかな車両でした。
■30000形「EXE」
それまでの箱根観光輸送一辺倒だったロマンスカーにおいて、ビジネス輸送も視野に入れた新しいロマンスカーとしてデビューした30000形「EXE」。これには「Excellent Express」の意味が込められており、現状3000形SE以降のロマンスカー車両の中で、唯一愛称に「SE」の文字が入らない車両になります。
6両と4両に分割可能で、輸送需要に合わせた柔軟な運用が可能なほか、2017年よりは内外装のリニューアルを実施。「EXEα」として生まれ変わり現在も活躍を続けます。
■50000形「VSE」
1987年の10000形HiSE以来、約18年ぶりに前面展望席と連接車という、原点に立ち返った構造を持ったロマンスカーとして登場したのが50000形「VSE」です。デザインには建築家の岡部憲明氏が担当し、斬新ながらもロマンスカーらしさを色濃く残した車両としてデビューから一躍人気の車両となりました。「VSE」とは、弧を描く内装が特徴的なことから、アーチ状の天井を意味する「Vault」を使った「Vault Super Express」の略とされました。
登場以来小田急ロマンスカーの顔として活躍を続けましたが、特殊な構造を多く持つ同車の更新は困難なものとなり、2022年3月には定期運用が終了、2023年12月には完全引退と、登場から18年ほどで姿を消してしまうことになりました。
■60000形「MSE」
2008年にデビューした60000形「MSE」は、地下鉄千代田線に乗り入れるロマンスカーとして導入されました。これは、日本で初めてとなる地下鉄線内への座席指定の有料特急乗り入れ例になりました。「MSE」には「Multi Super Express」の略で、先述の通り地下鉄運用から、20000形「RSE」と371系の引退後は「あさぎり(現・ふじさん)」としての御殿場線直通運用、臨時列車から一般的な新宿発着の特急運用まで、文字通りマルチに活躍できるロマンスカーであることが特筆されます。
■70000形「GSE」
登場から40年近く経過していた7000形LSEの置き換えを主目的に、新たな小田急ロマンスカーのフラッグシップとして登場したのが70000形「GSE」です。「GSE」は「Graceful Super Express」の略で、「Graceful」には「優美」や「優雅」といった意味がある単語になります。連接構造の採用は見送られましたが、ロマンスカーの象徴でもある展望席を用意し、塗装も赤系を基調とした上で、これもまた象徴の一つであるバーミリオンオレンジの帯を配し、伝統を確実に受け継ぎました。
50000形VSEが引退した後は70000形GSEが唯一の展望席のあるロマンスカーとして君臨しています。
「名は体を表す」という言葉がありますが、歴代ロマンスカーはいずれも車両の特徴が見事に愛称へ反映されているように思えます。