▲元小田急10000形「HiSE」の長野電鉄1000系。
‘22.01.22 長野電鉄長野線 信濃竹原~夜間瀬 P:石澤潤一
(今日の一枚より)
小田急電鉄が運行する特急列車「ロマンスカー」。歴代車両はデザインや内装など華やかな印象があり、都心から箱根へ向かう観光輸送のほか、沿線住民向けの通勤輸送まで幅広い列車が設定されています。そんなロマンスカーも時代と共に世代交代をしていますが、一部の車両は引退後も他社へ譲渡され、今も活躍を続けています。
■10000形「HiSE」から1000系「ゆけむり」へ
2012年3月に小田急での営業運転を終えた10000形「HiSE」。先代に当たる7000形「LSE」が現役を続投していた反面、一番の売りであったハイデッカー構造を持っていたことがバリアフリー化において災いし、登場から25年程度で引退となってしまいました。
そのうち2005年に導入された50000形「VSE」によって引退した2本が、4両に短縮の上長野電鉄に譲渡。特急「ゆけむり」として再デビューすることになりました。改造も最小限に留められ、外装・内装ともに「HiSE」時代とほぼ変わらない見た目をしています。ただ、塗装の色合いが若干変更されており、小田急時代は白地にワインレッドのツートン帯だったものが、白地に赤帯とされました。とはいえ、同じ赤系統の色ということで、そこまで大きい変化はないように見えます。
「箱根」から「湯田中」に変わったものの、温泉地への観光輸送という使命は変わらず、今も第一線で活躍を続けていることはレイル・ファンとしては嬉しいところ。この車両を置き換えたはずの50000形「VSE」が先に引退してしまいましたが、これからも末長く活躍を続けて欲しいものです。
■20000形「RSE」から8000系「フジサン特急」へ
1991年に、JR東海の御殿場線へ相互乗り入れする特急「あさぎり」用に登場した20000形「RSE」。それまでのロマンスカーの伝統であった連節構造や、先頭の前面展望席などは、JR東海側の371系に仕様を合わせた関係から採用されなかった反面、ダブルデッカー車を2両連ねた姿はこれまでのロマンスカーにはない豪華な編成を演出していました。
ですが「HiSE」同様にバリアフリーの観点から、ハイデッカー・ダブルデッカー構造で車内に段差がある同車の引退は早く、登場から21年ほどがたった2012年3月に全車引退しました。
その後、当時老朽化が進行していたJR東日本165系「パノラマエクスプレスアルプス」改造の「フジサン特急」置き換え用として第2編成のうち3両が富士急行(現・
富士山麓電気鉄道)へと譲渡され、二代目「フジサン特急」として2014年夏にデビューしました。外装は投票と一般公募で選ばれたフジサンキャラクターたちで彩られ、賑やかな印象に様変わりしましたが、車体形状のほか、内装も小田急時代の面影を色濃く残しています。もちろんトイレ廻りなどはバリアフリーに対応しており、30年以上前の車両ながら快適に乗れるようになっています。
■もう一つの「あさぎり」371系も富士急行線へ
先の20000形「RSE」と同じくデビューし、共に「あさぎり」として活躍、小田急の新宿駅まで顔を見せていたJR東海の371系ですが、こちらも富士急行に譲渡され、8500系「富士山ビュー特急」として再デビュー。こちらは内外装共に水戸岡鋭治氏が手がけ、「あさぎり」時代とは大きく印象を変えました。とはいえ、20000形も371系も、それまで静岡側の富士山を見つめていた御殿場線から、今度は山梨側の富士山を富士急行線から見つめることになるというのも、また巡り合わせなように思えます。
いずれの車両も新たな観光特急として活躍を続ける元・ロマンスカーたち。小田急の現役ロマンスカーを楽しんだ後は、過去のロマンスカーに会いに行ってみてはいかがでしょうか。