日本の官営鉄道の電化黎明期に生まれた電気機関車で、後に飯田線北部の貨物列車に活躍したED18の2号機。当機は1992年に突如として飯田線に返り咲き、「トロッコファミリー号」などの牽引で再び元気な姿を見られるようになりました。しかし、ED18の現役引退は1975~1976年、復活した1992年の直前には中部天竜駅の佐久間レールパークに展示保存されたとはいえ、その佐久間レールパークが開設されたのは1991年です。それでは廃車からの「空白の15年間」はいったいどこで過ごしていたのでしょうか?
▲1992年佐久間レールパークの展示車から、再び運行可能なように整備を受け、「トロッコファミリー号」では、僚機となったEF58 157と並ぶED18 2号機。
豊橋機関区 写真:RM
その間のED18 2号機ですが、実は飯田線からほど近い「国鉄浜松工場」に身を寄せ、検査中の車両の入換機として本線に出ることなく、工場構内で密かに可動していたのです。浜松工場で使われなくなってしまった後でも、しばらくは工場の構内に留め置かれ、その間に国鉄はJRとなります。そして復活へのステップとなる佐久間レールパークへの展示車両へ抜擢され、化粧直しの上中部天竜へ。更にその1年後に運行可能なだけの動力装置の整備を受け、晴れて1992年に復活となったわけです。この復活には、現役引退以降に稼働していた場所が車両整備を行なう工場であっただけに、日ごろからの整備状況が良かったことも、なんとなくですが想像ができます。
そんなED18ですが最初のED17の時代から数えると80年以上の年月を過ごしたことになり、さすがに寄る年波には勝てず2005年に故障のため運用から外され、2009年正式に籍を抜かれてしまいます。復活から約17年後のことでした。ですがその後も解体は免れ、2011年に名古屋のリニア・鉄道館に収蔵車両に決定します。現在は同館の1階中央の車両展示のメインフロアに、新製直後かと思うほどピカピカになって展示されています。
数奇な運命を辿った電化黎明期に生まれた海外製の電気機関車、ED18。今もこうして美しい姿を見られるのは、こうした経緯があってのことだったのです。
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■鉄道車輌ディテール・ファイル 愛蔵版002 飯田線のED18・ED19
旧型国電の動く博物館と呼ばれた飯田線では、国電の陰に隠れながらも、もう一つの古豪たちの最後の活躍の場でした。それは貨物列車の輸送を担った電気機関車で、特に天竜峡から辰野までの飯田線北部区間では軸重の重い大型の電気機関車が入線することは長い間できなかったのです。
本書は『鉄道車輌ディテール・ファイル』の「006 飯田線のED18」(2010年1月発売)と「008 飯田線のED19」(2010年4月発売)を一つの本として、新規カラーページも加え再編集したものです。イギリス製とアメリカ製の2形式全機の在りし日の姿を振り返るとともに、模型化心をくすぐられる2形式の製作向け資料として機能するように編集した内容です。
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