▲前位側はヘッドライト周囲に目玉のイメージのイラストが入ります。
text & photo:RM
取材日:’23.12.6 場所:南福岡車両区竹下車両派出
取材協力:九州旅客鉄道
JR九州では、老朽化した高速軌道検測車(マヤ34形)に代わる新たな検測車の開発を進めてきました。それがキハ220形改造のBE220形「BIG EYE」。未だ車内は非公開でしたが外観が報道公開されました。
改造の種車はキハ220-1102で、2020年7月、人吉駅構内で豪雨による浸水被害を受けて運用を離脱していたもの。元を辿ればこの車両は一時指宿枕崎線の「なのはなDX」であった時代があり、その時に中央扉を埋めて縦長のガラスが装着された、特徴ある外観をしています。
この「BIG EYE」に搭載される検測装置は3種類あります。気動車の床下はもともと機器でいっぱいのため、測定装置も小型化するなどの工夫が必要だったとのことです。
(1) 軌道検測装置
・レールにレーザーを照射すること等により線路の歪みを測定。
・測定したデータは無線によって伝送。
・装置は、前位側台車(非駆動台車)の前後床下に設置。
(2) 部材検査支援カメラ装置
・ラインセンサカメラでレールやレール緊締装置の状態、レール継ぎ目のボルトの状態などを高精度に撮影。
・取得したデータを用いてAI開発を行い、不良個所の自動判定技術の確立を目指す。
・後位側前面のオーバーハング部床下に設置され、枕木方向にほぼ全幅に渡る筐体内に9基のカメラを装備。
(3) 建築限界測定装置
・ホームやトンネル、信号設備等にレーザーを照射して、線路からの距離を連続的に測定。
・装置は後位側前面に大小6基の測定センサーを設置。
▲後位側前面には、建築限界を測定するセンサーが取り付けられてものものしい印象。黄色い模様は牛の頭を図案化したもの。
■デザインイメージ
赤い車体は元々のキハ220形のまま(前述の「なのはなDX」時代は黄色でしたが、その後転属で赤くなっていました)ですが、JR九州内で建築業務を行っている社員によるコンペでデザインが決定。事業用車両ながら、見るお客様に親しみをもってもらえれば、という願いが込められているそうです。
■期待される効果
走行中の鉄道車両を支えている線路設備は、列車の繰り返し荷重により日々劣化が進行するため、それらの状態を的確に把握し、適切な時期に修繕することが重要です。「BIG EYE」導入によって高頻度に検測を行うことでTBM(時間基準保全)からCBM(状態基準保全)への転換を図り、より安全で効率的なメンテナンスの実現を目指すとのことです。
■今後の計画
2023年11月~2024年3月までの間に、検測データの精度の検証、機器の耐久性、データ解析のシステム構築等、運用開始に向けた性能評価を行うための走行試験を実施。なお、実際の導入には試験結果を踏まえて検討を進めていくとされています。