185系

特集・コラム

こんな車両までプラレールに!?大人も驚いた「保線車両オールスターズ」

2023.12.01

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は子供はおろか大人も驚いたマニアックな車種選定のセットをご紹介!その名は「レールをまもろう!保線車両オールスターズ!」。保線に関する「縁の下の力持ち」的な渋い車両たちがこだわりのディテールを持って登場し、話題となりました。(編集部)


 鉄道模型をメインにやっている人から「プラレールでこんなのが出てるの!?」と驚かれる車両があります。一体どんな車両なのでしょうか。

 プラレールに大人のファンがいる事が世に広まって既に20年以上。もちろんジャンルは変わらず子供向け玩具なので、製品化される車両は新幹線や都市圏の電車、またはSL客車列車や観光列車などの比較的メジャーなものが多い傾向にあります。しかしその枠に収まらない、かなり奇抜なものが製品化される事もあります。近年の例を挙げると、そのマニアックさから子供はもちろん大人も驚いた「国鉄7000形コンテナ」や、信越本線の碓氷峠で活躍したEF63形が189系あさまを牽引する「サウンド連結 EF63&あさま」などがあります。
 そんな中、プラレールが50周年を迎えたアニバーサリーイヤーである2009年に、一風変わったどころではない、大人も子供も驚く非常に面白い車両セットが発売されました。それが「レールをまもろう!保線車両オールスターズ!」です。

▲2009年11月に発売された「レールをまもろう!保線車両オールスターズ!」

 鉄道の保守には欠かせない保線作業と、それに必要な保線車両。実際に作業が行われる時間はほとんどの場合は人目につかない深夜帯であるため、子供向けの玩具であるプラレールでは進んで製品化されるような存在ではありませんでした。
 しかし、知育・教育玩具の側面も持つプラレールとしては、本物の鉄道を遊びながら学べることも売りの一つです。保線車両の製品化はそういった側面を重視したものであると言えます。

▲ソ80形、キヤ97系、バラストレギュレーター、マルチプルタイタンパー、軌道ショベルカーがセットとなった。

発売当時はかなり話題となったこのセット。ソ80形は事故車両の救援、キヤ97系はレール運搬、保線作業に従事するバラストレギュレーター・マルチプルタイタンパー(通称 マルタイ)・軌道ショベルカーと、同じように見えても実はそれぞれ用途は異なるという、本物の鉄道を学ぶにはもってこいとも言える車両チョイスが絶妙で素晴らしいです。

▲ソ80形はクレーンの上下、車体の旋回が可能。アウトリガーも展開できる。控車であるチキ6000形とは永久連結。

 ファンの度肝を抜いたのはなんと言ってもソ80形。JR東海保有の個体をモデルとしており、佐久間レールパークに保存されていたソ180が大元となっているようですが、実車とは細部が異なります。車体の四隅にあるアウトリガーは展開が可能、車体の旋回もでき、クレーンはもちろん上下に動かせます。玩具であることと強度の問題からクレーン部のトラス構造はモールド表現となっていますが、実車さながらの重厚感は健在です。
 マルタイはバラストレギュレーターとペアを組んで作業をするため、プラレールでは後者の方に動力を積み、前者は推進される形となりました。マルタイは走行させると車輪とギミックが連動し、ツメが上下に動いてバラストを固める作業を楽しめます。バラストレギュレーターは特徴的なフロントプラウの展開・収納が可能。作業時と留置中の姿の両方を再現できます。

 レール運搬車であるキヤ97系はかなりのアイデア品。独自のレールを持つプラレールにおいて、実際のレールを模したものを作ると、少々ちぐはぐな印象が生まれてしまいます。そこで、キヤ97系では車体そのものは実車をモデルに、レール部分はプラレールのレールに置き換えてしまうというデフォルメがされました。動力車は「1/2直線レール」を模ったスペースに動力ユニットを組み込むことで、見た目の違和感を軽減。後尾車は実際にレールを3本搭載できるようになっています。

 軌道ショベルカーは車輪の収納、展開がレバーひとつで行えるようにされ、収納時はトミカのように床などで転がして遊ぶことができ、展開時はレール上に置けるという、実物と同様の動作を再現できる工夫がされています。付属のプラキッズをキャビンに乗せる事も可能で、ご丁寧に連結器も付いています。

 このようになかなか面白い内容の「保線車両オールスターズ」でしたが、数ある車両セットと同様に2年程度で発売を終了しており、今となっては2009年の発売当時に想いを馳せる名品、といった扱いを受けています。セット品のうち、ソ80形は2020年に「KF-08 クレーン操重車」としてまさかの品番付き通常品として復活を果たしましたが、2023年に絶版となり、再び過去の製品となってしまいました。

 現在ではキヤ97系の派生形式キヤE195系がJR東日本に導入され活躍するなど、また新たな動きが見え始めたこれら保線系の車両。改めて同じコンセプトの商品が発売されることにも期待したいですね。

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