駅のホーム端までやってくると、必ずと言っていいほどある菱形のカラフルな標識。中には「10」や「6」「8」など数字のほか、「山」や「秋」の漢字、「U」や「W」といったアルファベットが書かれていることもありますが、これは何を示しているのでしょうか。
■停車位置を示す「目標」
この標識は、駅での停車位置を示す目標の意味があります。「停車位置目標」と言われることが多いですが、鉄道の運転士はこの目標を目掛けてブレーキングし、正しく決められた位置に列車を停止させています。こうすることで、整列乗車が保たれ、旅客案内もよりやりやすくなります。この標識の中に文字が書かれる場合、その停止位置の対象となる車両はどれかを示していることが多いです。「10」などの数字である場合は両数、「秋」などは「秋田新幹線の車両」、「U」などは「E5系U編成の停止位置はここ」と言った具合です。また、色分けはこれらの違いを視覚的にわかりやすくしています。
もちろん、この目標に対して限りなく0cmに近く停められることが理想ですが、この目標に前後して「許容範囲」が定められていることが多いです。この範囲に収まれば車掌は扉を開け閉めすることができる…というわけです。
■両数の違う車両にご注意
この停止位置の違いというのは、普段列車に乗る際にも大きく関わってきます。両数が統一されている路線区間であれば問題ありませんが、京葉線で例えるならば、10両編成の京葉線線内運用車両と、8両編成の武蔵野線直通車両で停車位置が異なります。そのため、京葉線で武蔵野線の車両が乗り入れる区間については、8両編成(武蔵野線車両)はここから先には停まらないという旨の看板が掲げられています。こうした看板や案内表示で停止位置の違いを注意喚起するのは各地で確認できます。また、看板だけでなく、放送において短い車両が来る場合、「〇〇(駅名)寄りには停まりません」と、列車毎に案内されることもあります。
また、関西圏などでは列車ごとに記号と番号で整列位置を決めていることも多く、放送でも「足元白色三角印 ◯番から◯番でお待ちください」のように案内されます。両数の違いだけでなく、扉数も違う場合があるので、こうした案内で適切な位置に旅客を誘導しています。
■ホームドアの設置により許容範囲はシビアに
近年広がりを見せている駅のホームドア。安全対策の観点から現在各社で急ピッチに設置がなされていますが、ホームドアと車両のドアがずれ過ぎると乗降に支障をきたしてしまうため、より停止位置の許容範囲が狭くなったのも事実。より正確な位置に列車を停めなければならなくなりましたが、人間の精度では限界があります。そのため、ホームドアが設置されている路線については、「ATO(自動列車運転装置)」を導入して運転を自動化したり、「TASC(定位置停止装置)」と呼ばれる装置を使用し、駅停車時、自動的に正しい位置に停められるようにするなど、さまざまな技術が活用されています。
日々の安全かつ正確な運行は、こうした最新技術や適切な案内によって支えられているのです。