185系

特集・コラム

三兄弟が揃って現存している長野県ゆかりの凸型電気機関車

2023.10.19

text:RMライブラリー編集部

 古い鉄道車両、引退後にどこかで保存してほしい…というのがファンの願いではありますが、なかなか現実は厳しいですよね。100両以上存在した車両なのに現存は1両もいない…ということも決して珍しくはありません。

 そんな中、同形式3両が存在した機関車が、御年98の現在、3両とも現存している例があります。しかもそのうちの1両は「今なお現役(!)」なんですね。

信濃鉄道1~3号機とは
 漢字で書く信濃鉄道は、今のしなの鉄道とは関係がなく、今の大糸線の松本~信濃大町間を開業させた私鉄です。1915年の開業時は非電化でしたが1926年に電化。この時に準備されたのが、米国ボールドウィン/ウエスティングハウスにて製造された凸型電機・1~3号機でした。正面から見て片側にボンネットがオフセットしたスタイルはウエスティングハウスの凸電に独特で、日本各地、また米国にも類型を同じくする機関車が多数活躍していました(運転台が左か右かでボンネットの向きが異なる)。

▲RM Re-Library 15より。

 信濃鉄道は1937年に国に買収され、それ以前に鉄道省が建設した信濃大町~中土間と共に大糸南線となります(大糸北線とつながって今の大糸線となるのは戦後の話)。信濃鉄道の車両もすべて鉄道省所属となって、凸電1~3号機はED22 1~3という形式・車番が与えられました。

1号機は全国を股にかけた旅がらす
 こうした私鉄買収電機は、国鉄で活躍後に私鉄に払い下げられることが少なくありませんでした。ED22形も3両ともその軌跡を辿るのですが、まず1号機が最初に国鉄を廃車となり、西武鉄道の1号機となります。その後、滋賀県の近江鉄道ED22 1、島根県の一畑電気鉄道ED22 1、青森県の弘南鉄道ED22 1と異動を繰り返し、現在に至ります。すなわち同機は今なお弘南鉄道大鰐線で「現役」、時折ラッセル除雪に用いられたり撮影会で活躍したりしています。

▲チャーター運転で、ラッセル車を押すシーンが演出された時の模様。

‘14.3.2 弘南鉄道大鰐線 石川~義塾高校前 P:五十嵐鉱一(鉄道投稿情報局より)

 ちなみに、弘南鉄道のもうひとつの路線である弘南線にも似た形状のED33 1がやはり現役で在籍しています。こちらは国鉄に在籍した経歴はなく、元西武鉄道E11形です。ボンネットの片寄りが両機で互い違いとなっているのが面白いところだと思います。

2並びの2号機は三重県へ
 国鉄時代の車番がED22 2という「2並び」となっていた2号機は、1956年頃に国鉄を廃車となって三重県の三岐鉄道に払い下げられます。同鉄道は今なお貨物輸送の非常に盛んな鉄道で、電気機関車も多数所属。その一員として1980年代まで活躍しました。廃車後、いなべ市内の公園で静態保存された後、2016年の三岐鉄道開業85周年を機に西藤原駅前SL公園に移設。屋根のある環境で大切にされています。

▲三岐鉄道終点の西藤原駅で静態保存されている2号機。

‘18.11.4 三岐鉄道三岐線 西藤原 P:羽山 健

3号機はゆかりの地である信州に安住の地を見つけ…
 国鉄ED22 3は、2号機とほぼ同じ時期に国鉄を廃車となり、西武鉄道A1となります(前述の1号機の西武鉄道時代とは重複していません)。その後、当初の活躍の地である信州の、松本電気鉄道(現:アルピコ交通)に譲渡され、形式・車番をED30 1と改めました。入換や工事・除雪用として長年車籍を維持していましたが、ついに2005年に除籍。しかし幸いなことに新村駅にて静態保存されています。

スノープラウも勇ましい、ED30 1の現在の姿。

P提供:アルピコ交通

 三車三様の車歴を辿りながら、今なお全機が形を留めていて現地に行きさえすれば比較的容易に会うことができるというのは実に幸運なことと思います。

 さて、このED22も含む一連の私鉄買収電機をまとめたRMライブラリーが、RM Re-Libraryにて待望の復刊となっております! ED22はこの分野ではスター的な機関車のひとつですが、人知れず活躍を終えたものも含め、範疇にある機関車すべてを解説しているのが白眉です。ネコパブショップではノベルティのポストカード2枚セットの特典付きで販売中です。

■RM Re-Library 15「私鉄買収電機の系譜」

(→ネコパブショップでの商品ページ

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