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継ぎ目はどこへ!?鉄道模型用高精度ヤスリ台を手作りしちゃった人を直撃!

2023.10.09

text & photo:B作(X:@Btoretsukuru

▲切り継いだ跡がわからないほど「ピッタリ」接合しています。

 先日、鉄道模型界がザワつく工作器具がX(旧:Twitter)上に投稿されました。その話題となっている映像を見てみると、真っ二つに切断された鉄道模型の車体が、なんと最初から1つの車体であったかのようにピッタリと接合しているではありませんか…!というわけで、今回は正確に対象物を削ることができるヤスリ台「Bヤス」を作ったB作さんからお話を伺いました。(編集部)

■作り方動画(B作さんXアカウント動画より)

 

■発明に至った経緯

 実は、同じ用途で以前より既製品のヤスリ台を愛用していたのですが、3つほど気になる点がありました。これをヒントに改善できれば、ヤスリ台の精度はもっと上がるな…と考え始めたのが開発のきっかけでした。

 気になった具体的な点は、1つは、使用していた既製品では固定されたヤスリに対して、対象物を前後移動させることで削りを行ないますが、それだとどうしても対象物がブレてしまい、切削面の歪みの原因になると思いました。Bヤスではこれを逆転し、対象物の方を固定し、ヤスリ側を動かすことで対象物のホールドを重視しました。

 2つ目は、台の剛性です。既製品では比較的軟らかいプラスチック製であったため、ヤスリの往復動作をしていると各部がたわみ、精度に影響が出ていました。そこを改善すべく、Bヤスでは主要部材を肉厚なアルミアングルとすることで剛性と直線性を確保しました。

▲MDF板にアルミアングルを取り付ける際は必ず完全に直角になるよう取り付ける。

 3つ目は装置の大きさです。既製品は10cm四方程度の小型なものでしたが、Bヤスは30cm程度の大きなものとしてみました。この大きさによって、ヤスリのストロークの直線安定性を確保しています。例えれば、両足を閉じて立つよりも、脚を開いたほうが上体がブレず身体が安定する…といったような感じです。

■作る際の試行錯誤…

▲水平垂直となることで、正確に真っ直ぐ対象物をヤスることができる。

 先述の3つの改善点を思いついた時点で、これを実現できればかなり精度は高まるだろうなという予想はありました。対象物を固定する部分と、ヤスリを貼り付けるベースに何を使うかいろいろ考えました。その結果、安価な上に直角・直線・平面の確保が期待できるアルミL字アングルに辿り着きました。作業土台についてはこれもまた安価で狂いの少ないMDF板を選びました。

■作った「Bヤス」を使ってみると…?

▲実際に切断後Bヤスで整えた車体。

▲接着直後(上写真)も切り継ぎ線がほぼ目立たないが、クリア塗装後(下写真)では完全に継ぎ目が消えているのがわかる。

 完成し、実際に研磨作業を行ってみると、想像していた以上の好結果が出ました。構成部材の頑丈さと、装置の大きさから得られる安定性のおかげで、ある程度乱暴に作業をしてもかなり良い結果が得られます。さらに、対象物をヤスリ側に強く押し当て過ぎないなど、動作を丁寧にゆっくり行えば、非常に直線性・平滑性の高い断面が得られます。鉄道模型 Nゲージの車体の切り継ぎでは、この高い平滑性と密着性により、補強などを行なわずに、流し込み接着剤のみで実用に耐えられる強度を得られるようになりました。

 もちろん模型の車体切り継ぎに限らず、プラ板やプラ棒・丸棒の端面処理など、模型全般に関わる一般的な工作でも威力を発揮してくれています。個人的にはこのBヤスを作ったことで、より楽に工作精度が高められたことはもちろん、工作全般がもっと楽しくなったことが収穫でした。


 Nゲージの切り継ぎ加工におけるヤスリ作業の正確性を、より上げるために作ったという「Bヤス」でしたが、実際に加工している様子の動画を見てみると、鉄道模型ではなくても活用できる幅は広そうです。皆さんもこちらの材料を揃えて作ってみて、楽しい工作ライフを送ってみてはいかがでしょうか?

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