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高校生のアイデアが未来を創る! 「い鉄甲子園」に挑んだ鉄道研究部の夏休み

2023.10.01

 自分ではいくら考えてもいいアイデアが出ない時、周囲の人の何気ない発言がブレイクスルーのきっかけになった経験がある方はけっこう多いのではないでしょうか。まったく異なる目線で生まれたアイデアは、思わぬ商品やサービスを生むことがあります。

 この夏、いすみ鉄道は「い鉄甲子園」という企画を実施しました。いすみ鉄道を将来に渡って残していくために、潜在価値を活用して沿線を盛り上げていくためのアイデアを高校生から募集するという、コンテスト形式のイベントです。同社の現状について関心を深めてほしいとの願いからスタートした企画で、2021年に第1回を開催。千葉県および隣接する都県の高校より様々なアイデアが出され、同社のツアー企画などに役立てられてきたそうです。

 3回目の開催を数えた今年、新たに昭和鉄道高校がエントリーし、夏休み真っ盛りの8月21日に2023年度版が開催されましたので、その様子をお届けしましょう。

 昭和鉄道高校は、鉄道職員の育成をカリキュラムの柱とした「鉄道科」がある数少ない学校です。また、日本で唯一「鉄道」という言葉が校名に入ることでも知られています。校内には運転シミュレーター、鉄道実習室といった施設が充実しており、時刻表を使った授業もあるそうです。池袋にある学校ですが、日本全国から生徒さんが集まるということで、鉄道業界を目指す若者の登竜門とも言えるでしょう。

 運動系、文科系ともに部活動も盛んな同校ですが、今回の「い鉄甲子園」にチャレンジしたのは鉄道研究部の生徒さん。およそ25名が所属し、普段は豊昭祭(文化祭)に向けての企画を中心に研究活動を行っているそうです。また、夏休みや冬休みには実際に鉄道の現場を見学して知識を深める合宿をしたり、春には新入生歓迎会として鉄道博物館の見学会を実施しているとのこと。

運転シミュレーターをはじめ実車の部品を多用した教材が揃う昭和鉄道高校。鉄道職員へとつながる実践的な指導が行われている。(※写真はイベント時の様子)

 これまではコロナの影響で学内活動が中心となっていましたが、今年から学外のイベントにも積極的に参加する方針へと転換した矢先に今回の話が来たことも、チャレンジするきっかけになったそうです。

 とはいえ、これから社会に出ていくための準備をしている高校生にとって、会社に対してプレゼンを行う機会はそうそうないもの。どうやって準備を進めていったのか、顧問の小林先生に当時の様子を伺いました。

「まずは部員一人ひとりが企画を考え、持ち寄るところから始めました。全員がいすみ鉄道さんの特徴をどう活かすかを真剣に考えたようで、この時点でもいい企画がたくさんありましたが、まずは絞り込むために部活内で投票を行い、2企画に絞りました。その後部員のグループ分けを行い、それぞれの企画について話し合いをすることで、企画をまとめていきました。食品を使用した企画もあったので、実際に農園に電話をして確認をするなど、空想で終わることがないよう気をつけましたね」。

 参加することを決めてから開催日までの約2か月の間、真剣ながらも和気あいあいと企画の煮詰め作業が進んでいったそうです。

提案用の企画について議論する生徒さん。こういった経験も社会に出て大いに役立つはずだ。

 プレゼン当日、初参加ながらも高いモチベーションを持って参加した鉄道研究部の面々が用意した提案内容は「なべ急行」と「い鉄で音鉄」の2つ。今後実施される企画にも関わる可能性があるので詳細は控えますが、ネーミングのとおりグルメ系と音系の企画が、生徒さんたちによって提案されました。

 やはり緊張緊張は隠せない様子でしたが、感想を聞いてみると「伝えるべき内容をしっかりと伝えられました」と達成感に溢れた表情が印象的でした。

いすみ鉄道関係者が見守る中で行われたプレゼンの様子。緊張はしながらも、資料を交えて企画意図を簡潔に伝えていく。

 参加校すべてのプレゼンが終了すると、当日すぐに審査がなされます。結果からお伝えすると、初参加ながらも優秀賞に選ばれるという上々の結果。生徒さんたちは興奮を隠しきれない様子でした。

初参加ながら「優秀賞」を獲得した昭和鉄道高校の鉄道研究部。この経験が自信につながり、今後の部活動にも役立っていくに違いない。

 また、コンテスト終了後は、いすみ鉄道の計らいで車両撮影会も催され、他校の生徒さんとの交流も図りつつ、参加者限定の撮影会を満喫した参加者の皆さん。「駅と駅だけでなく、人の心と心も繋ぐものだと感じられて鉄道のことがさらに好きになりました」という感想が印象的で、忘れられない貴重な1日になったようです。

 一段落したと言っても、コロナ禍で鉄道を取り巻く状況は大きく変わりました。各社ともツアー列車やイベントなど、様々な試みを企画して集客に取り組んでいます。

「い鉄甲子園」で誕生した様々なアイデアは、いすみ鉄道が具体的に検討し、実施の可能性もあると言います。そう、この先あなたがいすみ鉄道のツアー列車に参加することがあれば、それは昭和鉄道高校の生徒さんの企画かもしれませんね。

■いすみ鉄道HP

■昭和鉄道高等学校HP

 

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