185系

特集・コラム

鉄道の試作車を表す数字?謎の900番代とは?

2023.09.23

’84.8 浜松機関区 P:藤村巌雄
(消えた車両写真館より)

 鉄道車両に与えられる「系式」や「形式」と言われる番号名称。基本的にモデルチェンジをするとこの系式自体が変わりますが、フルモデルチェンジとまではいかないマイナーチェンジ程度では、各車両に与えられた固有の番号である「車番」の番代で区分されることがあります。この番代区分でも国鉄・JRでは「900番代」が共通して特殊な意味を持つことが多い傾向にあるのです。

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■試作車を表す「900番代」

 鉄道車両において、量産する前にまずはさまざまな確認や試験をするために、試作的に車両を作る場合があります。これらは試作車、または量産先行車とも呼ばれますが、これらの車両を量産車と区別するため「900番代」と番号を区分することがあります。また、試作時点では別な系式を与えられていたものを、量産車が登場した時点で仕様を合わせる改造(量産化改造)などを施して、量産車と同じ系式の900番代に編入する例もあります。
 例えば、1992年に901系として登場した次世代通勤型電車は、1993年にその量産仕様として209系が登場すると、各種仕様を209系に合わせる量産化改造を施した上で、209系の「900番代(元A編成)」、「910番代(元B編成)」、「920番代(元C編成)」に編入されています。

■試作車たちのその後

▲「スーパー北斗」用に登場したJR北海道の振り子気動車であるキハ281系。こちらも試作車は900番代を名乗っており、晩年には登場当時のロゴをあしらった復刻仕様となった。

‘22.8.30 函館本線 白石~苗穂 P:佐々木裕治
(鉄道投稿情報局より)

 営業運転を考慮していない純然たる試験車として作られる車両とは異なり、後の量産を見据えて登場する試作車たちは、先述の209系900番代のように量産化改造と呼ばれる改造を施して、他の量産車たちと共に運用されることが多いです。
 ただし、試作車という性質上、量産化改造したとしても細かい部分で量産車と相違点がある場合も多く、保守や運用をする上でネックとなることもあります。また量産車より前に登場しているということは、自ずとその系列内で最古参となり、後継車両が登場すると真っ先に置き換え対象となることが多いのもまた試作車の宿命と言えるのではないでしょうか。

■「900番代」しか存在しなかった車両

▲国鉄末期の1986年、国鉄最初で最後のVVVFインバータ制御車として登場した207系900番代。

’09.8.24 常磐線 金町 P: 平賀 匡
(消えた車両写真館より)

 国鉄の最末期となる1986年、国鉄初のVVVFインバータ制御の電車として207系という電車が開発されました。この車両は入念な試運転を各地で行なった後、地下鉄千代田線にも直通をする常磐緩行線に投入され一般の営業運転を開始しました。ただ、製造コストや性能面の問題などから量産化は見送られ、結局は900番代の10両1編成のみの存在となってしまいます。そして国鉄が分割民営化し、VVVFインバータ制御の電車がJR各社に普及していくのは1990年代まで待つこととなります。

 そんな207系900番代でしたが、常磐緩行線に後継車両であるE233系2000番代の第1編成が2009年5月に落成すると、古い203系よりも先に置き換えられることとなり、2009年12月に引退。登場当時から1編成のみの異端な存在であったが故に、置き換えも早まってしまいました。ちなみにJR西日本で活躍する207系とは系式が同じだけの別な車両となります。

 少し他の車両と違う試作車や量産先行車たち。その性質上、なかなか出会えなかったり、活躍期間も短かったりしますが、細かい部分で量産車と異なるという点から、鉄道趣味的には研究しがいのある注目すべき車両でもあります。

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