text & photo:なゆほ
60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は過去に製品化された2つの「補機」についてクローズアップ。地味な存在と思われがちな補助機関車ですが、プラレールではいずれも渋い製品としてその歴史に名を刻んでいます。(編集部)
今年の2月、大阪の梅田貨物線が地下化されて大阪駅地下に急勾配が完成したことにより、この区間を走る貨物列車にEF210 300番代の補機が付く事が話題となりました。補機というのは「補助機関車」の略で、特定の区間で列車の補助をする事に特化した機関車なため、メインの機関車と比べるとやはりその存在は少し地味な部分があります。ですが、プラレールではそんな補機が2車種が製品化されています。発売されたのは山陽本線「瀬野八」用の補機として知られるEF59形と、信越本線の「碓氷峠」で活躍していたEF63形です。
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▲2001年に東京で開催された「プラレール博」の限定品の一つとして発売された「EF59電気機関車」
2001年のゴールデンウィークに、今も続くプラレールのイベント「プラレール博」の第1回が開催されました。開催に合わせて会場限定品が6種類用意され、「EF59電気機関車」もそのうちの一つとして発売されています。
1987年の絶版以来、14年ぶりに装いを変えて表舞台に立つ事となった「EF15」の型を利用して作られたEF59形。2001年当時から見ても渋すぎたため、子供たちからの人気は今ひとつだったようです。車種の選択については大人は喜んだかもしれませんが、そもそもがプラレール。当然、後部で後押しする実車とは異なり先頭に立って走ります。また、元はEF15形として生まれた金型の都合上、EF59形の改造前形式であるEF53形・EF56形の車体とも異なっていますが、「形が似ているからそれっぽく仕立てた」という正にプラレールらしい製品になっています。
▲同年11月に発売された「EF15電気機関車」を使い、広島機関区所属のEF15を後押しするEF59をイメージ。
貨車にはトキ15000形と「郵便車」が選ばれ、EF59形が活躍していた頃の雑多な貨物列車の雰囲気を感じさせる組み合わせになっています。「郵便車」は1979年に登場した比較的古い貨車で、オユ10形をモデルにしたと思われる青一色の車体で長い間発売され続けてきましたが、この「EF59電気機関車」では屋根が銀色に塗装されて軽くグレードアップ。これは本製品のみの仕様となる珍しい存在です。
この「EF59電気機関車」のプラレール、このまま「先頭に立つEF59形」という不思議な存在としてプラレール史に刻むことになるのかと思いきや、同年11月に全国流通の通常品として「EF15」が14年ぶりに再登場した事で救われたと評される事があります。もちろんEF59も動力車なので、そのままでは実車同様の後部補機として遊ぶことは叶いませんが、国鉄旧型電気機関車が互いに頑張る姿を子供向け玩具であるプラレールで再現できるというのは、何か感慨深いものを感じさせます。
そして、補機として忘れてはならないのが碓氷峠のEF63形です。こちらは前部・後部補機として使われていたため、プラレールにおいては牽引機として製品化されました。これもまた、プラレール史に名を残す製品として知られています。
▲2004年5月に発売された「サウンド連結 EF63 & L特急あさま」
今から26年前の1997年9月30日の運行を最後に廃止された、信越本線横川~軽井沢間の碓氷峠で補機として活躍していたEF63形。廃止から約7年後の2004年5月にプラレールで製品化されました。モデルは碓氷峠鉄道文化むらで動態保存されている11号機と12号機です。
商品名の通り、重連運用であるのを活かして1両目を動力車、2両目をサウンド車とした意欲作です。発売時はかなり話題を呼び、今でも探し求めている人がいるという、言わば伝説のプラレールとなっています。「L特急あさま」は動力を持たず、牽引に徹している潔さ。台車にマグネット連結器が装備され、同じくマグネット連結器を装備しているEF63形と連結させて遊べるようになっています。EF63形の車体カバーは動力車・サウンド車で共通なので、前後を入れ替えて遊べられるのも楽しみの一つです。
2007年9月に発売された「長野新幹線10周年スペシャルセット」では、ぶどう色の24号機・25号機が登場。牽引されるのは国鉄特急色の「L特急 あさま」となり、「サウンド連結」とは異なる選択にファンを唸らせました。
冒頭でも述べたように、2023年現在はEF210形が大阪で補機として活躍しています。今一度、「補機」のプラレールの発売を望みたいところですね。
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◆EF59の貴重な写真とともにディテールに迫ったムックが発売中!
大きなデッキに運転台廻りのゼブラ塗装。この、ものものしい出で立ちの旧型電機は、セノハチこと、山陽本線瀬野~八本松間に存在する連続急勾配区間の上り線で後補機として活躍したEF59です。
同機は戦前の花形電機EF53、EF56 から改造されたもの。いわばサラブレットといえる機関車たちが、当初の任を解かれ最後の務めとして勾配区間の補機として投入され、文字通り縁の下の力持ちといえる活躍を1980 年代半ばまで見せていたのです。
本書は『鉄道車輌ディテール・ファイル 瀬野機関区のEF59』Part1・Part2 を合本とし、冒頭にカラーページを追加した愛蔵版としてリイシューしたもの。戦前製旅客電機の姿を色濃く残すEF59 全24機の1両ごとの記録集として、是非、手に取って欲しい一冊です。