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特集・コラム

連接3軸貨車のク9100形に未来はあったのか?

2023.09.13

text:RMライブラリー編集部

 現代ではもう見ることができない状況ですが、かつては鉄道を用いた新車の輸送が盛んに行われ、その代表的な形式は鉄道模型としてもおなじみのク5000形です。同形式は全長19mを超える堂々とした車体を持ちますが、標記荷重記号は「無印」、つまり13トン以下という意外なほど軽いもの。それもそのはずで、完成自動車というのは積荷として考えた時には空洞部分が大きいため相対的に軽いからです。当時の普通乗用車は今よりも軽量傾向にあったのでだいたい1台1トンと考えれば、それが8台しか積めないのなら荷重は8トンにしかならないことになります。

 積み荷がそんなに軽いのであれば、ボギー車(=車軸が4軸)というのは過剰な設備で、車軸を減らしてはどうか?という発想から生まれたのが、国鉄史上で唯一無二となる連接3軸貨車・ク9100形でした。

▲RM Re-Library 9「3軸貨車の誕生と終焉」より。

 ク5000と比べた時に以下のような特徴があります。
●車体を前後2分割構造とし、両端と連接部に1軸台車を配置した連接3軸貨車であること。
●1500㏄クラスの乗用車が、ク5000形で8台積載であったところ、10台積載可能であること。
●その分全長も約22mという長大なものになったこと。
●バンタイプの自動車も積めるよう、中央部を下げた構造となっており、床板がスロープ状になったこと。

 実はこれらの特徴は、ヨーロッパでは既に実例があり、ドイツやフランスで実用化されていたのを国鉄でも参考にしたと言われています。鉄道模型ですがその例をお見せしましょう。

▲イタリア国鉄(FS)で運用された3軸連接の車運車。(模型はイタリア・リマ社製のHOゲージ)。ミニカーは仮に並べたもので、実際には1両にこんなには積めません。

▲ク5000形では一直線の床板が、この連接車ではスロープ状になります。ク9100形も同様でした。

 さて、ク9100形は1両のみしか製造されず、各種試験後は運用に就くことなく長期留置の上で廃車された…というのが史実です。実際、ク5000形による自動車輸送は急速に隆盛した後にやはり急速に衰退し、大量の余剰車が生じていた状況のため、その後継車となるク9100形には出る幕が無かったのかもしれません。しかし技術的にはヨーロッパで十分実用化されていたものですので、3軸連接車という構造に根本的な欠陥があったわけでもないと思われます。ク9100形による自動車輸送列車、ちょっと見てみたかったと思いますね。

 さて、そんな超マイナー形式であるク9100形ですが、RM Re-Libraryでは2冊で取り上げられています。

■RM Re-Library 9「3軸貨車の誕生と終焉」

(→ネコパブショップでの商品ページ

RM Re-Library 14「車を運ぶ貨車」

(→ネコパブショップでの商品ページ

 知られざる車両に改めて光を当てる当シリーズ、ぜひご注目ください!

 

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