185系

特集・コラム

「生きた電車」がそこに!今にも走りそうな115系保存車がスゴかった!

2023.08.26

text:鉄道ホビダス編集部
photo(特記以外):佐々木 龍

 長野県千曲市にある「万葉超音波温泉」駐車場にて保存・展示されている115系クハ115-1106。 今回はこの115系と、それを維持・管理する利根川智史さんのもとへお伺いし、車両保存をしつつ、自分の趣味を全力で楽しむ姿を取材してまいりました。

↓まるで現役!美しく蘇った長野色115系の写真はこちら↓

■クハ115-1106のプロフィール

 クハ115-1106は1978年に製造され、小山電車区へ新製配置。その後、新前橋や松本などを転々としながら、2007年に最終配置となった長野総合車両センターに転属。2015年の廃車後はブランシュたかやまスキーリゾートで休憩所として保存されていました。

 晩年の塗装は「長野色」とも称されるフォギーグレーを地色に窓廻りをアドバンスブルー、その下にリフレッシュグリーンの帯を配した装いでした。現在はご覧の通り、最終配置である長野総合車両センター時代の姿で保存されています。2015年の引退当時の姿な上、都内でも見られた色なため、若い世代でも懐かしいと思う方は多いのではないでしょうか。

■ライトも点灯!?深夜の大輸送劇!

写真提供:利根川智史

 2022年7月、以前保存されていたブランシュたかやまスキーリゾートから万葉超音波温泉への輸送が決定。輸送の際にはオリジナルの「譲渡」ヘッドマークを掲げ、さらには蓄電池によりヘッド・テールライトのほか、室内灯も点灯可能な状態で搬出。保存車ながらまるで現役時代のような姿に、目撃したレイル・ファンたちは大いに沸き立ちました。

■まるで「停車中」 現役車両にしか思えない生きた115系

 車両の修繕に関しては、基本的に実車同様の全般検査をイメージして行なったとのこと。まず外装に関しては業者に依頼し、特に屋根は115系リニューアル車と同等のメニューを施工しています。

 車体はまず劣化した塗膜やサビを除去してパテ埋め。その後、実際に長野色で使われた塗料を業者を通して取り寄せて塗装。さらに標記類に関しても、実物車両のものを手がける業者に制作を依頼し、なんと利根川さんが自ら貼付。また、Hゴムは全交換し、窓もできるだけ綺麗になるようにこちらも利根川さんの自身の手により磨き出しを行なったもの。さらにAU75形冷房装置も動態活用のため、オーバーホールをしています。

 運転台や客室内も綺麗に整備し直されており、現役以上の輝きを取り戻しています。電気系統やエアー類などが現役時代さながらに動作するため、特に運転席に座ると運転士になったような気分を味わうことができます。もちろんブレーキハンドルを扱うと、発車時や停車時に運転台から聞こえてきた「あのエアー音」が発生し、レイル・ファンなら誰しも感動すること間違いなしです。

 こだわりを持った修繕と、時には利根川さん自らが作業に従事して、丹精込めて美しく蘇った115系は、本当に全検明けの装いそのものとなっています。

■利根川さんが考える今後の方針は?

 非常に珍しい電気・エアー系統も動作する保存車として注目を集めるクハ115-1106。利根川さんはこの趣味空間を今後広く楽しんでもらえるよう、運転台機器類の操作体験プログラムや、実車部品を活用したシミュレーターの製作なども構想しているとのこと。

 なるべく現役時代と同様に動かせるものは動かすことを、「社是」ならぬ「車是」としていると語る利根川さん。これからも末長く、日常風景に溶け込んでいた115系の姿を後世に伝え続けていってほしいものです。

保存場所はこちら
戸倉上山田温泉 万葉超音波温泉 Webサイト

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