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特集・コラム

非売品のプラレール?ドクターイエローの「グリーンライン」って一体なに!?

2023.08.18

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回はその歴史の中でも「非売品」のとあるプラレールにクローズアップ。一見すると言わずと知れた「ドクターイエロー」ながら、定番の青帯ではなく緑帯なプラレールが存在します。(編集部)


 もはや説明不要かもしれませんが、「ドクターイエロー」とは東海道・山陽新幹線で運用されている「新幹線電気軌道試験車」の愛称です。黄色く塗装され目立つ外見をしているドクターイエローですが、その性質上運行日は非公開なため、見かけると運がいいとのことで鉄道ファン以外の人にも抜群の知名度を誇ります。その知名度の高さと外見の奇抜さにより、新幹線の中では特に子供に人気です。その人気さゆえ、923形と922形がプラレールで両方発売されているほどです。

↓ドクターイエローの「グリーンライン」って?写真はこちら!↓

 2023年現在では東海道・山陽新幹線のみで運用されていますが、実は2003年までは東北・上越新幹線にも配置されていました。今回取り上げる「ドクターイエロー グリーンライン」は東北・上越新幹線用のドクターイエローを製品化したものですが、プラレール史においては珍品の一つとして知られています。

▲2001年に開催されたくじ引き景品として用意された「ドクターイエロー グリーンライン」

 1982年の東北・上越新幹線開業に際し、既に東海道・山陽新幹線で運用されていた「電気軌道試験車」を導入する事となり、0系がベースの922形に対して、東北・上越新幹線向けには営業開始前の試験走行で使われていた962形をベースとした「925形」が登場しました。登場当初の925形はまだ「ドクターイエロー」ではなく、962形と同様のアイボリー地に窓周りがモスグリーンという、正に200系の試作車といった塗装をしていました。
 開業後の1983年に962形共々事業車用のカラーリングである「黄色1号」に塗られ、窓下には200系の窓周りと同じ「緑14号」のラインが引かれ、ここに「青い922形」と「緑の925形」という、2つのドクターイエローが誕生します。

 一般の乗客は乗れない新幹線であるため、プラレールの題材としては今ひとつな印象を受けがちだったドクターイエローですが、1996年に製品化されます。「ライト付ひかり号」の塗り替え品であり、文字通りライトが点灯する事から人気車種の仲間入りを果たし、2003年のリニューアルを経て2014年までラインナップに乗り続けたロングセラー品となります。2014年には金型が一新され、「ライト付 922形ドクターイエローT3編成」として先述の通り現在でも発売され続けています。

▲白く塗装された光前頭、クリアブルーのヘッドライト、黒色成型の連結器が特別仕様の非売品というポテンシャルを高めている。

 東海道・山陽新幹線用の922形に対し、東北・上越新幹線用の925形はあまり注目されなかったのか、あるいは帯の色が違うだけで製品化しづらかったのか、プラレールにおいて通常ラインナップとしてデビューする事は叶いませんでした。
 しかし、ついに製品化の機会に恵まれます。2001年に開催されたプラレールのくじ引きキャンペーンの特賞景品として、925形をモデルとした「ドクターイエロー グリーンライン」が登場したのです。景品なので当然、非売品です。それに特賞なので当たる確率は低く、キャンペーンから20年以上が経過した現在では知る人ぞ知るアイテムとしてプラレールの歴史に名を刻んでいます。

▲200系「ライト付 東北・上越新幹線」、リニューアル車「ニュー200系新幹線」と共に。

 あくまでこれも元を辿れば「ライト付ひかり号」の塗り替え品であり、造型や細部に差異があるといった事はありません。ですが、非売品として企画された以上、通常品とは異なる「こだわり」が見られます。925形では団子鼻として知られる「光前頭」が白く塗装されており、プラレールでもこれをしっかりと再現。ヘッドライト・テールライトは「グリーンライン」が唯一の例となるクリアブルーのパーツとされ、少し上品な印象に仕上がっています。車輪も通常品のドクターイエローがおもちゃらしい赤色なのに対して、シックなグレー色のものが装備されました。極め付けは連結器。なんと黒色のものが採用されています。前回のブリキのプラレールの記事でも触れたように、黒色の連結器を装備する製品は2000年前後の一部にしかなく、かなり貴重なものの一つとなります。

 こうしてプラレールの世界でも出揃った922形・925形ですが、営業車の車両更新によるスピードアップにより、0系・200系(926形)をベースとした両車は活躍の場を後継の検測車に譲る事となり、925形が2003年に、922形が2005年に引退し、団子鼻のドクターイエローは姿を消しました。

 名実ともに過去の車両となった925形ですが、2011年にプラレールショップ限定品としてディテールアップを施されたものが再登場しています。こちらも既に絶版となっているため、今回取り上げた「グリーンライン」と共に入手困難品となっています。

 引退から20年近い922形がプラレールのラインナップで現役である今、再び925形に脚光が当たることはあるのでしょうか?昨今のプラレールを取り巻く事情を考えると、少し期待してしまいそうです。

↓ドクターイエローの「グリーンライン」って?写真はこちら!↓

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