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特集・コラム

電化・非電化どこでも走れます「四季島」E001形の驚異のスペックとは?

2023.08.16

text:児玉光雄
要約・再構成:RM・鉄道ホビダス編集部

▲複線非電化ならではの見通しのよい直線区間の美しいアングル。「カシオペア」「北斗星」の撮影でも人気のポイントにて。 

‘17.3.26 室蘭本線/稀府-黄金 P:辻 晴穂

 JR東日本が誇る超豪華クルーズ列車「TRAIN SUITE 四季島」。この列車で使用されるE001形ですが、いわゆる「電車」や「気動車」といった枠組みにとらわれない、特殊な車両となっています。

■EDC採用の経緯と「TRAIN SUITE 四季島」

 2017年5月、JR東日本は「TRAIN SUITE 四季島」の運行を開始しました。この列車は本州、北海道地区を周遊するいわゆる豪華クルーズトレインとして計画されたもので、東京を起点に東北・北海道の各路線を周遊することから、直流、交流の電化区間に加え、非電化区間も走行可能なスペックが求められました。以前であれば、客車列車として計画されたでしょうが、近年は機関車牽引列車の解消を進めており、広範囲にわたって特定の列車のために検修・運転に伴う特別な設備などを準備するのは非効率です。こうして機関車を必要とせずに電化区間・非電化区間を走行可能な車両として計画されたのが、この「四季島」に使用されるE001形です。

▲CI25形主変換装置 3レベルPWMコンバータと2レベルVVVFインバータ、発電ブレーキチョッパで構成する。インバータは1C4M 一括駆動方式。エンジンモードでも電車と同様の主電動機制御を行うが、回生ブレーキではなく発電ブレーキとなる。 

’16.8.24 川崎重工業兵庫事業所 P:松沼 猛

 この車両の大きな特徴として、電化区間の走行時は通常の電車と同じくパンタグラフから集電し、VVVFインバータによって制御を行なっていますが、非電化区間の走行時はディーゼルエンジンによって発電を行い、走行用電源と補助電源を得て電気式気動車の原理で動くことが挙げられます。なお、このような走行方式は「EDC」=Electric Diesel Carと呼ばれています。

 また、本形式には多様な線区を走行するにあたり、様々な工夫が施されています。例えば、直流区間では架線・パンタグラフの損傷防止のため、4基のパンタグラフを使用しています。一方電圧が高く、電流量を少なくできる交流区間では2基の使用としており、重量の大きい主変圧器もこのパンタグラフを搭載する2両のみとしています。また、最近の電車が標準的に装備する回生ブレーキについては、発電ブレーキ用抵抗器を備え、非電化区間走行時にも使用可能です。このように気動車と電車の機構を共存させる技術は、電気式気動車で得た「電車との共通化」という技術があってこそ生まれたと言えでしょう。

■新技術に挑戦したEDCと「四季島」という列車

▲梅雨明けの快晴の青空と、鮮やかな紫陽花の鉄橋を渡る「四季島」。 

‘18.6.30 中央本線 鳥沢-猿橋 P:小林正輝

 E001形は非電化区間の走行時、1・10号車に設置したディーゼルエンジンによって発電を行ない、走行用電源と補助電源を得ています。エンジンはドイツ製の船舶などに使用される大型のエンジンを国内では初めて鉄道車両用エンジンとして採用しました。そのため1・10号車はこれに加えて発電設備を搭載しており、車体重量が60t以上と異例の重量となりました。

 ところで、ここ近年の国内の鉄道車両用大馬力エンジンはDF200に搭載されているものが最大で、E001形の運転を賄うには3台必要である。これを両先頭車2台で賄い、かつ鉄道用途で実績のあるエンジンとなれば、輸入という選択に至ったものと言えるでしょう。
 本形式は非電化区間走行時にも電気ブレーキを使用できるように、発電ブレーキ用抵抗器を装備しています。また、電化区間と非電化区間では車両限界が異なっており、本形式は非電化区間の車両限界に合わせ、パンタグラフや高圧線の支持碍子などを車体断面に収まるよう、斜めに取り付けるなどの工夫がなされています。

 しかしながら、気動車の環境・運転性能が大幅に向上し、電化区間の走行が長距離でなく、かつ気動車の方がコスト・整備面でも負担が少ないとなれば、今後普及する可能性は低いでしょう。E001形はJR東日本の看板列車であり、かつ日本を代表する列車たる「四季島」として、これまでにない技術を一つのアピールポイントとしていることに加えて、電化区間も非電化区間もそれぞれ長距離・長時間走行するという走行環境だからこそ、この方式が採用されたのではないでしょうか。

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