text:鉄道ホビダス編集部
15.2.16 江ノ島電鉄 稲村ヶ崎-七里ヶ浜 P:鈴木裕大
(お立ち台通信より)
江ノ電に現在も残る旧型車として人気の300形305編成。塗装も旧来からの江ノ電カラーを維持しており、2020年には製造から60年を迎えたということもあり、年々注目度は上がっています。
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■305編成の生い立ち
江ノ電300形は、1956〜68年にかけて301編成から306編成までの6編成12両が製造されました。2車体の連節構造を持っており、すべてが旧型車両を改造して落成した車両となっています。各編成改造種車は様々で、後年の改造などによりさらに外観に変化が生じ、いずれの編成も同じ300形ながら、個性的なバリエーションがあるのも魅力の一つです。
現在唯一残る305編成は、1960年に製造された編成です。改造扱いではありますが、車体は東横車輛工業碑文谷工場で、台車は東急車輛で新造されており、流用部品は京王帝都電鉄デハ2000形の台枠のみです。
305編成はその後、細かい仕様変更をしながら活躍を続け、1990年にカルダン駆動化と冷房化を実施、1998年には1000形以降の新型車と連結可能とするための機器更新が施工され、現在でも運用に就いています。そんな徹底的な更新を受けながらも、床が板張りのまま残っているのも特徴で、レトロな風合いの内装も人気の理由にあります。
■江ノ電カラーは300形と同期?
長年、江ノ電を象徴する色として親しまれている緑とクリームのツートンカラーですが、このカラーリングも300形のデビューとほぼ同時期でした。戦前は茶色一色、昭和10年代から戦後にかけては茶色とクリームのツートンでした。戦後、1950年頃に青と黄色のツートンとなりましたが、こちらは定着せず、1950年代中盤に現在に続く緑とクリームのツートンが登場しました。
この色の初出は、1953年に都電150・170形の車体を譲受して竣工した112〜114と202で、300形301編成もこの内113・114を種車としており、当初から緑とクリームで登場しています。
■仲間が消える中、305編成のみが生き残る
▲架け替え前の境川橋梁を行く300形。編成は200形連結車を種車とした306編成。都電150形の車体をルーツに持つ車両だったが、300形では最も早い1991年に廃車。
’82.02.03 江ノ島電鉄 湘南海岸公園~鵠沼 P:桑原浩幸
(今日の一枚Memoriesより)
1979年に完全新造車として導入された1000形以降、一部の古参車両は置き換えられましたが、旧型車は江ノ電のマスコットとして人気が高かったこともあり、300形303〜305編成のほか500形2編成も含めた計5本は「当面残す車両」として分けられ、カルダン駆動化のほか、500形を除いて冷房化されるなど更新がされました。一方で近い将来廃車とする車両に分けられたそれ以外の300形は、更新はなされずに1991年に306編成、1992年に301編成、1997年に302編成が引退しました。
更新を受けた車両についても、非冷房であった500形は2003年までに全廃されました。300形も台枠の痛みといった深刻な老朽化が進んでいた304編成が2005年に、2007年には303編成が廃車となりましたが、一部機器は江ノ電初のVVVF制御車である500形に流用され今も活躍しています。
現在、300形の中でも最も新造に近かった305編成のみが、新型車両に囲まれながら古き良き時代の江ノ電の雰囲気を今に伝えています。305編成が産声を上げた1960年から2023年で63年が経ち、関東のみならず全国的に見ても非常に長寿な部類の車両となりましたが、これからも末長く昔の「江ノ電」の生き残りとして活躍を期待したいところです。
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