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特集・コラム

大量休車も? 飛行機で来た路面電車 広電「グリーンムーバー」の現在

2023.08.03

text:鉄道ホビダス編集部

▲空輸されてきた広島電鉄5000形5001号。以降の編成は通常の船舶輸送となった。

‘13.2.24 広島電鉄宮島線 広電西広島 P:中村悠久
(鉄道投稿情報局より)

 ドイツのメーカー、シーメンス社で製造された低床路面電車である広島電鉄5000形「グリーンムーバー」。第1編成だけは、ドイツ本国から世界最大級の輸送機アントノフ124で空輸されてきたことで有名です(それ以降は船舶輸送)。日本では珍しい海外製メーカーの電車として、1999年に導入されました。

■シーメンス社「Combino(コンビーノ)」シリーズの車両

 広島電鉄5000形「グリーンムーバー」は、ドイツのメーカーであるシーメンス社の低床路面電車シリーズ「Combino(コンビーノ)」の一つで、日本の鉄道では珍しい完全輸入による電車となります。
 低床路面電車といいますが、その低さはレール面からわずか330mmで車内にはステップがないフルフラット構造。出入口と電停との高さの差は市内線では80mm、宮島線では30mm足らずでの乗降が可能となりました。現在では国内製造されるようにもなり当たり前となりつつある低床車ですが、当時の日本では非常に斬新な車両の一つでした。

 また編成は5車体3台車の連接構造とし、全長は路面電車としては30mを初めて越えた車両となりました。広島方からA車・C車・E車・D車・B車と連なっており、A車・B車には駆動台車、中間E車に付随台車を備えます。C車・D車には台車はなく、この部分は「浮いている」構造になります。

 営業運転は1999年6月から開始され、2000年には鉄道友の会のローレル賞を受賞。その後行先表示器などのLED化なども行なわれました。

■相次ぐ休車 「海外製」がネックか

▲2023年7月現在、運行が確認されているのは写真の5011号と5008号のみ。

‘21.10.30 広島電鉄本線 広島駅 P:上石知足

 そんな5000形でしたが、近年では休車が目立っており、所属する荒手車庫に運用から外れた5000形が大量に留置されている様子が外から目撃され、SNSなどを中心に話題となっているようです。2023年7月現在、営業運転が確認されているのは5008号と5011号のみとなっており、それ以外は車庫で留置されているようです。また、5007号については2009年頃より部品取りとなっている様子です。

 このような事態の背景には、やはり海外製の整備の難しさが見え隠れします。国内メーカーとは大きく異なる対応や、海外製ゆえの部品調達の難しさなども理由に考えられます。海外製部品を使う車両も国内にいくつか存在しますが、国産部品に置き換える例も見られます。
 一部の部品に問題があるということであれば、それ相当の別の部品に置き換えることもできますが、5000形のように車両そのものが海外製となるとそのような対応も難しいものと思われます。

 ただ、5000形によって広島電鉄における低床電車の普及に貢献したことは言うまでもなく、その後国産初の超低床車である広島電鉄5100形「グリーンムーバーmax」や、1000形「グリーンムーバーLEX(レックス)」、現在最新鋭となる5200形「グリーンムーバーAPEX(エイペックス)」と続いていくきっかけとなった車両でもあります。

 近年は運用を離れた車両が目立つ5000形ですが、その後の超低床車の広がるを見るに、エポックメイキングな車両であることは間違いないでしょう。また、2025年春には広島駅南口が再開発に伴い、広島電鉄の広島駅も高架とする「駅前大橋ルート」に変わる予定となっており、現在その工事が着々と進んでいます。広島駅が生まれ変わる頃、5000形はどうなっているのか、今後の動向が非常に注目される電車です。

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