text:鉄道ホビダス編集部
‘16.3.25 東北本線 名取 P:片平宏之
(鉄道投稿情報局より)
国鉄が民営化された初期、数多く運行されていた国鉄型の交直流急行型電車たち。近郊化改造で一部座席のロングシート化や、吊り手の設置なども行なわれましたが、やはり片側2ドアというのは使い勝手が良いものではありませんでした。これらの車両を一掃するために1989年に登場したのが719系です。
■交流専用の近郊型 ちょっと珍しいクロスシート
P:鉄道ホビダス
211系に類似した前面を持ち、3ドアという点も同車と共通していますが、よく見比べてみると窓配置が大きく違います。さらに「7」から始まる系式が示す通り、交流専用となっており、東北地域の交流電化区間に特化していることがわかります。座席はセミクロスシートながら、クロスシート部分は珍しい集団見合い型としました。
まず0番代がJR東日本仙台支社管内に配置され、長らく大きな動きはありませんでした。ですが後年、磐越西線で活躍していたもの関しては、先代の455系・457系から引き継がれた「あかべぇ」ラッピングが施された車両も活躍していました。
■置き換えの最中に登場したカラーバリエーション
当系列は乗降口に段差があることや、車両制御装置の老朽化などを理由に、E721系による置き換えが2016年より開始されました。そんな最中の2017年、仙台に所属していた「あかべぇ」ラッピングのH10・H13編成が秋田へと転属。前面帯は「あかべぇ」時代のままの黒帯とし、側面は701系同様のピンク色帯となりました。運用はラッシュ時限定と固定されましたが、転属当時落成から27年、置き換え最中での新たなカラーバリエーションが登場ということもあり、この予想外の転属はレイル・ファンたちを驚かせました。
ただ秋田での活躍も長くは続かず、2019年11月で運用を終了。約2年の短い活躍期間となりました。
■現在残るは「標準軌仕様」と「フルーティア」
‘17.12.3 東北本線 南仙台―名取 P:片平宏之
(鉄道投稿情報局より)
719系は狭軌仕様の0番代の他に、標準軌仕様の5000番代が存在します。JRの在来線のほとんどは狭軌(1,067mm)ですが、山形新幹線と秋田新幹線の線路幅は、新幹線から直接乗り入れる関係で、在来線扱いながら標準軌(1,435mm)となっています。そのため719系を基本に、標準軌仕様のボルスタレス台車(0番代では485系の発生品を使用)とし、山形新幹線(奥羽本線、愛称山形線)区間の走行を可能としたのが5000番代です。もちろん普通の在来線規格での標準軌区間というのは当時例がなく、719系5000番代はJRで初となる標準軌の在来線車両として登場しました。なおこの5000番代は0番代とはうってかわって2023年現在廃車は発生していません。
そして狭軌仕様最後の存在となったのが0番代を改造して生まれた観光車両「フルーティア」の700番代です。2015年に「走るカフェ」をコンセプトに走り始めた「フルーティアふくしま」用の車両となっており、運行初期は定期列車に併結する形で運行されていましたが、2019年以降は単独運用に。その後も他の0番代たちが続々と廃車になる中、「フルーティア」だけが残り続けましたが、こちらも2023年12月での引退が発表されています。
ちなみに、「フルーティア」として700番代に改造された時、車番の他に先頭の「クハ」が食堂車を表す「クシ」に改められています。
7月19日にちなんで719系をまとめてみましたが、いつの間にか狭軌仕様は風前の灯に。引退までに「フルーティア」の活躍を目に焼き付けておきたいですね。