185系

特集・コラム

蒸気機関車の動輪のカタチのナゾ 丸いのになぜボックス動輪というのか!?

2023.07.10

text:RMM

▲1940年4月、三菱重工業神戸造船所で製造されたC57 130。

’74.9 旭川機関区 P:佐々木裕治
(消えた車両写真館より)

 現在においても、動態保存車として動いている姿を目にする機会も多い蒸気機関車。各地で観光列車として運行されており、家族連れからコアなレイル・ファンまで非常に人気が高いです。そんな蒸気機関車のカナメでもある「動輪」にも種類があるのをご存知でしょうか?

▲大正生まれの8620形蒸機はもちろんスポーク動輪を履いている

▲D51は日本でボックス動輪を最初に装備した機関車である。

 蒸気機関車の動輪には大きく分けてスポーク動輪と、ボックス動輪の2種類があります。ひとつ目のスポーク動輪は、車輪の中心・輪心から踏面を含むタイヤ部分に放射線状に付く支え棒であるスポークが伸びています。ちょうど自転車のタイヤ部分が似た構造ですね。見た目も車輪の向こう側が見え、軽快感があるものです。また歴史的にはこちらの車輪がボックス車輪よりも先に登場しています。

 一方、ボックス動輪は、見るからに重厚感溢れ、いかにも高速運転向きのといった外観ですが、この姿のどこがボックス=箱なのでしょうか?
 実は輪心部のプレートが表と裏との二重構造になっており、この空間が箱状になることからボックス輪心動輪という名前が付いています。

 このボックス動輪が採用されたのは国内では1936年から登場したD51形が最初で、以降新しく作られる蒸気機関車に標準装備されていきました。これ以外にも登場時にスポーク動輪だったC51や8620などにも後年ボックス動輪に交換された機関車がいたようです。

 ボックス動輪ですがD51の登場以降、標準装備となっただけに、その性能は優れていたと言えます。しかしながら、どのあたりが優れていたのでしょうか?
 それは見た目とは裏腹に中空構造ゆえ、同じ径のスポーク動輪よりはるかに軽量で、またタイヤ部に均等に力が掛かることで、焼き嵌め式のタイヤ部分の緩みが少ないことも標準採用となった理由なのです。

▲C55はNゲージモデルでもスポークの輪心が抜けたており、浮き上がるような軽快のある走行が楽しめる。

 さて、話は変わってNゲージの世界では、いくつもの細いスポークで支えられるスポーク動輪は、造形の難しさから、長い間プラスティックの輪心プレートを動輪にはめ込んだだけのダミースポーク動輪でしたが、近年、Nゲージの精密化により、本当に向こうが抜けて見れるスポーク動輪が開発され始めています。そのおかげもあってか昨年一年間に新登場したNゲージの蒸気機関車はスポーク動輪の方が多いくらいでした。

 昔と比べてより現実に即した形態に忠実になりつつあるNゲージ。最新技術で蘇る鉄道模型のSLは、今後どのような進化を遂げるのか非常に注目したいですね。

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