text & photo:上石知足(鉄道ホビダス)
’06.12.29 総武本線 佐倉〜物井 P:北川将吾
(お立ち台通信より)
↓255系の名シーンから内装写真はこちら!↓
1993年7月2日にデビューした255系「Boso View Express(房総ビューエクスプレス)」。長らく183系の独壇場であった房総地区の特急列車に、JRの新たな風を吹きこんだ車両でしたが、5編成の増備にとどまり、本格的な旧型車の置き換えは後任のE257系に譲ることとなりました。とはいえ、2023年現在、まだ廃車の発生していない貴重なJR第1世代車両として徐々に注目を集めています。
■255系登場の背景
房総半島に特急列車が登場したのは1972(昭和47)年に、183系が「さざなみ」「わかしお」で投入されたのが始まりです。以来20年近く大きな車両更新がなかったこの地区でしたが、房総半島の道路網の整備により、鉄道のイメージアップを図る必要性が出てきました。そこで製造されたのがこの255系です。同車は春〜夏に集中する南房総へのレジャー目的と、千葉近郊地区へのビジネス利用という異なるニーズに応えるために開発されました。
■255系の特徴
255系で特筆されるのはJR東日本の車両で初めてVVVFインバータ制御を採用したことがよく挙げられます。落成当時はGTO素子のVVVFインバータ(東芝製)を採用しており、これは901系B編成(後の209系910番代)で採用されていたVVVFをベースに、改良の上搭載されたものです。台車は651系から採用され続けていたDT56/TR41系を改良したものになっています。
車体断面は先に登場した初代「成田エクスプレス」の253系のものとほぼ同じ仕様で、パンタグラフ部の低屋根構造や空調装置の配置も同車に準じていながら、前面は非貫通構造としてフロントマスクは253系とは異なるデザインにされました。
また、1993年に落成した1次車2本と、1994年に落成した2次車3本では似ているようで細かく仕様が異なっており、外観上目立つのは側窓の高さが60mm拡大されたことや、ガラス支持方法の変更などが挙げられます。
■現在、そして今後の255系は?
▲255系初の機器更新編成となったBe-05編成。オリジナルのGTO-VVVFの音色は失われたが、外装の変化はなかった。
‘15.2.9 総武本線 下総中山 P:大野貴行
(鉄道投稿情報局より)
今日でデビューから30年が経った255系ですが、スカート形状の変更やVVVFインバータ装置の更新(GTO素子からIGBT素子のものに更新。2016年に完了。)はあったものの、基本的には登場当時のまま活躍を続けています。
▲グリーン車中央部にはガラスの仕切りがあるが、これは半室が喫煙車だった時代の名残で、このパーテーションで分煙していた。
P:東條ともてつ
内装に関しても枕カバーが「VIEW」のロゴ入りのものから白いシンプルなものに交換された以外はほぼ登場当時の雰囲気を残しており、30年前の登場当時の空気感を今に伝えています。ちなみにグリーン車中央部にはガラスの仕切りがありますが、これは登場時グリーン車を禁煙・喫煙席に分割していた時の名残。現在では全車禁煙席になっていますが、こちらの仕切りは今でも残っています。
比較的オリジナルの姿を維持したまま30年を迎えた255系。現在のメインは当初の内房・外房線より、総武本線の「しおさい」で見かける機会が多くなりましたが、登場当時から千葉と東京を結ぶという使命は変わっていません。
現状、車両更新の計画は発表されていませんが、民営化初期に登場した特急型は続々と引退しつつあり、予断を許さない状況には変わりないでしょう。90年代の空気感を今に伝える255系を楽しめるのは今のうちなのかもしれません。
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