text & photo:芦原やちょ
昨年夏、特急「ひだ」で運用を開始したJR東海のHC85系。エンジンで発電機を回し、その電力で動くという、電気式気動車に蓄電池を加えたような「シリーズハイブリッド方式」を採用した同車は、新時代の非電化路線の車両を体現しているようにも思えます。そんなHC85系は今日から特急「南紀」にも投入され、その勢力を拡大します。
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■HC85系の概要
HC85系は2019年に試験走行車が、その後2022年に量産車が登場したハイブリッド車です。系式に入る「HC」とはHybrid Carの頭文字から取ったもの。そして数字の85は、先代車両となるキハ85系にちなんでおり、同車から技術革新したハイブリッド方式の85系を目指す、という意味合いが込められています。
エンジンは付いているものの、これはあくまで発電用であり、一般的な気動車のようにエンジンを直接動力源とはしていません。この仕組みは鉄道のみならず、近年のハイブリッド自動車にも採用されているシステムです。電源としてのエンジンが付いている点は気動車的でありながら、最終的にはモーターで動くのは電車的でもある…、そのためか、HC85系の形式記号は気動車を表す「キ」ではなく電車の「モ」。こうした点からJR東海がこのHC85系に対する考え方が垣間見える気がします。
■最新の中の「伝統」
目新しい技術が多いHC85系ですが、よく見ると「お馴染み」なポイントがいくつかあります。その一つが「車番」でしょう。 近年のJR各社車両の車番は独自のフォントを採用する例が多いのですが、JR東海やJR北海道では今もなお国鉄時代からのフォントを採用する場合が多く、HC85系も国鉄型同様のフォントの車番となっています。
「おでこ」ともいうべき部分には前照灯点灯時は白色に、尾灯点灯時は赤色に光るランプを装備。先代のキハ85系非貫通先頭車と並べて見てみると、キハ85系の「サンルーフ」を思わせるデザインとも取れます。
■元・試験走行車と量産車を簡単に見分ける
試験走行車のD1編成はすでに量産化改造されましたが、今もなお改造前の名残があります。それが先頭車(クモハ・クモロ)のアンテナの本数と、乗務員室扉のオレンジ帯の処理方法です。
試験走行車は先頭車運転台寄り1本と、妻面寄りに1本の合計2本のアンテナがありますが、量産車では各先頭車のアンテナは運転台寄りに1本のみです。さらに乗務員室扉のオレンジ帯が繋がっているのが試験走行車、切れているのが量産車という違いもあります。遠くから見る時はアンテナで、近くで見る時は乗務員室扉で試験走行車か、量産車かを見分けることができそうです。
昨年の「ひだ」に続き今日から「南紀」でもHC85系がデビューし、名実ともにキハ85系から世代交代したJR東海の非電化特急車。先代からのスピリットを受け継いだ同車も、末長く愛される車両となってほしいものです。
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◆今月のRM MODELSは「新時代の特急型気動車」を特集!
RM MODELS今月の特集は「新時代到来! 特急型気動車」!近年の新型気動車では二酸化炭素の排出量や燃費を低減させた新型エンジンを採用していることはもちろん、ハイブリッド式の車両も開発され、その数を増やしています。
2019年に、JR四国2700系、そしてJR東海HC85系が相次いで登場しました。この2形式は偶然にもNゲージで製品化済(または予定)であり、鉄道模型で楽しむには絶好のアイテムです。今回はそんな進化する特急型気動車の最新事情を取り上げ、振り子式の2700系とハイブリッド式のHC85系という二つのテーマを切り口に、それぞれ実車の解説から車両製品のレビュー、そして楽しみ方までを一連の流れでご紹介します!