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特集・コラム

「ストーブ列車」が走る本州最果ての民鉄、津軽鉄道

2023.06.21

青森県の津軽半島には、冬季に「ストーブ列車」が走ることで知られる日本最北端の民営鉄道があります。JR五能線の五所川原駅(五所川原市)を起点とする津軽鉄道で、津軽中里駅(中泊町)までの20.7kmを結んでいます。1930(昭和5)年11月に全線が開通、それから90年以上を経た現在もなお当時と同じ区間で営業中の路線です。

およそ40年前の津軽五所川原駅全景。軽快気動車「津軽21形」の入線前で、在来の国鉄タイプの気動車やオハ31形客車など、現在では見られない車両が多数留置されている。

1981.1 P:鈴木 洋

1960年代より、国鉄標準設計に準じた自社発注車や国鉄からの譲渡車(元キハ11形・キハ22形など)が活躍してきた津軽鉄道も、現在は1996(平成8)年以降に製造された「津軽21形」と称する軽快気動車に置き換えられています。

現行の主力車は1996年以降に製造された新潟鐵工所製の軽快気動車「津軽21形」。沿線出身の小説家・太宰 治の作品名にちなみ「走れメロス号」の愛称が付けられている。

津軽鉄道/新潟鐵工所発行のパンフレットより(所蔵:鈴木 洋)

 

津軽鉄道ではそれとは別に、寒さが厳しい津軽観光の目玉として「ストーブ列車」と呼ばれる石炭ストーブを搭載した客車が冬季に運転されるため、そのための客車を保有しています。元国鉄の旧型客車を購入し自社で整備したもので、現在3両が在籍しています。

「ストーブ列車」に使用されるオハフ33形の室内。同形式の国鉄客車を導入したもので、あえて時代に逆行し石炭ストーブを積むことで、津軽の観光資源としてアピールをしている。

1999.1.16 P:宮下洋一

このストーブ列車は、もともと機関車から暖房の熱源となる蒸気や電気が取れなかった時代に、必要に迫られて石炭ストーブを室内に設置したものが始まりで、それが昭和末の時期になっても引き続き使われていたことからむしろその「物珍しさ」が話題となり、現在は「ストーブ列車券」なる特別料金を取ってまで存続しているなど、すっかり冬の津軽の観光名物となっています。

「ストーブ列車」は客車での運行になるため、基本的に機関車の牽引により運転されていたが、最近は乗客減および機関車の不調から、気動車で牽引されることも多くなった。

2001.3.18 津軽五所川原駅 P:鈴木 洋

ただそうなってくると、冬だけの運行ではもったいない、という話も当然出てきます。津軽鉄道ではこれまでにストーブは焚かない「旧型客車列車」としての運転や、夏季にあえてストーブを焚いてアイスクリームを食べるという「真夏のストーブ列車」などといったユニークな企画も過去に実施したことがあるようです。

太宰 治の出身地である金木町や桜の名所として知られる芦野公園など、沿線の観光名所にも恵まれた津軽鉄道。ちょっと遠いですが、太宰 治の小説とRMライブラリー最新刊『津軽鉄道』を携えて出掛けてみてはいかがでしょう。

■RMライブラリー第276巻『津軽鉄道』が好評発売中です。「ストーブ列車」で知られる同鉄道について、建設の経緯や駅・歴代の車両などを豊富な写真とともに解説します。

■著者:鈴木 洋(すずき ひろし)

■B5判/48ページ

■定価:1,375円(本体1,250円+税)

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